読みたくないよねそんなもの
読みたくないよねそんなもの
うん
もったいつけずにサッサと晒せダラズ
車窓から顔をのぞくと、11月の冬に入ろうと意気込む風が僕にぶつかってきた。
カーナビを見るとZ県を指している。
「約束の地」までもうすぐだ。
「これは?」郵便受けに入っていた謎の住所の紙。
そこには、「Z県田沼郡川本町坂木地区」と書かれてあった。
もちろん僕はそんな住所も知るよしもなく、
一度も家の中では話題に出る事はなかった。
もともと寡黙なお父さんだからしょうがないか。
「今後のお前の住所だ」
寡黙なお父さんは一言それだけを呟き、
今日まで至ってしまった。
「着いたぞ」
お父さんに肩を揺さぶられる。
どうやら寝ていたようだ。
ドアを開け、砂利を踏む。
周りを見渡しても、家らしき物はなかった。
「家はここにある」
「あとで細かい荷物は届く。銀行口座は近くにある郵便局を使うといい」
ここの地区の地図をくれた。
「わかった」
一人暮らし、か。
お父さんは車に乗り、もと来た道に戻ってしまった。
家までの道のりは遠かった。
目印となるものがなかったからだ。
周りを見渡しても山、山、山。まるで自然の要塞だ。
家は築4~50年くらいか。
よくある民家だ。ただ恐ろしくボロい。
窓はひび割れ、玄関の扉は腐りかけ。
15の少女にはあまりにも不釣り合いだ。
扉をガラガラと開け、家の中に入る。
床がひんやりと冷たい。
とりあえず肩に掛けておいた旅行用かばんを置いて、
さまざまな場所を見てみよう。
幸いにもトイレは改装されており、洋式だ。
もう夕方にも近い頃だし、明日のごはんを調達せねば。
来る途中にコンビニがあったはず。
コンビニは日本中にどこにでもあるのだということを再確認した。
コンビニはいたって普通で、どぎつい色の看板、「パーソンマート」の文字がまぶしい。
入ってみたらカウンターで一人、店員がぼーっと突っ立っていた。
僕はそんな店員を尻目に、パンのコーナーに向かおうとした途端、何者かがぶつかってきた!
「すみません!」
ぺこり。女の人が突然に謝ってきた。
僕より年上か?でも若くて綺麗な人だ。
髪は僕とは対照的なさらっとした長髪。唇は薄ピンク。生命の息吹を感じさせるような人だ。
「は、はあ。こちらこそすいません」
一応謝り返しておくか。
「あれ、例の麻耶さん?」
僕はこんな知人を知らない。
「だ、誰ですか?」
「ごめんなさい。実は、こんな田舎に引っ越して来た人って、戦時中の疎開以来だから、ものすっごく珍しいの」
「だからもう、住民の全員が知っていると言っても過言ではないのよー」
「ええ!?」
「まあ、続きは私の家でしましょ」
その少女の家は坂の上にあり、こじんまりとした洋風の家だった。
2階には大きな窓があり、豪邸とは言えないが、僕のとこよりかは断然いいだろう。
庭には、大型犬がスヤスヤと寝ている。
「はやく来てね」
ドアを開けて少女はニッコリと笑った。
「じゃないと、大変なことに…」
「えっ?」
僕は「えっ?」と呟いた後、「大変な事」というのが何なのかを悟った。
黒い獰猛そうな大型犬が僕ににじりよって来たのだ!
「うひゃああああああああああああああっ!」
僕は玄関まで走った。
しかし時すでに遅し、大型犬は僕を突き飛ばしてペロペロ舐め始めたのだ!、ってあれれ・・・。
「ほーらアインシュタイン、人をペロペロ舐めないの」
少女が犬と仲良く戯れている。
あれれれれれ…?
「そういう事なら早目に言ってくださいよ」
「いやあ、ごめんなさいね。あの子は小型犬として飼われてたんだけどスクスクとあそこまで大きく成長しちゃってね
それで性格が今でも小型犬のままってわけ」
僕でも小型犬と大型犬とは見分けがつくと思う。
「伝え忘れたけど私は森和美。君と同い年」
「知っての通り僕は崎田麻耶。よろしく」
「こちらこそ」
同い年なのか。しかし僕より確実に大人びている。
「お母さんとお父さんは?」
「仕事中なの」
沈黙が続く。
お茶菓子のクッキーの二袋目を開けた。
「ああ、そういえばこの町についてしらないよね?」
「ええ」
「よし、教えてあげたろー!」
その後まるで呪文のように説明された。
地元っ子しか知らないような秘密基地や、
食品が安く買える場所、そして学校の場所。
説明が終わったのは、夜の6時を越えていたと思う。
「それじゃ」「では、また学校で会いましょう」
玄関先で彼女は手を振ってくれた。
やはり笑顔というものはいいなぁ。
家に着いたら、突如として眠気に襲われ、そのまま冷たい地面で寝てしまった。
「いったーい! どこ見てんのよアンタ!」
売り物のパンをくわえて走る登校中の女子高生だった。
僕は夢を見た。
星や、月、人までもが自分の心臓に吸収される夢。
自分はいい気になっていた、そんな気がする。
野鳥の声が大きすぎて飛び起きてしまった。体が少しこわばっている。
とりあえず、昨日コンビニで買っておいたカレーパンを一口ほおばる。
カレーのスパイスが口内に広がり、
じゃがいも、にんじんがところ狭しと口の中に入ってくる。
おいひい。カレーパンは人類の味方だ。
一息ついて、僕は身なりを整える事にした。
リビングにはもちろん何もない。がらんどうだ。
布団やらは数日後に届くと言っていたため、
今日もまたゴザ寝になるかと思うと気が重くなる。
ベルが鳴った。
扉を開けたら、そこには和美ちゃんが立っていたのだ!
「な、何故僕の家を」
「家の場所とかも知れ渡っているわ」
「そして、何故ここに?」
「決まってるじゃない、今日学校よ」
頭の中のカレンダーは見事に月曜を指していた。
初日からか…
僕達は学校に向かって走っていた。
走っても歩いても遅刻は遅刻なのだが…
じゃり道が僕らのスピードの邪魔をする。
そうして目の前に古い学校が現れた。
「ここがまだ坂木村だった頃、そのときの村長さんが教育熱心な方で、人口もそんなにいなかったのに学校を作ったのよ。
今では市の文化財に登録されてるわ」
そして、和美ちゃんは扉を開けた。
「ようこそ、われわれの『大本営』へ」
こうして、僕は足を踏み入れたのである。
中は静かで人の気配は感じられなかった。
しっかし古い建物だ。ふわり、と古い木の香りがしてくる。
入り口には創立当初からあるんではないかという大きな古時計。
入って奥には職員室、か。
『1-1』とかけられているクラスの前に立つ。
今までの僕とはとは違う。
新しい僕を見せつけるんだ!!
僕は何故か濡れていた。一瞬の出来事だった。
「…何故こうなってしまっているのか説明してくれ」
「えへへ…ごめんね」
ごめんねじゃないよ!!
入って来た僕に目掛けて水鉄砲を浴びせかけたのだ!!
