1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:05:27.22 ID:haYlhDTj母「先生......娘は......娘は助かるんですか?」
医師「......」
母「先生......っ」
父「......オイッ!どうなんだ!!」ガタッ
母「あなたっ!」
父「......ごめん」スッ
医師「......」
母「......お願いします......あの子は......私達の大事な一人娘なんですっ」
医師「......それがですね。......検査の結果......」
医師「......活字性快楽伝達病、である事がわかりました」
母「......か、活字性」
父「......快楽伝達病......?」
医師「......はい」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:10:18.32 ID:haYlhDTj父「オィ!どういうことだ!訳のわからねぇ事言いやがって!」
医者「お、落ち着いて下さい......」
父「何が落ち着けだ!このヤブ野郎!」
母「あなたっ!」
父「......ご、ごめん」
母「そ、それで先生......それはどんな病気なんです......?助かるんですよね?ね?」
医者「......」
母「先生......!」
医者「活字性快楽伝達病は、文字通り活字を見ることで快楽を感じてしまう病気です。」
母「......そんな......」
父「......何てこった......」
医者「......とにかく本人にはまだ内緒にしておいてください。落ち着いたら、おって説明しましょう」
母「......はい」
父「うう......娘......」
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:10:23.28 ID:e59ju2f5面白そうじゃのう
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:13:48.96 ID:PSfmxCo9性的快楽じゃなければただの文学少女っぽい
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:14:44.83 ID:haYlhDTj娘「あー、もう暇だなぁ」
娘「だいたいただの貧血で検査なんて、パパ達は大袈裟すぎるよ......」
ナース「あら、娘ちゃん。もう目眩は平気?」
娘「うん。ねえねえ看護婦さん。パパたちに会いたいんだけど」
ナース「あー......お父さんたちはいま先生と話してるのよ。この階の端の面談室にいるけど、決して会いに行っちゃ駄目よ?」
娘「はーい」
ナース「じゃ、私はいったん戻るから。何かあったらナースコールしてね」
娘「はーい」
娘「......会いに行こっと」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:19:29.77 ID:haYlhDTjオイ! ドウナンダッ!
娘「......あ、パパの声。あの部屋だな」
娘「パパと......ママ......あれが先生か......」ジーッ
......
医師「......」
母「......お願いします......あの子は......私達の大事な一人娘なんですっ」
医師「......それがですね。......検査の結果......」
医師「......活字性快楽伝達病、である事がわかりました」
母「......か、活字性」
父「......快楽伝達病......?」
......
娘「......活字性......快楽伝達病?」
娘「......なに......それ......」
娘「......も、もしかして、ガン?私、死んじゃうのかな......」ウルッ
ナース「......あら、娘ちゃんどうしたの?こんなことろで」
娘「......あ、か、看護婦さん......」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:20:23.34 ID:go2E2v/P中国語だと思った
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:23:42.58 ID:haYlhDTjナース「どうかしたの?」
娘「......い、いえ......」
ナース「そう。じゃお部屋に行きましょう?」スッ
娘「......はい」ギュッ
ガララ
ナース「どうしたの、娘ちゃん。元気ないみたいだけど」
娘「......う、ううん......何でもないです」
ナース「......そう?あんまり暗い顔しちゃ、かわいい顔が台無しよ」
娘「......」
ガララ
医者「......こんにちは、娘ちゃん」
パパ「......娘!!」
ママ「娘ちゃん......!」
娘「......先生。......パパと、ママも......」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:28:24.51 ID:haYlhDTj医者「気分はどうかな?」
娘「......別に、普通です」
医者「......そっか。......実はね娘ちゃん」
娘「......?」
母「娘、あなた少し入院することになったのよ」
父「......」
娘「......え?入院?」
父「......心配するな......パパたちも毎日顔を出すよ」
医者「君のためなんだ......分かってくれるね?」
娘「......」
娘「......はい」
父「......娘ッ」ダキッ
母「......あとで、必要なもの持ってくるからね......」
