「へい兄弟、可愛いお姫様はまだおねんね中か?」
「相当ボロボロで疲れていたようだからな、起きるのはもうちょっとかかりそうだな」
ベッドには少女が眠っていた。
実は眠るのではなく、生命維持装置がビジー状態になっているだけなのだが、もちろん彼らは知るはずもない。
「なあ、名前は何にする?」
細い男が聞く。
「やめろ、情が移る。情が移ったらろくな目には合わん」
否定的な発言をする太っちょ。
「その言い草は過去に有ったっていう節だな?」
「余計な詮索癖はやめろ。命に関わるぞ」
いつになく真剣な表情で太っちょが言った。
沈黙が続く。
痩せた男が上を見上げ、ポツリと言った。
「なぁ、なんで俺がこの仕事に入ったか知っているか?」
「余計な詮索はしない癖でな。そんなこと思ったことはねえ」
太っちょは観察記録を引っ張りだす。まるでそんなことを聞きたくないかのごとく。
「そう、か」
痩せた男は苦笑する。
「なあコーヒー、持ってこようか?」
「ああ、頼む」
太っちょのコップはプラスチックの可愛いイラストの入ったやつだ。
なぜそれを愛用しているのか聞きたかったのだが、無理そうだ。
コーヒーの香りがプレハブ小屋の中に充満する。