「あの少女の電話は本当に間違い電話だったのですか?」
石田は警視長に詰め寄った。
「だから言っただろう、石田くん。これは間違い電話なのだよ」
「しかし、こんなに事細かな内容の間違い電話って、しかも連絡してきた少女の声は真剣味そのものでした!」
「石田くん!もう君も昇進したのだ。いつまでも巡査ではないのだぞ」
警視長が一喝する。まるでこの案件に関わりたくないかのように。
「確かに石田くんがこの町にこだわっとるのはわからなくもない。
だがなぜ間違い電話にそこまでこだわるのだね。実際にその場所に行ってもガイシャはおろか、
少女の言っていた荒らされた形跡も出てこないのだぞ。これをどうやって事件にできる?」
「す、すみません。警視長。私としたことがつい熱くなってしまって・・・」
「君のその警察官としての意識の高さ、そして体力、どれをとっても他の警察官の一つ上を行っておる。
まさに警察官の鑑だ」
「ありがとうございます」
警視長は一つ、咳払いをした。
「ただ、自分の思ったことをそのまま突っ走ってはイカン。あの事件とて、君のその性格のせいで起こってしまったんじゃないのかね?自分でもわかっているだろう」
石田は何も言い返すことができず、乱れた服を整い直し、敬礼をしてそのまま部屋を立ち去った。
「あの性格が玉にキズなんだよなぁ・・・」
そう警視長はポツリとつぶやいた。