「まあ、このクラスの暗黙の了解だからねー。私も数年前やられたし」
タオルを手渡され、体を拭く。
女の子の優しいかおりだ…いい。
「では、自己紹介をしてもらいます。麻耶さん、よろしくね」
先生が僕に目配せをする。
「はい。僕は崎田麻耶です。よろしく」
「いや、それだけじゃなくて」
「あ、はい。趣味はナシ、特技もナシ。好きな食べ物は嫌いな食べもの以外の物です
ちなみに嫌いな食べ物は肉の脂身とジャンクフードです、よろしくー」
「はいよろしくねー」
あまりにもつまらなかったのか先生はそういって切り上げてしまった。
ぶう。
「席は森さんの隣ね」
和美ちゃんは空を眺めていた。
座って周りを見渡す。
下は小1、上は中3と幅広く在籍している。
過疎だからしょうがないのか。
個別指導の塾みたいだ。先生もつらそうだなぁ。
そんな事をもんもんと考えていたら、
肩をポンポンと叩かれた。
その手は和美ちゃんだった。
「ん?」「教えて。ここ、できる?」
数学の問題を見せてきた。
もうこの範囲は前の学校では一年前に習い終わった場所だった。
適当にかいつまんで教える。
教えた後、和美ちゃんは目を輝かせて僕をみていた。
「スゴイ…」
「でも今の3年生なら、もう知ってなきゃだめだぜ?」
「え、そうなの?」
これはお先が真っ暗だ・・・。
「仕方ない、僕が最後までおしえるよ」
「ふう、これでいいかな」
範囲を終わらせたのは、夕方も暮れそうな時間だった。
僕より和美ちゃんの方が疲れているようだ。
和美ちゃんはふらふらになって教室をでていった。
僕も帰ろうかな。
しかし、走って片道五〇分はかかる道か。
田舎とは凄いものだ。
帰宅すると、大きな箱が二つ置いてあった。
ずしん。これはたぶん布団かな。
やっと布団のうえで寝ることができる。
今一度布団の大切さを考えさせられた。
夜食のカップラーメンをほおばる。
全国共通の味という安定さが僕の心を落ち着かせた。
「ピンポーン」。不安定さ抜群のベルが鳴る。
新聞ならお断りだ。
僕は麺をすする手を止め、最後の砦、ふとんにもぐり込んだ。
しかし、不安定な音はとめどなく鳴り続ける。
新聞勧誘ならここまではしない。
ならば、犯罪者か…!
と思った矢先、ドアを開ける音が!
しまった!カギを掛け忘れたか!
ゲームオーバー!僕の冒険はここで終わってしまった!
んなわけないない!
僕はフライパンを手にとった。
敵まで後数メートル、まだ姿は見えてこない。
気配が動いたら、敵の頭を打つ!打つ!打つ!
シミュレーションを繰り返した。
よし、できる!
敵の正体は和美ちゃんだった。
作り置きの夕飯の皿を置いているところだった。
そんな彼女の前に発狂して飛んでくる僕。
端から見れば非常に滑稽かつカオスな場面だが、
当の本人から見ればまったくもって恐怖の瞬間である。
彼女はそそくさと皿を置き、挨拶もなしに帰ってしまった。
美味しそうな焼き魚がこの場面の悲壮さを増長させる。
僕は何も言えず、凶器のフライパンを持ったまま立ち尽くしてしまった。
昨日は和美ちゃんに何て弁明しようかと頭をめぐらせていて、眠ることができなかった。
ボーッとしつつ学校までの道を辿る。
道を楽に覚えられる才能は両親に感謝しないといけないな。
1-1のドアを開く。変わらない。掟通り、か。
先日と同じように、て、あれ、和美ちゃんはいない。
どうしたことか。
「先生、森さんがいません」
先生は何事かと考え、思い出したように言った。
「ああ、そうだ。森さん今年のササゲミだったね」
ササゲミ?初めて聞いた言葉だ。
しかし、危なそうな事だけは分かる。
「ササゲミって、何ですか?」
「ああ、ササゲミっていうのは、古代からここに伝わるならわしでな、おっと授業開始だ。放課後に職員室に来てくれ。続きを教えてあげよう」
いいところで切られてしまった。
授業という名の自習時間をこの「ササゲミ」について考えていた。
今いくつか知らんけど本当に中二でこれ書いたならなかなか有望だと思うな
作者の頭の中のキャラの動きが読者に伝わってこない感じがリアルやな
書きたい箇所以外はめんどくて端折るから場面が飛び飛びになるんだよな
すげー分かる
なお今現在文章力は著しく退化している模様
余計な事言わなくていいからさっさと続き貼れダホマ!
授業が終わって夕日が穏やかに照りつけている頃、職員室の前に僕は立っていた。
急に雷を含んだ雨が降ってきた。夕立だ。
地球温暖化もここに極まれり、か。
窓を開けっぱなしにしていたので、窓を閉める。
窓の外に人影がいた。傘もささないとは、まあ、忘れたんだろう。
しかし、なら何故雨宿りをしないんだ?
実に不思議だ。
ふと目を離した隙に人影は消えてしまった。
幻覚なんだろうか。
職員室というプレートが掛かっているドアノブに手をかける。
が、まったくもって活動していない。生き物の気配すら無い。
普段(昨日だけだが)はコピー機やら何やらがせわしなく動き、
外からでも先生としての職務をまっとうしている様子だった。
しかし今は・・・
イヤな予感がした。
僕は勢い良くドアを開け、突撃した!
遅かった。僕はあまりにも悲惨な現場に呆然と立ちすくんでしまった。
文書の書類は辺り一面に散乱し、
物が投げられた跡、そして黒板にある手形の血痕。死体は・・・ない!
真面目そうなあの先生がそんな事をするはずがない。
『何者かに連れ去られた?』
僕はぞっとした。
何故先生を?
そんな馬鹿な、大の男を消すなんて、誰にでもできることではない。
その時、人影が!
僕は机の中に逃げ込んだ。
二つの人影が見えた。部屋の中に入ってきたらしい。
なにやら会話をしているようだ。
耳をそば立てる。
「奴の記憶消去は、できているな?」
こんな田舎では聞くはずもない、人工機械の声だ!
「ああ。もちろん。今後もそうやっていくんだろうに」こっちはしゃがれた肉声だ。
「一人目がこれなら、まあまあ今後も上手くやっていけるだろう。期待しているぞ」
「ああ」
そうして奴らは部屋を出て行った。
展開はえーな
ペースあげろドズル
心臓の鼓動が鳴り止むまで二時間以上あった気がする。
僕は急いで立ち上がった。逃げなきゃ殺される!
廊下に出てみると、もう人影はいなかった。
急いで家に帰った。尾行されている気配はない。
幸運だった。
僕は事件の整理をした。
①、僕が来る前に夕立が降っていた。5時10分くらいか?人影がいた。
②、入ったら誰も居らず、荒らされた形跡があった。
③、そして謎の二人の声。(一人は機械の声。)
よし、これでOK。
ああ、ここには電話は無かったな。
公衆電話があったはず…犯人達は僕のことも見ていなかった。
つまり、公衆電話で通報してもバレないはずだ。
僕はコンビニに急いだ。電話ボックスが隣にあるはずだ。
いつもは押してはならないボタンを押す。非常時だ。
「もしもし!!」
「はい、こちらは川本町交番。どうされました?」
僕は事細かに状況を説明した。
先生が消えたこと、室内が散乱していたこと、そして謎の人、血痕のこと。
「…ですから、できるだけ早くお願いします!」
「はい、分かりました。今から行きますので」
よかった。これで犯人は捕まえられるだろう。
僕は一息ついて、家に帰った。
翌朝、学校に行った。
いつも通りの学校だった。
…いつも通り?嘘だ、絶対そんな事!
僕は走って教室に殴りこむ。
遅刻か!授業をしていた。
?若い女の先生と一緒に?
先生はどうなったのか?
僕は女の先生に突如聞いてみた。
「先生、前の先生は?」
「え?前から先生は私よ?先生の顔、忘れちゃった?」
―そんな馬鹿な…。
僕は崩れ落ちた。
事件はそもそも無かったようにされたのだ!
僕は教室を飛び出し、職員室に入る。
元のままだ。血痕も綺麗さっぱり消えている。
先生が後ろからどうしたことかとおいかけて来た。
「麻耶さん、どうしたの?」
僕は冷や汗をだらだらとたらした。
いったいどうなってしまってるんだ?
「だって、だって先生が!」
「さあ、教室に戻りましょ」
唐突に話をせき止められる。おかしい。
僕はしぶしぶクラスに戻ることになった。
あの女の人は誰だ?
