「彼女の精神はまだ不安定なのだよ、しかし、君の前にはそれを見せなかったようだがね」
「どういうことなの?」
「彼女は”生まれて”すぐに、とある謎のプログラムエラーが発生した。
どこを探しても原因不明、体には異常がなかったので放っておくことにした」
「彼女は日増しにわたしに対して”隠し事”をしてきた。しかし、それは何であるのかはある程度は予測できた」
おじいさんはポケットから謎の小さな黒い塊を取り出した。
「わたしは”それ”を抑制するための電子チップを脳に投与し始めた。しかし、3週間で彼女のAIの成長スピードにチップが追いつけなくなった。だからわたしは定期的に彼女にこさせるように仕向け続けていた」
「成長・・・か」
「ここから本題だ。そして今回の事件。その日付は投与した翌日なのだ」
僕は頭をこづかれた気分になった。あれっ?どうして・・・?
「このことを知っていて、外部に教えている内通者がいる。わたしの研究の内容を知っている奴がいるのだ」
いとも簡単におじいさんは答えた。
しかし、その答えは非常に残酷な意味合いを持つ。
・・・外部はなにかこの案件に意思・考えを持っているということだ。
「その後に不思議に思って彼女のAIを調べてみたら、なんとびっくり、チップが取り外されて、代わりに新しいチップがついていた」
「もちろん、今は取り外しているのだがね」
「そこで質問だ。君はそういった彼女と外部との接触を見たことはあるか?」
もちろん、あるわけがない。ありえないのだ。
「な、何を言い出すんですか!僕じゃないです!絶対に!」
僕は感情のあまり勢い良く立ち上がってしまった。
「ああ、もちろん。君じゃないだろう。だが、気をつけていてくれたまえ。ヘタすると君も、消える羽目になるのだよ」
「そして忠告だが、くれぐれもロボットだということを彼女には伝えんでほしい。わたしからの最期の親としてのお願いでもある」