医者「......それでは手続きの方を行いますので......」
母「......はい。......それじゃあね、娘ちゃん。またくるから」
ガララ
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:34:45.68 ID:Ms4qDng1娘「入院......かぁ......」
娘「......私ほんとに死んじゃうのかなぁ......」
スッ
ナース「......可愛そうに。元気だして、娘ちゃん」ナデナデ
娘「......か、看護婦さん......!?」
ナース「......大丈夫。私があなたの面倒をしっかり見るからね......」ナデナデ
娘「......え、あ、......ありがとうございます」
ナース「......でも、急な入院じゃ大変よね......」
娘「......は、はい......」
ナース「......そうだ、ちょっと待っててね」スッ
娘「......え?」
ガララ
娘「......行っちゃった」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:37:07.68 ID:sxZ0iSql楽しみ
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:38:10.10 ID:TN4ktCBi続き明日になってもいいから雑なオチにしないでくれよ頼むよ
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:41:23.35 ID:Ms4qDng1ガララ
ナース「お待たせ。はい。これ娘ちゃんに貸してあげる」スッ
娘「......これは......本?」
ナース「そ。私本が好きでね。ロッカーにいくつもあるの。」
ナース「本は、退屈しのぎにもってこいよ」スッ
娘「......小説、?」
ナース「とりあえずこの恋愛ものの小説と、あとはこのグルメ小説を貸すわね」
娘「......ありがとう......ございます」
ガララ
婦長「あ!ちょっとナースさん!205号室の田中さんのとこの点滴行ったのっ!?」
ナース「あー!すみません。今行きます......じゃ、娘ちゃん後で感想聞かせてね!」
ガララ
娘「......」ポツーン
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:52:11.13 ID:EOblhFX0期待
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 02:54:58.35 ID:Ms4qDng1娘 「......」 シーン
娘「......みんないっちゃった」
娘「......」
一人では広すぎる病室に、静寂がこだまする。
窓の外は、もう日が沈み始めていた。
夕暮れと、風に揺れる木々。
途端に、先程までのあの深く先の見えない不安が少女を包み込む。
娘「......私、本当に病気なんだ」
空っぽの天井にそう呟く。
今まで大きな障害なく過ごして来た少女にとって、突然の入院は華奢な心を揺さぶるには十分すぎた。
娘「......嫌だ。死にたくないよ......まだ美味しいものだって沢山食べたいし、色んなとこに遊びにいきたい。......素敵な人と恋だってしたいのに......」
そんな気持ちが溢れて、涙も溢れてきた。
病室の明かりがもやもやとボヤける。
次から次へと襲いかかってくる不安に、少女は翻弄されていた。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:11:14.83 ID:Ms4qDng1娘「......」グスッ
娘「......駄目だ駄目だ。すぐに思い込むのは私の悪い癖だって、昔からママにも言われてるじゃない!」
顔を左右に振り、気分を奮い立たせる。
そうして無理にでも虚勢を張った。
強がっていなければ、すぐにまた飲み込まれてしまう。
「......そうだ、さっきの看護婦さんから借りた本......ちょっと読んでみようかな」
手にしたのは日本各地のグルメを巡る、しがない作家を主人公とした小説だった。
内容は、場所毎に描かれる短編集となっていて、ストーリーや設定よりも食事部分の描写に力をいれた物だった。
娘「......なになに......私は売れない作家、西宮竜平。私は何より食べることが好きで......」
普段なら気に求めないような小説だったが、不思議と引き込まれていった。
飾り気の無い、親しみやすい文体が、まるで少女を励ましてくれてるかのようであった。
娘「......へぇ、そういうのもあるのね......」
なかには一風変わった料理などもあり、第三話を読み終える頃にはすっかりその作風にはまっていた。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:26:35.36 ID:Ms4qDng1そんな少女の体に異変が起きたのは第四話、「放浪の旅、君と出会いし猪カレー」の料理描写パートに入ったとにだった。
娘「へー、今度はカレーか。美味しそう」
......
......その時だ、長旅でもう意識もハッキリとしていない私の目の前に現れた物.....。猪カレーだった。よく煮込まれ黒みのかかったルーのなかに、一際黒い"ヤツ"が居るではないか。しかし、まずは距離を置く。静かにスプーンを握り、隙の無い構えをとる。やはり最初はルーとライスだ。白く粒のたったホカホカのご飯に、たっぷりのスパイスが薫るルーを潜らせる。まるでドレスアップした花嫁のようなその姿に、私の心は......
......
