ドアノブを開き、数歩歩くと奥から店主と見られる男性が詰め寄ってきた。
「君は、麻耶さんかね」見た目は60代、おじいさんだ。
「は、はぁ」
部屋は見た所”マジックのタネ”屋さんではない。
よくわからない数値をたたき出している機械や、派手なビープ音を奏でている箱。
科学者と言ったほうが良いのではないだろうか。
とりあえず和美ちゃんがウソを付いているのは分かった。
「和美ちゃんの友人だそうな」
「ええ。よく仲良くさせてもらっています」そう言うと、おじいさんは笑顔になった。
「お茶はいらんかね?」小汚いカップになみなみとウーロン茶がついである。手に取るのはやめとこう。
「あのぅ、ここってなんですか?」
和美ちゃんが割って入ってきた。
「だから、マジックのタネのお店だよ!」
「しらばっくれるのはやめなよ、ここはどう見てもそんなお店じゃないよ!」
「?」
「もう帰ろう。」和美ちゃんの手を引っ張る。
ここから出ないとやばそうだ。
「ちょっと待ってくれ、麻耶さん」
「なんですか?」何を言っているんだろうか。
おじいさんが急に頭を抱え込む。僕も和美ちゃんも怪訝そうな顔をした。
「和美ちゃん、ちょっと外に出ていてくれ」
鍵をかけ、ふぅと息をつくと、僕に話し始めた。