ドアからどんどん、という音。待たせすぎたか。
外に出た時にはもう夕方、夜に差し掛かっていた。
「マジックのお店たのしかったわねー」和美ちゃんは朗らかにそういった。
これも、プログラムなんだよなぁ・・・。
「そうだね」そう、答えるしかなかった。
彼女はわるくない。悪いのは外部の人間だ。”生み出した”人間だ。
なのに、なぜ、なぜ彼女に対してなんとも言えない気持ちになってしまうのだろうか。
目と目が合わせられない。
橋の上で二人、微妙な関係なのは明らかだった。
ごめん、なさい。
今の僕の目は彼女から見れば、とても濁って淀んだ目をしているだろう。
これが僕の本性なんだ。これこそ、僕なんだ。
「麻耶ちゃん、今日の夕飯はなんだろねー?」
『パシッ』
発作的に彼女の頬を打ってしまった。ヒリヒリとした感触が手に伝わる。
やってしまったのだ。
もう、これで、平穏な日常”ごっこ”は終わりだ。
やはりここでもダメだったのだ。
「え・・あ・・・」
どうすればいいんだ! もうわからないよ!! どうしてどうして、どいつもこいつもこんなにも自分勝手なんだ!
こみ上げてくる悲しい思いを抑えきれずに嗚咽を漏らしてしまった。
「だ、大丈夫?」彼女はオロオロしている。
叩かれた意味も知らないからっていい気なもんだ。あたりまえか。
「と、とりあえず家に帰ろう?ね?寒いしさ。もう私先に行っちゃうよ!」
確かに寒い。もう12月にさしかかろうとしているこんな時に、一人でいるのは命に関わるだろう。
とりあえず大きな感情は収まったので、僕はぺたぺたと和美ちゃんの後をついていった。