娘「......?カレーの香り?今日の病院食もカレーなのかな?」
何処からともなく流れてくる、カレーの香ばしい香りが少女の鼻孔を擽る。
時間はもう5時半を過ぎ、ちょうどお腹が減ってきた少女にとっては堪らなかった。
娘「やった。本を読んでる時に出てくる食べ物って、無性に食べたくなるんだよね」
そう言って、本を閉じる。ワクワクしながら待てど、なかなか夕食は運ばれて来なかった。
それどころか、芳醇なその香りは少しずつ薄れていった。
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:33:42.80 ID:Ms4qDng1しばらくして、看護師が料理を運んできた。
今か今かと待っていた少女は胸を踊らせる。
ガララ
ナース「はーい、娘ちゃん。ご飯よー」
娘「やっと来た!」
しかし、その時運ばれてきたのはご飯と味噌汁、それときんぴらに豆腐ハンバーグだった。
娘「あ、あれ......?」
ナース「ん?どうかした??」
食事を配膳しながら、看護師が問いかけてくる。
娘「あのー。今日ってカレーじゃないんですか......?」
ナース「え?カレーって、......病院食が?」
娘「はい。さっきいい香りがしたから......」
ナース「んー、そうなの?今日はこのメニューと、あとは流動食しか無かったとおもうけど......」
娘「で、でも......。さっきあんなにハッキリ......」
ナース「うーん......?」
ナース「......あ。分かった」
娘「?」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:36:50.98 ID:cjOlOn24あれ、活字を読むと気持ちよくなっちゃうビクンビクンな女の子の話じゃないのか
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:37:45.91 ID:Ms4qDng1ナース「ほら、娘ちゃん。窓、窓」
そう言って看護師は窓際に向かって行く。
ナース「少し空いていたから、他のお家の晩御飯の香りが入ってきたのよ、きっと」
娘「......そ、そうかなぁ......」
ナース「きっとそうよ。......ほら、覚めないうちに食べましょう。あーんしてあげよっか?」
娘「......だ、大丈夫ですっ」
ナース「うふふ、じゃあしっかり食べて。少ししたら食器を取りに来るから」
娘「......はい」
そう言って、看護師は出ていった。
腑に落ちないまま豆腐ハンバーグを口に運ぶ。
......薄味だった。
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 03:39:23.16 ID:Ms4qDng1 <⌒/ヽ-、___
/<_/____/
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 04:30:39.68 ID:AqxE579gこれからだろ!!!!
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 07:02:02.86 ID:gqaiUpop娘ちゃんとナースさんの濃厚なレズプレイはよ
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 07:10:11.93 ID:zkbIRT4Dまだ全然快楽伝達してないんですけど!
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 07:12:00.37 ID:PSzoi+J5これは期待
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 07:14:22.72 ID:LWLVXPumいやいいよ、続けてくれたまへ
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 08:19:30.43 ID:IX7+j4Ijほほう
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 08:53:18.42 ID:bdSFib/l期待
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 10:16:57.19 ID:Sx3pFh9n早くして欲しいんですけどっ!
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 10:21:27.97 ID:whDJO7v2おい、期待を裏切るなよ?
マダー?
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 13:00:43.68 ID:/OLUHCcR期待
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 13:12:05.29 ID:sxZ0iSqlはよ
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/11(水) 16:20:41.63 ID:49GZXAkG寒い
☆ チン
☆ チン 〃 ∧_∧ マダー?
ヽ___\(\・∀・)
\_/ ⊂ ⊂_)
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:03:48.33 ID:za4Yv2GI _____________
|\(^O^)/| < おはよー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:18:42.93 ID:za4Yv2GIそのままモグモグと食事を続ける。
病院食は塩っけが無くていけない。
あっという間に食べ終わってしまった。
ふう、と一息食休みを入れる。
娘「......ご馳走さまでした」ボソッ
お粗末様、静寂がそう返してきた。
ふいに読みかけの本を手に取る。
娘「はぁ。カレーが食べたかったなぁ......って、どこまで読んだんだっけ......あ、ここだ」
......
......まるでドレスアップした花嫁のようなその姿に、私の心は嬉々と高鳴った。
まずは一口。......ああ、何十もの香辛料が口内で踊り始める。さながらインド映画のようにスパイス、ライスとが手を取り合う。そこに待ってましたとばかりに参上する猪肉。三人揃えば曲調は三拍子、ワルツへと変わっていった。そう、まさに味のワルツが私の舌を......
......
