「おーい起きなさーい」肩をゆすられる。
朝やけが遠くに見える。いつもならまだ寝ている時間だろう。
僕はまた布団にくるまる。
しびれを切らしたのか、和美ちゃんはドカドカと布団の城を蹴りだした。
こんなことで城をあけわたすわけにはいかない!
しかし城は一瞬のうちに白旗を上げた。
ご飯にはかなわないのであった。実に無念!
「おはようございます」
見るとお父さん、お母さんが朝食の用意をしている。コーヒーの香りが眠気を綺麗に立ち消えさせた。
机の上に弁当が2つちょこんと置かれていた。
僕も家族の一員かぁ・・・。なんだか、うれしい。
「麻耶ちゃんの好きな食べ物がわからなかったから、昨日の残りを入れておいたからね~」
台所でお母さんが言っていた。弁当?
「なんで弁当が必要なんですか?今日は学校がないはず、」
「お祭りの準備のお手伝い。夕方までには完成させないといけないから、早くし始めないといけないの」
横から和美ちゃんが入ってきた。
「夕方から、ですか。結構舞台とか大きそう」
「この地区の一大イベントだからね。ここの地区の人々は、これのために生きているって言っても過言ではないのよ~」
「さあ、朝食ができましたよ~」
テーブルには、新鮮なサラダ、ゆでたまご、そして小麦色にカリカリに焼けて、
その上に溶け出している黄色のバターが上手にマッチしているパン、
そして、この朝食の引き立て役のホットミルク。
食事のいちいちが可愛らしく、僕の乙女心をくすぐる。
一口、パンをかじる。
小麦の芳醇な香りが口腔内に広がる。
それをホットミルクで流し込む!
ミルクとパンは絶妙にマッチし、それは上手な二人三脚のように旨味を増幅させていく。
次にサラダだ。美しく、新鮮な緑に染まった宝の山を、次々に口に入れる。
そして最期の大トリ、ゆでたまごだ。
ゆでたまごの皿に塩、マヨネーズが乗っかっている。
そして僕は迷わずに塩を選ぶ。
なぜかって?好きだから!
塩はひとつまみがベスト。そして、ひとかじり。黄身が上手に半熟だ。
お母さん。これは手馴れているね。ゆでたまごを食べ続けてきた僕だから分かる。
「どうしたの?麻耶ちゃん」
端から見たら死んだような目をして朝食をばくばく食べていたのだと後になって和美ちゃんから聞いた。
なら途中で言ってくれればいいものを・・・