僕はその女性を知るはずも無い。
すると横からメモが来た。和美ちゃんからだ。
『お祭り、来る?』
まったくのんきなものだ。
でも確かに祭りも面白そうだ。
OKとでも書いて渡しておこう。
案の定手紙を見せたら嬉しそうな雰囲気を漂わせていた。
実に分かりやすい。そこがまたチャームポイントなんだよなー。
そうこうしてまた下校。
その時、和美ちゃんは僕の腕をむんずと掴み、校舎裏まで来た。
まさか、告白?でも同性だし、嬉しいけどそんなことだめだよ・・・
本当に告白だったらどう返答しようかな、るんるん。
「あの、ね」
「うん」
「いや、君にも失礼だし、ごめんね」
「どうしたの?なにか、告白?」
「私を守ってほしいの」
これは、告白か?
いや、告白だ。絶対に告白だ!
「いいの?僕なんかで、しかも、同性なのに」
「うん。君がいいのなら」
(もちろんオーケーだよ!いやあこんな事なんて)
「昨日、先生が消えたよね」
あれっ?
「私もじきにこうなるわ。だから私を守って欲しいの。おねがい。私を守って!」
あれれ?
「ごめんね。急にこんなことを聞いちゃって。やっぱり無理あるよね。同い年の女の子に頼むってさ。」
理解するのに数十秒かかった。
先生が消えたのは、何らかの「理由」があり、
その「理由」によって和美ちゃんも「消える」。
あまりにもわけがわからない。理解しきれない!
先生と和美ちゃんが何かしらの共通点を持っているのか?
でも、人一人の命を僕に託すことはそれ相応の決心があるってことだよな。
その気持ちを僕がぶち壊すなんて、そんなひどいことはできない。
「わかった。和美ちゃん。僕が守る。」
「ありがとう・・・。」
ポロポロと涙を流し始め、僕の胸ぐらに飛び込む。
相当な気持ちだったのだろう。
和美ちゃんが泣くのをやめたのに、そう時間はかからなかった。
「アリガト。さあ教室にもどろう。あ、」
「あ?」
「今週の土曜にお祭りがあるんだけどもちろん一緒に来てね!」
すぐに和美ちゃんは笑顔になり、走って戻っていった。
でもここで戻ったとしても、どうせ授業内容はいつもの自習だ。
しばらく休憩しようかな。
静かな山々、美しい夕日、この清潔な景色の下には一体何が起こっているんだ?
チャー研並に展開が早いから気をつけろよな
ゾロゾロと人が出て行く。もう終わったのか。
その中に和美ちゃんの姿があった。
笑顔で下級生と話す和美ちゃん。僕も見習わなきゃなぁ。
今までは人見知りで友達ゼロ人。今度こそは人見知りを直さなきゃ!と思っていたけど・・・。
やっぱ無理っぽいな。
とりあえず「私を守って!」と言われたからには和美ちゃんを精一杯守らなければならない。
じゃあそうやって守ろうか。常に和美ちゃんを見守る?それじゃストーカーになってしまう。
そうか。連絡手段を途切れさせなければいいのか。
しかし、僕の家には電話が通ってないしなぁ・・。くそう。
僕の存在に気づいた和美ちゃんは僕を手招きした。
「簡単な事じゃない!私と一緒に暮らすのよ」ケタケタと笑いながら言う。
突拍子もないことをよく言えたもんだ。
「大丈夫。お父さんとお母さんにも言って、了解してもらったわ」
嬉しいのか恥ずかしいのか頭の中がごっちゃになる。
一番最初に考えついて、一番最初にボツにした案を言われるとは思いもしなかった。
「でも、さすがに年頃の女の子と一緒だと、僕、ぼく」
「ええい、うるさいうるさい!お主に問う」
突然お殿様のセリフで話す。なんじゃこりゃ。
「お主、ワシを守るともうしたのであろう」
「うん」
「ならばグチグチ言うものではない!ホイ来なさい」
腕をむんずと掴まれる。
でも、同じ部屋なら、あんなことやこんなこと、そんなことがぐひひひひ・・・
「顔が火照ってるわ。どうしたのよ」
今日の小型犬(大型)はおとなしく、心地よさそうに眠っている。
玄関で和美ちゃんのお父さん、お母さんが出迎えてくれた。
なるほど、あの髪はお母さんゆずりなのか。
「ようこそいらっしゃいました」
「よく来たな。君の荷物は入れてあるからな。ささ、中へ」
半ば強制的に家の中に入れられる。
部屋は想像(妄想?)のごとく和美ちゃんの部屋だった。
見事に前からここに住んでいるかのように僕の布団がひかれ、その上に荷物が置かれていた。
「どう、気に入ってくれた?」
「うん」
「もう夕ごはんは出来てるわ。下に来なさい」お母さんの声が聞こえた。
夕食は白いご飯と焼き魚、野菜炒め。今までの僕の食生活とは全く違う。
「和美、好き嫌いはなしですよ。もちろん麻耶ちゃんもね」
「でも、でも玉ねぎだけは!お許しください!」
「ダメです」
「うわあああ!」頭をぐしゃぐしゃと掻く和美ちゃん。
普段の真面目な和美ちゃんとはまた違う和美ちゃんだ。
そんな姿を見せてくれるということは僕に対してそこまで緊張していないということだ。
嬉しいような、嬉しくないような。
あっという間にお皿には何もなくなり、食後のカップアイスを食べつつテレビを見ている時だった。
「それで、君は娘を守ってくれるのだね」いつになく真剣な顔をして和美ちゃんのお父さんがそうポツリと言った。
もう事は知っているようだった。
「はい。娘さんを僕が命にかえてでも守ります」
数秒の間があり、穏やかな顔に戻った。
やはり、一人娘は何にかえることもできないんだなぁ。
僕のお父さんもそれくらいの気持ちはあってもいいのに。ぶぅ。
ふぅ・・・ふろは気持ちがいいなぁ・・・
「そうだねー気持ちがいいねぇー」
何故か一緒に湯船にはいっている和美ちゃん。
裸同士の付き合いをしたいということで風呂に一緒に入りたいらしい。
地味に僕よりあるじゃないか・・・。
ちょっと自慢だったのに・・。
裸の付き合い、か。
「さあ、寝ましょう。」和美ちゃんは電気を消した。
電気を消すと、窓から今まで気が付かなかった星々が鮮明に、そして美しくきらめいていた。
「うう・・・先生、先生、せんせえ・・・」
和美ちゃんは毛布にくるまり、震えていた。
僕は何もすることができないのか・・・
和美ちゃんのお父さんのあの穏やかな顔を思い出す。
そうだ、僕は和美ちゃんを守らなきゃならないんだ!
僕はくるまっている毛布ごと和美ちゃんに抱きつく。
今はこれしかできない。何も言えないんだ!
和美ちゃんは必死に抵抗をする。でも僕はやめなかった。
これが守る方法だとわかっていたから。
「大丈夫。大丈夫だから。守るから!」
今どき「大丈夫」ほど大丈夫じゃない言葉はないが、それでも和美ちゃんは安心したらしい。
抵抗は緩やかに収まり、もう安心したのだろう。そのまま寝息を立て始めた。
ほっと一息つき手元にあったカレンダーを見る。
今日で一週間目。時が経つのは早いなあ。
見ると明日の土曜日にバツ印がある。
例の祭りの日か。結局「ササゲミ」について聞かずじまいだったしどんな祭りなんだろう。
和美ちゃんは練習に精を出してると聞いた。明日が楽しみだ。
マジで展開早いな
「おーい起きなさーい」肩をゆすられる。
朝やけが遠くに見える。いつもならまだ寝ている時間だろう。
僕はまた布団にくるまる。
しびれを切らしたのか、和美ちゃんはドカドカと布団の城を蹴りだした。
こんなことで城をあけわたすわけにはいかない!
しかし城は一瞬のうちに白旗を上げた。
ご飯にはかなわないのであった。実に無念!
「おはようございます」
見るとお父さん、お母さんが朝食の用意をしている。コーヒーの香りが眠気を綺麗に立ち消えさせた。
机の上に弁当が2つちょこんと置かれていた。
僕も家族の一員かぁ・・・。なんだか、うれしい。
「麻耶ちゃんの好きな食べ物がわからなかったから、昨日の残りを入れておいたからね~」
台所でお母さんが言っていた。弁当?