その時。まさにその時、少女は確信した。
手が頁を巡る度、そして目が活字を追う度に、本の世界に引き事を。
スプーンとお皿のならすカチャカチャとした音、スパイスや福神漬けの香り。口に広がってくるピリリと辛いカラーと、いままで食べたことのないような、少しクセのある肉の味。
先程の味気のない食事など、彼方に忘れてしまうような、透明で純粋な食欲に、少女は芯まで満たされていた。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:23:00.03 ID:3kaxFSjY小説書いたら売れそう
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:25:05.34 ID:GvQH2INUオチはあるんだろうな?
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:25:06.75 ID:UIpBOd2s続きキター
待ってた
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:29:46.65 ID:za4Yv2GI娘「......な、なにこれ......っ......音が......香りが......味がっ......」ビクッ
いつからか、少女は食事を惰性的に取るようになっていた。
一体いつからだろうか。中学生に上がったとき?いや、小学生の中高学年の頃にはもうそうだったかもしれない。
とにかく、機械的に義務的に、ただ動作として食事をしていた。
特に好き嫌いが激しいわけでもなく、ただ、食事をすると言うことにそこまで関心が無かった。
しかし、今の彼女は耳で、鼻で、舌で、脳で、"食事"を味わっていた。
娘「......す、すごい......」ゼェゼェ
本を閉じても、まだ幾つもの器官が余韻を味わっていた。
娘「......これが、私の病気......なの?」
明らかに普通の状態ではないことは少女が一番承知していた。
そのとき、病室の扉が静かに開いた。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:36:46.27 ID:za4Yv2GIナース「娘ちゃん、食器を片付けに来たわよ......って、どうしたの?すごい汗じゃない......」
ナースが慌てて駆け寄り、少女の額の汗をぬぐう。
娘「......ううん、大丈夫。......大丈夫です」
まだ荒い息を抑え、切れ切れとそう返す。
ナース「......そう?でも、もし何かあったらちゃんといってね」
娘「......はい。心配かけてすみません......」
ナース「いいえ。......じゃあ、食器持っていくわね」
娘「......はい。ありがとうございます」
ナース「それじゃあね。次くるときは夜中、......まあ、娘ちゃんもう寝ちゃってると思うけど。夜更かししちゃダメよ」
娘「......はい」
そう言い残し、看護師が出ていく。
少女はグルメ小説の表紙をそっと撫でた。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:49:27.77 ID:+rAJnvMH面白い
続きはよ
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 02:49:41.55 ID:za4Yv2GI自分はなんて大変な病気になってしまったのだろう。
そんな思いが少女の頭をよぎる。
本を読むだけで、......正確には活字を読むだけで、脳がそれを自らが受けている快楽と錯覚してしまう。
つまり、快楽をシンクロさせてしまうのだ。
活字劇の中の人物と感覚を共有する。
普通に考えれば、夢物語の中の話だ。
......ここで、少女の中に恐ろしい疑問が浮かんだ。
考えるだけでも恐ろしかったが、一度それを考えたら、行動せざるを得なかった。
共有するのは、本当に快楽だけなのか?
ベットの側にあるナイトテーブルの上のメモ帳とペンを手に取り、試しにいくつかの例文を書いてみる。
"私の目の前にはパンがある。"
活字に目を走らせる。......しばらく見つめるが、もやもやとした感覚以外、何も感じはしなかった。
娘「......何がいけないのかな? 」
少し文を変えてみる。
"私の目の前には、よくトーストしたパンがある"
しばらく見つめていると、今度は微かにパンの香りが漂ってきた。
娘「......状況の説明だけじゃだめなんだ」
実験を続ける。
SSには珍しく情景描写が多いな
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 03:01:41.21 ID:za4Yv2GI"私の目の前には、よくトーストしたパンがある。手にとって、赤いイチゴジャムをたっぷりつけて、頬張る。甘くて美味しい。"
今度はよりはっきりと香り、そして味を感じた。
娘「......具体的にしろ抽象的にしろ、何か描写を入れるのが大事なんだ」
さらに実験を続ける。
"今、私は海辺にいる。近くには古びた小屋にボート。足元には砂浜。雨上がりで少し湿ってる。"
メモ帳を見つめる。何も、起こらない。
娘「何も感じない。......景色の描写だけじゃだめなのかな」
少し付け足す。
" 今、私は海辺にいる。近くには古びた小屋にボート。足元には砂浜。雨上がりで少し湿ってる。押し寄せる波の音。心地いい "
しばらくすると、ふんわりとした意識に包まれていった。
青い海。近くには小屋に、足元には砂浜。
