「すみません!」
ぺこり。女の人が突然に謝ってきた。
僕より年上か?でも若くて綺麗な人だ。
髪は僕とは対照的なさらっとした長髪。唇は薄ピンク。生命の息吹を感じさせるような人だ。
「は、はあ。こちらこそすいません」
一応謝り返しておくか。
「あれ、例の麻耶さん?」
僕はこんな知人を知らない。
「だ、誰ですか?」
「ごめんなさい。実は、こんな田舎に引っ越して来た人って、戦時中の疎開以来だから、ものすっごく珍しいの」
「だからもう、住民の全員が知っていると言っても過言ではないのよー」
「ええ!?」
「まあ、続きは私の家でしましょ」
その少女の家は坂の上にあり、こじんまりとした洋風の家だった。
2階には大きな窓があり、豪邸とは言えないが、僕のとこよりかは断然いいだろう。
庭には、大型犬がスヤスヤと寝ている。
「はやく来てね」
ドアを開けて少女はニッコリと笑った。
「じゃないと、大変なことに…」
「えっ?」
僕は「えっ?」と呟いた後、「大変な事」というのが何なのかを悟った。
黒い獰猛そうな大型犬が僕ににじりよって来たのだ!
「うひゃああああああああああああああっ!」
僕は玄関まで走った。
しかし時すでに遅し、大型犬は僕を突き飛ばしてペロペロ舐め始めたのだ!、ってあれれ・・・。
「ほーらアインシュタイン、人をペロペロ舐めないの」
少女が犬と仲良く戯れている。
あれれれれれ…?
「そういう事なら早目に言ってくださいよ」
「いやあ、ごめんなさいね。あの子は小型犬として飼われてたんだけどスクスクとあそこまで大きく成長しちゃってね
それで性格が今でも小型犬のままってわけ」
僕でも小型犬と大型犬とは見分けがつくと思う。
「伝え忘れたけど私は森和美。君と同い年」
「知っての通り僕は崎田麻耶。よろしく」
「こちらこそ」
同い年なのか。しかし僕より確実に大人びている。
「お母さんとお父さんは?」
「仕事中なの」
沈黙が続く。
お茶菓子のクッキーの二袋目を開けた。
「ああ、そういえばこの町についてしらないよね?」
「ええ」
「よし、教えてあげたろー!」
その後まるで呪文のように説明された。
地元っ子しか知らないような秘密基地や、
食品が安く買える場所、そして学校の場所。
説明が終わったのは、夜の6時を越えていたと思う。
「それじゃ」「では、また学校で会いましょう」
玄関先で彼女は手を振ってくれた。
やはり笑顔というものはいいなぁ。
家に着いたら、突如として眠気に襲われ、そのまま冷たい地面で寝てしまった。