「なんで弁当が必要なんですか?今日は学校がないはず、」
「お祭りの準備のお手伝い。夕方までには完成させないといけないから、早くし始めないといけないの」
横から和美ちゃんが入ってきた。
「夕方から、ですか。結構舞台とか大きそう」
「この地区の一大イベントだからね。ここの地区の人々は、これのために生きているって言っても過言ではないのよ~」
「さあ、朝食ができましたよ~」
テーブルには、新鮮なサラダ、ゆでたまご、そして小麦色にカリカリに焼けて、
その上に溶け出している黄色のバターが上手にマッチしているパン、
そして、この朝食の引き立て役のホットミルク。
食事のいちいちが可愛らしく、僕の乙女心をくすぐる。
一口、パンをかじる。
小麦の芳醇な香りが口腔内に広がる。
それをホットミルクで流し込む!
ミルクとパンは絶妙にマッチし、それは上手な二人三脚のように旨味を増幅させていく。
次にサラダだ。美しく、新鮮な緑に染まった宝の山を、次々に口に入れる。
そして最期の大トリ、ゆでたまごだ。
ゆでたまごの皿に塩、マヨネーズが乗っかっている。
そして僕は迷わずに塩を選ぶ。
なぜかって?好きだから!
塩はひとつまみがベスト。そして、ひとかじり。黄身が上手に半熟だ。
お母さん。これは手馴れているね。ゆでたまごを食べ続けてきた僕だから分かる。
「どうしたの?麻耶ちゃん」
端から見たら死んだような目をして朝食をばくばく食べていたのだと後になって和美ちゃんから聞いた。
なら途中で言ってくれればいいものを・・・
家からじゃり道で30分。ちょっとこんもりしている山の頂上だという。「ちょっと」が気になる。
やっぱり思ったとおりだった。都会っ子は軟弱だと言われるのはしょうがないのかな。
頂上にたどり着くと大きな木が目の前に現れた。
今まで見たことがないほどの威圧感。
神社などのスピリチュアルにまったくうとい僕だけど、この場所は神聖な場所なんだなということを
すぐに悟った。ただ木が一本立っているだけなのに。
「ああ、お城ちゃんがササゲミの役か。頑張りぃ」
「ありがとうございます」
年老いた男性が和美ちゃんと談笑している。
・・・そういえば、消えた先生が「ササゲミ」について知っていたけど、何だったんだろう。
おずおずと聞いてみる
「あの、ササゲミって、何なのですか?」
「えーっとな、話すと長くなるが、」
「私から説明するわ。昔、遥か彼方から人々がここに来たっていう伝説があったのよ。
そこの人々が昔からここにいた人に様々な技術を教えて、今に至るらしいっていう話なの」
「あれ、でも、その技術が発揮されているようには見えないんだけど」
「その技術は主に豪族の人たちに教えられたんだけど、
そのあと戦乱があってその技術も忘れ去られたんだってさ」和美ちゃんは残念そうな顔をした。
「もったいないなぁ。なにか書き残しておいたらいいのに」
「んで、その人々を奉るために、この木を祀っているんだって」
木に目をやる。
「それでその催し物が、」
「今日ってわけ」
さっきの男性がリアカーに色々と入れている。
「さあ、組み立てるぞ!」
大木の前に木の机があり、その木の机から赤いカーペットが一直線に敷かれている。
その両脇には円柱の木の棒が50本づつ並べてたってある。
円柱をたてるのが僕達の仕事だ。
日本の祭りとは思えないようなものがたくさん目に入る。
「これでよし、と」
満足そうな顔で和美ちゃんが見上げた。
もう夕方だ。山からの眺めも素敵。
人々の熱気と喧騒が下から聞こえる。もうすぐ祭りの始まりだ。
僕は屋台で勝ったりんご飴をぺろぺろなめつつ、和美ちゃんの用意してくれたござに座っていた。
この場所は和美ちゃんが好きな場所で、いつもお祭りの時にはここでござを広げて見ているそうだ。
お父さん、お母さんもカメラと三脚を担いで来た。
「これで和美も一段と大人に近づいていくんだなぁ」
お父さんがしみじみとした顔で語っていた。そうして祭りは始まった。
下ノ瀬地区の催し物の子供の踊りで祭りは幕を上げた。
その後は婦人会の踊りなどなど、普通のお祭りが続いた。
僕はりんご飴の2つ目の袋を開けようとした。するとスポットライトが消えドン、ドン、と太鼓のなる音がし始めた。
オオトリの始まりだ。
白い着物を着た和美ちゃんが赤いカーペットの端に立っている。
スポットライトが和美ちゃんに当たると人々の歓声が巻き起こる。
若干緊張していた和美ちゃんは何かを唱えている。
大丈夫かと心配しているお母さんの方をポンポンと叩き、「大丈夫だよ」と落ち着かせているお父さん。
町民のみんなが和美ちゃんに注目して、応援している。頑張れ和美ちゃん!
そして何かを唱え終わったあと、しゃなりしゃなりと歩き始めた。
なんとも言えない美しさ、気品がある歩きかただ。いつもの和美ちゃんとは違う。
いや、これが本当の和美ちゃんの姿なんだろうか。
本当の和美ちゃんは、気品があって、透明な美しさ、おしとやかな女性なのだろうか。
僕はそんな「本当」の和美ちゃんを守れているのだろうか。
守るということはどれほど難しいか再認識した。
和美ちゃんは木の机までにたどり着き、ひざまずく。
ここからの練習がきつかったと話していた。僕も胸がばくばく鳴っている。
和美ちゃんはすっくと立ち上がり、机の上においてある大きな木のコップを持ち、
なみなみとついである水を飲み始めたのだ。
苦しそうな和美ちゃん。うう・・・。自然とお腹に力が入る。
そうして、飲みきった。顔が白くなっている。
そうしてまた崩れるようにひざまずく。場は最高潮だ。
そして最後、ふりしぼる力で手を宙に上げた。成功したのだ。
和美ちゃんの元へ駆け寄る。ヘトヘトになって座っているのが精一杯のようだった。
「お疲れさま。このりんご飴、舐める?」
「いや、もう何も入らないわ。胃の中がぱんぱん、」
「ぱんぱん?」
和美ちゃんは茂みの中に急いで入っていった。「ちょっと耳をふさいでおいて!」
茂みから死にそうな声が聞こえてきた。なるほど、耳をふさぐ。
「オーケーだよ!」
外では女の子に似合わない音が聞こえるのだろう。
何分か経って、スッキリとした和美ちゃんが戻ってきた。
飴をあげると、がっつくようにになめ始め、飴は消えてなくなってしまった。
もうちょっと舐めときゃよかった・・・。
「まったく、男の子だったらまだしも、女の子になんでこんな事をやらせるのでしょーかねぇ」
「本当に日本とかけ離れた祭りだよね。三大奇祭に入ってもおかしくないのに」
「一度登録しようとしたんだって、でも無理だったみたい」
「なんで?」
「ここの地区の有力者たちがそれを取りやめさせたんだってさ。たくさんの人が来ると
その祭り自体が観光の催し物のように軽く扱われるのが嫌だからーって」
「私としてはもっとこのお祭りが有名になって沢山の人に来てほしいと思うけどね」
「僕はどっちもどっちだと思うなぁ。このまま閉ざしたままだと絶対に遠くない未来に
このお祭りはなくなっちゃう」
和美ちゃんがふんふんと首をふる。かわいい。
「でもさ、観光地化したら、確かに人は来ると思う。でも、
今のように一体感あふれて、あたたかいこんなお祭りになると思う?」
「まぁ、それは・・・」
「僕は知っている通り都会から来たんだけど、お祭りは騒がしくて、事件や乱闘なんてあたりまえ、
さらに危ないお兄さんたちがウロウロしてるんだよ!ここのお祭り会場に来た人たちくらいに!」
「ひっ」と小さな叫び声を上げる。まぁ脅かすのはこれくらいにしとかないと。
「それでも、人はいたほうがいいよね」
「でも、ありがとう」
えっ?唐突に言われても分けがわからない。
戸惑っているうちに和美ちゃんがぎゅっと抱きしめ、
「いろいろ、ありがとう」とポツリと、そうつぶやいた。
分かっていたのだ。
「先生、残念だったね」
「でも私はウジウジしない。私は死ぬまで犯人と戦うわ」
意を決したようだ。
「僕も和美ちゃんを死ぬまで守るよ」
これってプロポーズ!?でもいいや。本人が気づいてなさそうだし。
「ねぇ、君の事、麻耶ちゃんって呼んでいい?」
「うん。和美ちゃん、いいよ」
「星がきれいだね」
昨日と変わらない美しい夜空だった。
つづく
続くの?