さっきメモ帳に書いた事が、そのまま景色となっている。しかし、どこか継ぎ接ぎだった。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 03:03:21.00 ID:4Ci5nm+x期待
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 03:14:01.46 ID:za4Yv2GI海はあるのに空がなかった。
砂浜はあっても、石一つ落ちていない。
描写にない部分は黒く塗られていた。
そんな奇妙な空間だというのに、何故か気分はリラックスしていた。
娘「......なんか、落ち着くかも。これも一種の快楽かな?」
ふと現実に戻る。
薄暗い病室で紙切れを見つめるひとりの少女。
娘「......だんだん分かってきたけど」
ごくり、と生唾を飲んで、ペンを走らせる。
"私は背後から刺された。鋭く冷たい痛みが体を駆け巡り、ドクドクと赤黒い血がナイフをつたい地面に滴り落ちる。月明かりもない暗い路地裏には助けてくれる人影はない"
娘「......描写入れて......背景も入れて......っと」
娘「......まさか、ね」
次の瞬間、背後から鋭い痛みが少女を襲う。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 03:23:41.67 ID:za4Yv2GI......ことは無かった。
いつまで眺めていてもそこは病室で、心ない殺意に少女がさらされる事は無かった。
娘「......は、はは」
娘「......よ、よかったぁ。たまたまニュースのテロップみてショック死なんてことにならなくて......」
活字性"快楽"伝達病は、あくまで快楽に関するものらしかった。
そうなれば、食事での食欲や心落ち着く風景によるリラックスなどの快楽は感じても、痛くて苦しい、通常ならとても快楽とは程遠いような事は感じないのであった。
娘「......なんてご都合主義な病気なの」
娘「最初は怖かったけど、うまく使えば便利、というか素晴らしいわ!」
不安から解放された少女は再びグルメ旅行の旅に出発した。
もちろん、第一話から遡り、夜明けまで様々な料理を堪能したのだった。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 03:25:07.44 ID:za4Yv2GI_____________
| (^o^)ノ | < おやすみー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 07:02:46.44 ID:YVBDGn0f快楽を知るにはまだ早いお年頃なのね
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 07:28:35.04 ID:+GDa1gD7文章上手すぎワロッポ
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 07:43:52.71 ID:2d4jEFhYネップって人口の割に文豪多い?
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 07:55:18.62 ID:RVRE2APGこれですりんのss書いてたやつだろ
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 08:37:43.30 ID:s9Rhq+L4官能小説拾う展開はよ
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 10:11:44.89 ID:443ba1Q3凄えな…
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 15:00:48.16 ID:TFDJTvnHいい作品書ける作家さんがいると住人が増えるからなぁ
それに伴って変な奴も来ちゃうのが難点だけど
とりあえずsageで支援
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 15:15:27.58 ID:hn5ReN25そもそもNEXTの存在を知られないだろ
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 15:22:58.58 ID:pnMFn1iMおーぷんの陰に隠れてるからな
一応人がいるおーぷんでさえ知ってる人少ないのにそれより過疎のnextなんて誰もしらんかな
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 15:37:06.53 ID:v/5u2ns/おーぷんは前から存在は知ってたがnextは半年前の騒ぎまで聞いたことすらなかった
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 19:02:12.82 ID:w02pPKGXNEXTには選ばれし者しか辿り着けないからな
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/12(木) 23:17:41.10 ID:IMt9sEp0お前朧月だろ
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 01:55:09.88 ID:bnhUTu2U _____________
|\(^O^)/| < おはよー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 02:10:08.69 ID:bnhUTu2U次の日。
