「そうね。多目的ロボット。どんな職業にも対応できる素晴らしき21世紀の産物。
でも当初は愛玩用として作られたのかしらね。この体型、様子からするに」
闇からの声がぐわんぐわんと反響する。
「もう闇からまどわすのはやめて!姿を見せて!」
少女は力があらんばかりに叫んだ。
だが、その叫んだ声も、もはや小さく闇へと消えていた。
『ガチャッ』
サーチライトの光の筋が大きくなった。
「・・・っ!」なんと、女性はベッドのヘッドに腰掛けていたのだ!
「人間というのは、外界からある程度の刺激が入ってこないときちんと脳のはたらきを維持できないんだって」
女性は笑顔でそう語りかけた。
「もちろん。わ、私は人間ですもの!」
胸に手を当てる。心臓、動いてるもん。
「いいえ、違うわ。あなたは理解しようとしていないだけ。あなたの子孫はちゃんと認識しているわ」
小型携帯モニターを手に持ち、映像を見せた。
同じような暗闇が映しだされていた。
時折うめき声が聞こえる。
「スタート、ぽちっとな」
女性は端にある小さな赤のボタンを押した。
ライオンがそろりそろりと入ってきた。
モニター側からはライオンは高赤外線カメラでちゃんと見ることが出来る。
ただ、うめき声の主は、まだわかっていないようだ。
するするとうめき声の主に近づき、そして、かぷりと捕食しはじめた!
「はい、ここでミュート。つづき、見る?」
「やめて!」殴ろうとしたが、できない!!
なぜか手が近づけられない!
まるで磁石が反発しあうがごとく!
「ふふ、イケない子ね」