つづくよ
オヤスミダ
寝てんじゃねえよダゴゼ
俺も今SS書いてるけどこういう文は中々参考になる
内容は大体は分かる
なろうコンの一次審査通るか通らないかかな
勢いが700超えててワロタ
みんな見てるんだな
明日読むね おやすみ
もうちょい足せば面白いの出来そうなんだがなあ…
「あの少女の電話は本当に間違い電話だったのですか?」
石田は警視長に詰め寄った。
「だから言っただろう、石田くん。これは間違い電話なのだよ」
「しかし、こんなに事細かな内容の間違い電話って、しかも連絡してきた少女の声は真剣味そのものでした!」
「石田くん!もう君も昇進したのだ。いつまでも巡査ではないのだぞ」
警視長が一喝する。まるでこの案件に関わりたくないかのように。
「確かに石田くんがこの町にこだわっとるのはわからなくもない。
だがなぜ間違い電話にそこまでこだわるのだね。実際にその場所に行ってもガイシャはおろか、
少女の言っていた荒らされた形跡も出てこないのだぞ。これをどうやって事件にできる?」
「す、すみません。警視長。私としたことがつい熱くなってしまって・・・」
「君のその警察官としての意識の高さ、そして体力、どれをとっても他の警察官の一つ上を行っておる。
まさに警察官の鑑だ」
「ありがとうございます」
警視長は一つ、咳払いをした。
「ただ、自分の思ったことをそのまま突っ走ってはイカン。あの事件とて、君のその性格のせいで起こってしまったんじゃないのかね?自分でもわかっているだろう」
石田は何も言い返すことができず、乱れた服を整い直し、敬礼をしてそのまま部屋を立ち去った。
「あの性格が玉にキズなんだよなぁ・・・」
そう警視長はポツリとつぶやいた。
待ってた!
次の日、いつもの美味しい朝食を食べつつ、和美ちゃんは駅の路線を確認していた。
無事お祭りが成功したということでお父さんからおこづかいをもらったので、それを使って隣の地区で物品を買いに行くそうだ。
ここの地区は山が障壁となって、隣の地区に行こうとしたら必然的に電車を使わなければならなくなってくるのだ。
僕も久しぶりに外の空気を感じてみたかったので、楽しみだな。
「行ってらっしゃーい」
『行ってきまーす』
駅は二時間に一本の超スローペースのため、駅まで走っていかなければならない。
次は10時発の電車か。風にさらさらとなびく和美ちゃんのロングヘアーが素敵だ。
やっぱりさらさらとした髪は映えるなぁ。
そしておめかしをした服装で、チェックのスカートをなびかせる。
そこから少し見える太ももがとても健康的な少女に演出する。
「私の体はは和美ちゃんに見られるためにできてませーん」
目線に気がついていたようだ。よし、それなら!
「和美ちゃんの髪っていい香りがするよね~、かがせてっ!」
飛び込むようにむんずと和美ちゃんの髪をつかむ。
「シャンプーおんなじなんだし、別に髪の香りは一緒じゃないの?」
走りながらなので、体勢がきつくなる。
僕はつかんでいた髪を離すと、和美ちゃんの体勢ががばっと崩れ、倒れる!
それに合わせて僕も倒れる!
幸い道が芝生だったから、汚れが無くて怪我もしなくて良かったけど。
「ごめんね・・・」
「いいよ、でもあと10分!」和美ちゃんは悲鳴を上げた。
見ると9時50分。
「大丈夫」なぜかその言葉が僕の口からついて出た。
僕は和美ちゃんの手をとって走りだした。
駅まであと500m。がんばれ僕の体!
駅についた。時計を見ると9時58分。なんとか間に合った。良かったよかった。
そうして僕と和美ちゃんは電車に無事乗ることができたのである。
「そういえば道具って、なんなの?」
「ああ、マジックの道具のことね。私実は昔っからマジックが大好きだったから。家に帰ってから見せてあげるわ」
実に楽しみだ。ぜったいタネを明かしてやろう。
カタンカタン、と二両編成の電車が走る。
5分ぐらいの長い山のトンネルをくぐると、そこには開けた町が広がってきた。
「人口9000人のうち、8500人があっちの地区に住んでるからね。開けてるのは当たり前だわ」
「下ノ瀬、下ノ瀬」キキぃ。と電車が止まる。
休日だからか、降りる人が多い気がした。
駅を出ると、温泉街の看板が目につく。
「和美ちゃん。ここの地区って温泉が出るんだね」
「いや、こっち西沢地区もでるんだよ。でも十分な観光資源になりにくいから掘ってないだけ」
「じゃあ、何が観光資源なの?」
「何もないのよ」「何もない?」
「そう。何もない」
これじゃ当たり前だが人が来ないだろう。まさに自然の要塞だ・・・。
バスを使って20分のところにそのお店はあるという。
僕達はバスに乗り込んだ。
すでに暖房がついていて、とても暖かかった。満天の青空と白い雲。
毎日がこんなに綺麗な空だったらいいのに。僕は空を見ながらそんなことを考えていた。
バス停に降りた時にはもう12時。お昼の時間だ。
僕らは近所のコンビニでおにぎりを2つづつ買った。
僕は明太子、和美ちゃんはシーマヨだ。近所の噴水が出ている広場で食べることとなった。
「ここから歩いて2・3分ってところね」
マガモが噴水の水面をゆらりゆらりと泳いでいた。
「でもさ、」
「先生の話はさ、しないでおこうよ。周りの人に聞かれたら物騒だし、さ」
「うん・・・」
しぶしぶと和美ちゃんは頷いた。
もちろん僕もその気持ちはわかっている。
犯人を見つけたい気持ち、自分が消えてしまうんじゃないかという気持ち、様々な気持ちが入り交じっている事は。
冬だなぁ・・・。
そういうことで僕達は無事にマジック専門店にたどり着くことができた。
しかし、特に特徴のない商店だ。若干寂れている感じも他の店とは変わらない。
看板には何も書かれていない。ぱっと見閉店しているようにも見える。
「おもしろいお店」と和美ちゃんは言っていたが・・・はて?
カランカラーン、と軽いドアベルの音が鳴り響く。
見るからにがらんどうだ。あるのは真ん中に無造作に配置されている長机と椅子だけ。
「おじさーん、いるー?」
中には誰もいませんよ?
すると、足音がどこからともなく聞こえてきた。
上か、奥か?
