授業が終わって夕日が穏やかに照りつけている頃、職員室の前に僕は立っていた。
急に雷を含んだ雨が降ってきた。夕立だ。
地球温暖化もここに極まれり、か。
窓を開けっぱなしにしていたので、窓を閉める。
窓の外に人影がいた。傘もささないとは、まあ、忘れたんだろう。
しかし、なら何故雨宿りをしないんだ?
実に不思議だ。
ふと目を離した隙に人影は消えてしまった。
幻覚なんだろうか。
職員室というプレートが掛かっているドアノブに手をかける。
が、まったくもって活動していない。生き物の気配すら無い。
普段(昨日だけだが)はコピー機やら何やらがせわしなく動き、
外からでも先生としての職務をまっとうしている様子だった。
しかし今は・・・
イヤな予感がした。
僕は勢い良くドアを開け、突撃した!
遅かった。僕はあまりにも悲惨な現場に呆然と立ちすくんでしまった。
文書の書類は辺り一面に散乱し、
物が投げられた跡、そして黒板にある手形の血痕。死体は・・・ない!
真面目そうなあの先生がそんな事をするはずがない。
『何者かに連れ去られた?』
僕はぞっとした。
何故先生を?
そんな馬鹿な、大の男を消すなんて、誰にでもできることではない。
その時、人影が!
僕は机の中に逃げ込んだ。
二つの人影が見えた。部屋の中に入ってきたらしい。
なにやら会話をしているようだ。
耳をそば立てる。
「奴の記憶消去は、できているな?」
こんな田舎では聞くはずもない、人工機械の声だ!
「ああ。もちろん。今後もそうやっていくんだろうに」こっちはしゃがれた肉声だ。
「一人目がこれなら、まあまあ今後も上手くやっていけるだろう。期待しているぞ」
「ああ」
そうして奴らは部屋を出て行った。