ゾロゾロと人が出て行く。もう終わったのか。
その中に和美ちゃんの姿があった。
笑顔で下級生と話す和美ちゃん。僕も見習わなきゃなぁ。
今までは人見知りで友達ゼロ人。今度こそは人見知りを直さなきゃ!と思っていたけど・・・。
やっぱ無理っぽいな。
とりあえず「私を守って!」と言われたからには和美ちゃんを精一杯守らなければならない。
じゃあそうやって守ろうか。常に和美ちゃんを見守る?それじゃストーカーになってしまう。
そうか。連絡手段を途切れさせなければいいのか。
しかし、僕の家には電話が通ってないしなぁ・・。くそう。
僕の存在に気づいた和美ちゃんは僕を手招きした。
「簡単な事じゃない!私と一緒に暮らすのよ」ケタケタと笑いながら言う。
突拍子もないことをよく言えたもんだ。
「大丈夫。お父さんとお母さんにも言って、了解してもらったわ」
嬉しいのか恥ずかしいのか頭の中がごっちゃになる。
一番最初に考えついて、一番最初にボツにした案を言われるとは思いもしなかった。
「でも、さすがに年頃の女の子と一緒だと、僕、ぼく」
「ええい、うるさいうるさい!お主に問う」
突然お殿様のセリフで話す。なんじゃこりゃ。
「お主、ワシを守るともうしたのであろう」
「うん」
「ならばグチグチ言うものではない!ホイ来なさい」
腕をむんずと掴まれる。
でも、同じ部屋なら、あんなことやこんなこと、そんなことがぐひひひひ・・・
「顔が火照ってるわ。どうしたのよ」
今日の小型犬(大型)はおとなしく、心地よさそうに眠っている。
玄関で和美ちゃんのお父さん、お母さんが出迎えてくれた。
なるほど、あの髪はお母さんゆずりなのか。
「ようこそいらっしゃいました」
「よく来たな。君の荷物は入れてあるからな。ささ、中へ」
半ば強制的に家の中に入れられる。
部屋は想像(妄想?)のごとく和美ちゃんの部屋だった。
見事に前からここに住んでいるかのように僕の布団がひかれ、その上に荷物が置かれていた。
「どう、気に入ってくれた?」
「うん」
「もう夕ごはんは出来てるわ。下に来なさい」お母さんの声が聞こえた。
夕食は白いご飯と焼き魚、野菜炒め。今までの僕の食生活とは全く違う。
「和美、好き嫌いはなしですよ。もちろん麻耶ちゃんもね」
「でも、でも玉ねぎだけは!お許しください!」
「ダメです」
「うわあああ!」頭をぐしゃぐしゃと掻く和美ちゃん。
普段の真面目な和美ちゃんとはまた違う和美ちゃんだ。
そんな姿を見せてくれるということは僕に対してそこまで緊張していないということだ。
嬉しいような、嬉しくないような。