・・・下だった。
ちょうどテーブルの下が入り口になっているらしい。がぱっと扉が開くと床から手で「こっちへ来い」と催促された。
机をどかし、下に入る。和美ちゃんは鼻歌を歌いながら軽々と入っていった。
はしごで降りてみると、鉄の螺旋階段になっていた。風が下からピュウピュウと吹き上げている。
相当深いところまであるとみた。
下を除くと闇、コンクリート壁に等間隔でにランタンが引っ掛けられている。
前には和美ちゃんと、その店主らしき人が降りている。暗くて素性がわからない・・。
まだまだ続く・・・一体どこまで下がるんだ・・・。
ぺちゃくちゃと和美ちゃんとその人が話しているようだ。
・・・ぼんやりとした光が見えた。もうすぐか。
和美ちゃんらが中に入っていく。僕も入らなきゃ。
ドアノブを開き、数歩歩くと奥から店主と見られる男性が詰め寄ってきた。
「君は、麻耶さんかね」見た目は60代、おじいさんだ。
「は、はぁ」
部屋は見た所”マジックのタネ”屋さんではない。
よくわからない数値をたたき出している機械や、派手なビープ音を奏でている箱。
科学者と言ったほうが良いのではないだろうか。
とりあえず和美ちゃんがウソを付いているのは分かった。
「和美ちゃんの友人だそうな」
「ええ。よく仲良くさせてもらっています」そう言うと、おじいさんは笑顔になった。
「お茶はいらんかね?」小汚いカップになみなみとウーロン茶がついである。手に取るのはやめとこう。
「あのぅ、ここってなんですか?」
和美ちゃんが割って入ってきた。
「だから、マジックのタネのお店だよ!」
「しらばっくれるのはやめなよ、ここはどう見てもそんなお店じゃないよ!」
「?」
「もう帰ろう。」和美ちゃんの手を引っ張る。
ここから出ないとやばそうだ。
「ちょっと待ってくれ、麻耶さん」
「なんですか?」何を言っているんだろうか。
おじいさんが急に頭を抱え込む。僕も和美ちゃんも怪訝そうな顔をした。
「和美ちゃん、ちょっと外に出ていてくれ」
鍵をかけ、ふぅと息をつくと、僕に話し始めた。
「1985年。わたしは一人の少女を生み出した。もちろん生物学的な生み出し、ではない。当時のわたしの知識、経験、そして科学的好奇心から創りだされたロボットだ。機種名は”KAZMI”。もう分かるだろう?」
そんなフィクション、あるわけがない。ちゃんちゃらおかしいお伽話だ。
「脳はアメリカで研究されていたAIチップをパクってきた。皮膚、臓器は全部当時の最先端技術の人工皮膚だよ」
「わたしは出来上がったKAZMIを溺愛し、親子のような関係だった。しかし本物の親子にはなれなかった。所詮は創造主だったのだ」
「だからわたしはAIチップをコピーし、親のプログラムを作り、親も生み出し、家を買い、ペットの犬までも買った。これで本当の家族だ!当然わたしとの関係も消そうと思った。だが、最後のわたしのKAZMIへの愛情がそれをさせなかった」
「彼女にとってわたしは今はマジックのタネ屋さんとして存在しているわけだ」
笑うしかなかった。あんなに感情豊かな和美ちゃんが、ロボットだなんて、
あんな真面目で可愛い和美ちゃんが・・そんな・・・・バカな・・・
「ウソを言うのもいい加減にして下さい!」
ぱさり、と冊子を手渡した。 何であるかは理解できる。
しかし、読みたくなかった。
「ちょっと前、君の学校の担任が消えただろう?」
「なんでそのことを知っているんですか!?」
「彼女には弱点があった。その弱点がこの事件を引き起こしてしまったのだ」
「その弱点は!?」
「彼女の精神はまだ不安定なのだよ、しかし、君の前にはそれを見せなかったようだがね」
「どういうことなの?」
「彼女は”生まれて”すぐに、とある謎のプログラムエラーが発生した。
どこを探しても原因不明、体には異常がなかったので放っておくことにした」
「彼女は日増しにわたしに対して”隠し事”をしてきた。しかし、それは何であるのかはある程度は予測できた」
おじいさんはポケットから謎の小さな黒い塊を取り出した。
「わたしは”それ”を抑制するための電子チップを脳に投与し始めた。しかし、3週間で彼女のAIの成長スピードにチップが追いつけなくなった。だからわたしは定期的に彼女にこさせるように仕向け続けていた」
「成長・・・か」
「ここから本題だ。そして今回の事件。その日付は投与した翌日なのだ」
僕は頭をこづかれた気分になった。あれっ?どうして・・・?
「このことを知っていて、外部に教えている内通者がいる。わたしの研究の内容を知っている奴がいるのだ」
いとも簡単におじいさんは答えた。
しかし、その答えは非常に残酷な意味合いを持つ。
・・・外部はなにかこの案件に意思・考えを持っているということだ。
「その後に不思議に思って彼女のAIを調べてみたら、なんとびっくり、チップが取り外されて、代わりに新しいチップがついていた」
「もちろん、今は取り外しているのだがね」
「そこで質問だ。君はそういった彼女と外部との接触を見たことはあるか?」
もちろん、あるわけがない。ありえないのだ。
「な、何を言い出すんですか!僕じゃないです!絶対に!」
僕は感情のあまり勢い良く立ち上がってしまった。
「ああ、もちろん。君じゃないだろう。だが、気をつけていてくれたまえ。ヘタすると君も、消える羽目になるのだよ」
「そして忠告だが、くれぐれもロボットだということを彼女には伝えんでほしい。わたしからの最期の親としてのお願いでもある」
ドアからどんどん、という音。待たせすぎたか。
外に出た時にはもう夕方、夜に差し掛かっていた。
「マジックのお店たのしかったわねー」和美ちゃんは朗らかにそういった。
これも、プログラムなんだよなぁ・・・。
「そうだね」そう、答えるしかなかった。
彼女はわるくない。悪いのは外部の人間だ。”生み出した”人間だ。
なのに、なぜ、なぜ彼女に対してなんとも言えない気持ちになってしまうのだろうか。
目と目が合わせられない。
橋の上で二人、微妙な関係なのは明らかだった。
ごめん、なさい。
今の僕の目は彼女から見れば、とても濁って淀んだ目をしているだろう。
これが僕の本性なんだ。これこそ、僕なんだ。
「麻耶ちゃん、今日の夕飯はなんだろねー?」
『パシッ』
発作的に彼女の頬を打ってしまった。ヒリヒリとした感触が手に伝わる。
やってしまったのだ。
もう、これで、平穏な日常”ごっこ”は終わりだ。
やはりここでもダメだったのだ。
「え・・あ・・・」
どうすればいいんだ! もうわからないよ!! どうしてどうして、どいつもこいつもこんなにも自分勝手なんだ!
こみ上げてくる悲しい思いを抑えきれずに嗚咽を漏らしてしまった。
「だ、大丈夫?」彼女はオロオロしている。
叩かれた意味も知らないからっていい気なもんだ。あたりまえか。
「と、とりあえず家に帰ろう?ね?寒いしさ。もう私先に行っちゃうよ!」
確かに寒い。もう12月にさしかかろうとしているこんな時に、一人でいるのは命に関わるだろう。
とりあえず大きな感情は収まったので、僕はぺたぺたと和美ちゃんの後をついていった。
なんでビンタしたし
数日後、石田は異動届を出した。
この案件があまりにも怪しいという勘からだった。
案件のためなら、身を投げ出しても良いという正義感から彼をそうさせた。
絶対に犯人はいる。あの少女は本当に危機を感じ、通報したのだ。
幸いにも石田は事件の捜査に呼ばれていなかったので、上司からは寂しがられたがすぐに受理された。
これも信頼の賜物なのだろうか。
と、いうことで石田は坂木地区派出所の配属となったのだった。
25歳、独身。とてつもなく朴訥な男であった。
カタンコトンカタンコトン・・・
線路の反響が闇へと消えてゆく。
坂木地区に帰ってきたのだ。
田舎だなぁ・・・。
「今夜の夕飯な何かしらー?」
和美ちゃんは食い意地が貼ってるなぁ・・・。
坂から見えた夜景は、闇だった。
家は電気がついていて、帰るのを待ち構えているようだった。
「帰ってきたね」
「たっだいまー」和美ちゃんがドアを開けていた。
僕は郵便物を取ってくるか。
ここらへんひぐらしじゃないものに影響されてるのか?
なんだこれは・・・
なぜ「今日の夕刊」が入っていたままなんだ!
明かりがついていて、いるはずなのに!
和美ちゃんが飛び出してきた。
感情は、ないていた。
ほら、やっぱり人間じゃないか。
ちゃんとした人間なんだよ。
「麻耶ちゃん、麻耶ちゃんは生きてるよね・・・・。ううっ・・・」
「生きてる。和美ちゃんが死ぬまで僕は死なないよ」
「ここから逃げよう。もうバレているんだ」
「逃げたらまた追いつかれてしまうかもだよ!」
「その時はその時。諦めちゃダメなんだ。諦めなきゃ生きれるんだ!」
「生きなきゃならないんだ!僕のためにも、そして君のためにも!」
和美ちゃんが殺した可能性なんてことはあえて考えなかった。
和美ちゃんのお父さん、お母さん。
ありがとう。そして、さようなら。
そして、僕たちは、逃げた。
希望を見つけるために。
第一部 完
>>48
さすがに丸パクリは嫌だったんじゃないかと
1990年12月10日 午後4時52分通達。
Z県田沼郡川本町坂木地区にて大規模な爆発発生。
半径九十キロメートルが粉塵と化している状態。
死者・損害不明。
緊急報告。
爆発直前に同地区にて小規模の地震が発生、それとの関連性も指摘されるが、爆発原因不明。
大都市圏への影響も心配される。
2020年12月10日 午後4時52分。
あの大爆発から30年を経過していた今、今もなお遺族の深い悲しみは取り除かれていない。
死者、行方不明者6万人という大惨事は、その後の日本の有り様を大きく変えた事件でもある。
現在、爆心地から30キロメートルは立入禁止となっている。
その地に足を踏むことが出来るのは、一体いつになるのであろうか。
両親退場はや!
特例「Q12」による空白地帯、通称「旧爆区域」。
そこには誰もいなかった。
いや、無かったと言ったほうが正しいかもしれない。
そこには吹き荒れる砂けむりのみ、あった。
いや、それもおかしい。
なぜなら、そこには棺桶があったからだ。
丸い楕円の棺桶。弥生時代を彷彿とさせるその図形は、
地面にまるで前からあったかのようにぽつり、とあった。
しかし、弥生時代にはないものが入ってあった。
サイボーグの少女である。
第二章「2020年 秋」
はやく書けゴモラ
旧爆区域、監視のプレハブ小屋に男が二人いた。
一人は痩せて、もう一人は太っている、なかなか対照的な姿の2人だった。
「こんな良いバイトあるか?泊まり込みで
誰も人が来ない所で人がいるかどうか確認するだけの作業で、
めちゃくそ給料がもらえるんだぜ?」
ふとっちょが鼻歌交じりに話かけた。
「でも暇ですよね。なんにもないですよ。通信機能もつかえないし圏外だし」
痩せた男が、小屋に設置してある安物ベットでごろんと横になる。
「そういえばみました?生体反応がここんところ数日前からあるんですよ」
「おかしいな。迷い猫かな」
怪訝そうな顔をする。外は猫の子一匹通さない厳重な警備なはずなのに、おかしい・・。
「とりあえず数日経っても生体反応があったら上に連絡だけしておこう」
広域サーモグラフィを起動しつづけて15日目。本来は電力上いけないらしいが、事が事だ。
「生体反応あり、まだ生きているようだ。しかし初期発見時からなにも移動していない、と」
業務メモにまとめておいておく。上が来た際にこれを提出しておけばいいだろう。
「上はいつ来るんですかね。もう来てもおかしくないのに」
人がいるかどうか捜索をしてきて疲れているらしい。痩せた男は体についた砂を取り除く。
顔を見ればめぼしいものがないのが分かった。
あいつはすぐに表情に出るから分かりやすい。
「ああ、そうだな」
少女は、立ち上がった。
少女は、立ち上がり、一歩目を歩いた。
少女は、足を崩し、倒れた。
少女は、まるで生まれたての子鹿のごとく。
少女は、倒れた。
少女は、また、立ち上がった。
少女は、何回かその行動を繰り返した後、一歩目を踏み出すことに成功した。
一歩目、二歩目、三歩目、・・・。
もちろん、杖など何もない状態だ。
服は裂け、ボロボロになりながらも這いつくばり、また立って、歩き始める。
少女は、求めていたのである。
少女の、最初で最後で最愛の友人、「崎田麻耶」を。
秘密結社レゴリス、地下一階「PCの間」
暗闇の中、怪しげなコンピューターが所狭しと置かれている。
ビープ音が至るところで鳴り続けている中、ハゲで小太りの男が、その暗闇の中央で一人、
怪しげに光る液晶と対峙して座っていた。
突如として男はキーボードの叩くスピードをあげた。これは・・・、まさか!
「生体反応をついに表しました、チーフ!例の少女です!長年ここに座り続けたかいがありましたよ!」
「そうか、よかった。コレで計画は遂行できそうだ。君の存在意義が今わかったよ」
機械上で女性が皮肉さいっぱいで答える。
小太りの男は苦笑いをした。たしかに今まで何もしてこれなかったもんなあ・・・。
これで奴らに対抗できる、かもしれない。
いや、できる。絶対にこの戦い、レゴリスが勝ってみせる!
男は暗闇の天井を見上げ、ガッツポーズをした。
「人類再製、か。人間が再び1になる時が来たのだな」
一人の白衣を着た老紳士が暗闇の中央でボロボロのソファーに座っていた。
隣にはもたれかかるようにしてタキシード姿の青年が立っている。
影で顔はわからないが、姿から見てぱっとみ10代前半に見える。
しかし醸しだす空気は、10代前半のそれではなかった。
「もう我々は科学、医療、工業、全てにおいて成熟してきました。
すなわち我々はどこかでストップさせないと、進化の最終、すなわち滅亡へとたどり着いてしまうのです」
「左様。そして我々は滅亡への道を歩み始めている。地球温暖化、フロンガス、砂漠化、
そして一歩間違えば人類の滅亡、核の開発だ。ものの見事に自然の摂理通りにことが進んでおる。
しかし、我々は自然の摂理なんかによって滅びとうない」
「それゆえ、我々はなんとしてでも人類再製をしなければならんのだ」
すっくと老紳士が立ち上がる。
それと同時にタキシードの青年が叫んだ。
「さあ、始めよう!我らの革命、我らの正義を貫くために!」
その声は闇へと消えていく。
と、同時に万歳の声が反響し始めた。
照明をつけると、そこには何百人もの群衆が立ち上がって万歳の声をあげていた。
ニヤリ、と老紳士は笑った。
「へい兄弟、可愛いお姫様はまだおねんね中か?」
「相当ボロボロで疲れていたようだからな、起きるのはもうちょっとかかりそうだな」
ベッドには少女が眠っていた。
実は眠るのではなく、生命維持装置がビジー状態になっているだけなのだが、もちろん彼らは知るはずもない。
「なあ、名前は何にする?」
細い男が聞く。
「やめろ、情が移る。情が移ったらろくな目には合わん」
否定的な発言をする太っちょ。
「その言い草は過去に有ったっていう節だな?」
「余計な詮索癖はやめろ。命に関わるぞ」
いつになく真剣な表情で太っちょが言った。
沈黙が続く。
痩せた男が上を見上げ、ポツリと言った。
「なぁ、なんで俺がこの仕事に入ったか知っているか?」
「余計な詮索はしない癖でな。そんなこと思ったことはねえ」
太っちょは観察記録を引っ張りだす。まるでそんなことを聞きたくないかのごとく。
「そう、か」
痩せた男は苦笑する。
「なあコーヒー、持ってこようか?」
「ああ、頼む」
太っちょのコップはプラスチックの可愛いイラストの入ったやつだ。
なぜそれを愛用しているのか聞きたかったのだが、無理そうだ。
コーヒーの香りがプレハブ小屋の中に充満する。
2020年。世界は國家連合による支配にさらされていた。
国家というスタンスはとうに消滅していた。もちろん領土、宗教などの争いが起きるはずもない。
平等なのである。
人々はユートピアの実現と喜び、國家連合を迎え受けた。
しかし、本当は違っていた。
なぜなら國家連合は本当の意味での平等であったからだ。
國家連合のトップ、総指揮、人々の管理は人工全能神「ゼウス」によって執り行われた。
完全正確な計算により、仕事、レジャー、ましてや結婚・今後の人生の歩み方までも人々に電子情報として伝え、指揮した。
しかし、全能神であるはずのゼウスは一つ、計算できないものがあった。
人のココロである。
そういった機械的な國家連合の支配によって二つの人間が生まれた。
ゼウスを妄信し、ゼウスと一体になり、そしてゼウスの奴隷となる人間。
そして、ゼウスに対して反抗する人間。
この章はそうした反抗する人たちをピックアップした物語である。
「散れっ」女性がマイク越しで伝える、
と同時に迷彩柄の数人がプレハブ小屋へとにじり寄る。
それぞれ銃を片手にして。
ドアに怪しげな装置を設置する。
迷彩服たちの一人が手をあげる。
ドアは爆発した。粉塵と化し、跡形もなく砕け散った。
「おい、おい!!」太っちょが叫ぶ!しかしその声は血の海へと反響していった。
痩せ男も反射的に駆けつける。しかし時すでに遅し。銃声が聞こえる。
2つの血の池が出来上がった。
2つ並んだコーヒーカップは、もう二度と使われることがないだろう。
この間、2分半。
「でもやっぱり殺人ですよこれ」小太りが悲痛な目で女性に訴えた。
「殺人ではなくて強制解雇。何度も言っている通り彼らはロボット。言い換えれば奴隷身分なのよ。
我々は彼らを開放してあげたにすぎないの。きちんと後で直しておくから大丈夫、記憶と共にね」
これより先はない どうやら受験の時期に入ってやめたっぽい
続き書いてよ
「た、確かに、そうですけど」
『ゴスッ』
納得のいかない小太りに女性は真顔で鉄拳を食らわせた。
一見して細身で低身長なか弱い出で立ちだが、音から察するに中身は違うようだ。
「いい加減にしなさい」
「は、はひ・・・」
鼻血を垂れ流しながら敬礼をする小太り。
続きは小説家目指してる人かいて
なかなか面白い
ぜひ続けてくれ
鼻血を出している小太りを背に女性は従業員に声をかけた。
「それで?ブツは?」
女性はパイプに火をつける。
木のパイプにはピンクのハートマークが彫ってあり、女性らしさを演出する。
「は、はい。無事に発見、保護しました」
「よくやった」従業員の頭をくしゃくしゃとかく。
傍から見たら少女に大の大人によしよしとされているようだったのだが、
従業員は充実した満悦そうな顔をしていた。
短い奴かと思ったら結構本格的でわろた
レゴリス「保護の間」
暗闇の中に一つの電球が天井から、こうこうと明かりをたたえながら裸のままで垂れ下がっていた。
その下にはベッドがひとつ、少女が横たわっていた。
来ている服は綺麗に洗われ、アイロンでシワ1つなく伸ばされていた。
「ホント、慣れない仕事は疲れるわね」
闇の中から声がした。声の主はさっきの女性。
「ふふっ、あなたには頑張ってもらわないと。おやすみなさい」
そして女性は少女に熱い接吻をした。
「ふふ・・・ロボットのくせによく出来てるわね」
それをやめると女性はまた闇へと帰っていった。
《不定期更新》
ひぐらしとかけ離れてるな
今までのやつって小説家になろうのコンテストならどこまでいけるんだろう
参加賞貰えればイイレベルだとは思うけど
一次審査引っかかるか引っかからないか
少女が目を覚ます。
「ここは?」
無機質なブルーライトが眩しく少女を照らしつける。
そこに彼女が見ていた緑は無かった。
《モニターの間》
「良かった、体液は現在のA-57でも通用するのね」
「まぁ、我々ロボットの最初の存在ですからね。まさかこんな形で先祖に会えるとは思いませんでしたよ」
笑みを浮かべる従業員。
「さぁて、あなたみたいに冗談が通じるか行ってみましょうか。初めての面談はどうなるでしょうね」
舌なめずりをする女性。怪しげな笑みは従業員を凍りつかせた。
「はは、あはは・・・」
保守
良スレ上げ
ドアがひらいた。相変わらず闇なのでカツッカツッという足音だけが反響する。
少女は掛け布団を引き寄せ、震えていた。
「お目覚めですかな。大事なお客様」
闇から声が聞こえる。それが彼女の恐怖を増長させた。
「私は、死んだのに、生きているのね・・・」
小声で彼女はそうつぶやいた。
「そうね、あなたは生きてるわ。私達はあなたをむざむざ死なせはしないもの」
聞かれてる・・・のか
体中を見渡したが、特にマイクらしきものをみつけられない
好感度マイクか・・・!
「なぜ、あなたは、私の声が聞こえるの?」
かぼそい声でつぶやいた。これだったら大丈夫だろう・・・
「あなたの声帯にチップを埋め込まさせていただいたわ。
今の多目的ロボットは皆そうしているの。すべて発した言葉はログにしてとってあるわ」
と、言い終わると「生きているのね」というさっきの少女の声が闇の中から聞こえてきた。
頭ががんがんする。とっさに掛け布団の中に潜った。
はっ、とさっきの女性の言っていた不可思議な単語が頭をよぎった。
「・・・。私は、”多目的ロボット”なの?」
あげ
「そうね。多目的ロボット。どんな職業にも対応できる素晴らしき21世紀の産物。
でも当初は愛玩用として作られたのかしらね。この体型、様子からするに」
闇からの声がぐわんぐわんと反響する。
「もう闇からまどわすのはやめて!姿を見せて!」
少女は力があらんばかりに叫んだ。
だが、その叫んだ声も、もはや小さく闇へと消えていた。
『ガチャッ』
サーチライトの光の筋が大きくなった。
「・・・っ!」なんと、女性はベッドのヘッドに腰掛けていたのだ!
「人間というのは、外界からある程度の刺激が入ってこないときちんと脳のはたらきを維持できないんだって」
女性は笑顔でそう語りかけた。
「もちろん。わ、私は人間ですもの!」
胸に手を当てる。心臓、動いてるもん。
「いいえ、違うわ。あなたは理解しようとしていないだけ。あなたの子孫はちゃんと認識しているわ」
小型携帯モニターを手に持ち、映像を見せた。
同じような暗闇が映しだされていた。
時折うめき声が聞こえる。
「スタート、ぽちっとな」
女性は端にある小さな赤のボタンを押した。
ライオンがそろりそろりと入ってきた。
モニター側からはライオンは高赤外線カメラでちゃんと見ることが出来る。
ただ、うめき声の主は、まだわかっていないようだ。
するするとうめき声の主に近づき、そして、かぷりと捕食しはじめた!
「はい、ここでミュート。つづき、見る?」
「やめて!」殴ろうとしたが、できない!!
なぜか手が近づけられない!
まるで磁石が反発しあうがごとく!
「ふふ、イケない子ね」
あげ
女性は少女に熱い接吻をした。
一度、二度、三度。
度を増すごとにどんどん濃厚な接吻となっていく。
その後はどうなるかは少女は気づいていたが、精神的なショックにより拒むことが出来なかった。
「頬は紅潮気味、まぁそーいうことは分かっているようね」
女性は少女の頬をぺちぺちと叩く。
しかし少女はまだ死んだような顔になっていた。
女性はその様子を笑顔で返した。
「お相手してあげる。私の最初で最後のセックスフレンド」
ふと、彼女は気がついた。
「そういえば”あなた”だけだと色々不便だから名前が必要ね。あなたは息吹。息吹1号」
「そして私は潮目優。精一杯頑張るわ」
「さあ息吹一号さん。お味を体験させていただきますよっと」
潮目は服をするりと脱ぎ始めた。
完全なまでの幼女体型。肌は白く、小学校5年生と言っても差し支えない
そんな風貌だった。
うん
保守
読んだけど面白い
どこが痛いのか疑問
文章が長いから読みにくい
適度に切ってレスしておくぞ
保守
あげ
保守
保守党
労働党