ぼんやりとした微睡みを、看護師の声がかき消す。
ナース「ほーら、いつまで寝てるの?娘ちゃん」
そう言うや否や、少女を包んでいた毛布を無情にも剥ぎ取る。
ナース「はい、検温しますよ。腋に挟んでね」
娘「......はぁい」スッ
しぶしぶ頷いて体温計を挟みこむ。
先っぽの金属部分が、脇の下を一瞬ヒヤリとさせる。
ナース「もう、どうしたの?あんまり眠れなかったのかしら」
娘「......は、はい」
ナース「......娘ちゃん」スッ
看護師は優しく少女の肩を撫で、
ナース「......大丈夫よ。すぐよくなる。......きっとよ」
体温計が音をたてるまで、そう優しく励ました。
昨日、夜遅くまで甘美な美食の旅に出ていたから寝不足であるのだとは、言えるはずがなかった。
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 02:25:09.59 ID:bnhUTu2Uナース「......ん?」
ふいに、看護師はテーブルの上のメモに気付いた。
ナース「なあに?これ......私は背後から刺され......」
娘「わ、わわわ、な、何でもないんです!」バッ
ナース「......娘ちゃん、不安なのは分かるわ。でも、気を強く持たなきゃだめよ?」
娘「は、はい......大丈夫です!」
ナース「......」
ナース「......そ!なら良かった。それじゃあ、私次の患者さんのとこに行くわね」
娘「はい。......あ、あのっ......」
ナース「ん?」
娘「ありがとうございます。......その、色々親切にしていただいて」
ナース「ああ、......ふふ。どういたしまして。......それじゃあまたね」
娘「はい!」
看護師が出ていったあと、慌ててメモを丸めて捨てる。
時計を見ると6時ちょっとすぎ。朝食の八時までまだ時間がある。
娘「もう少し、寝ちゃおっと......」
少女はまた、微睡みの中へと沈んでいった。
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 02:42:46.05 ID:bnhUTu2U次に目を開けると、もう朝食が配られていた。
まだ寝足りないという目をこすりながら、箸を手に取る。
今日の朝食は減塩された焼き鮭に、卵焼き、それに漬け物と白米、味噌汁。
なかなかなラインナップだ。
娘「頂きます」
まずは味噌汁を啜る。
いまいち味気ない。
次に卵焼き。
いまいち味気ない。
鮭を小さくぼくし、ご飯にのせて口に運ぶ。
......いまいち味気ない。
娘「......うーん」モグモグ
どうも、昨日のあの"食事"は刺激的で、魅力的すぎたらしい。
どのメニューも病院食用に減塩されているとはいえ、あまりに味気なくとても食べ続けられるものではなかった。
娘「......もういいや。ご馳走さま」
そう言って箸を置く。
結局、朝食はほとんど食べないまま回収されていった。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 02:49:23.07 ID:bnhUTu2Uナース「......食欲なかった?」
回収時、看護師はまた心配そうな顔をした。
娘「うん......ちょっと......」
ナース「......もう、二度寝なんてするから。ちゃんと食べないと元気になれないわよ?」
娘「......はい。ごめんなさい」
ナース「......もう。......あ、そういえば、昨日貸した本はもう読んだ?」
娘「はい。えっと......グルメ小説の方を読みました」
ナース「あら、意外だわ。娘ちゃんくらいの歳なら、迷わず恋愛小説の方を読むと思ってたのに」
娘「あはは......私、恋愛小説って読んだこと無くて......」
少女は少し照れ臭そうにそう返す。
ナース「そうなんだ。......私が娘ちゃんくらいの時はそう言うのすっごく好きだったのに」
そう言って、看護師はナイトテーブルの上に置いてあった、自分が昨日少女に貸した恋愛小説を手に取る。
きたか
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 02:56:44.37 ID:bnhUTu2Uナース「この本はとっても好きな本なの。是非娘ちゃんにも読んでほしいな」
娘「......どんな話なんですか?」
ナース「この本はね、とある村で、傘屋さんをしてる女の子のお話なの」
娘「傘屋さん?」
ナース「そう。それで、ある大雨の日にその傘屋に男の子が来てね、恋に落ちるの」
娘「......なんか素敵」
ナース「でしょ?だからね、是非読んでみて」
娘「はい。きっと読みます」
ナース「うん。じゃあまたね」
看護師が出ていった後、少女は先程の本を手に取った。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 03:13:23.34 ID:bnhUTu2U娘「タイトルは......雨音の下で......か」
娘「看護婦さんがあれだけ言ってたんだし、ちょっとだけ読んでみようかな」
......
......ここ数日、ちっとも雨が降らない。地面はカピカピに干上がり、私は商売あがったり。傘屋なんて今時どうかしてるなんて事は、自分でも分かってる。
それでも、おばーちゃんのおばーちゃんの、そのまたおばーちゃんの頃からずっと続いてるこのお店を畳むことなんて、私にはできなかったわ。傘は、大昔からあって殆ど形を変えずに残っている数少ない道具の一つで、
私はそんな素敵な知恵の結晶達と囲まれて日々を過ごしているの。それは結構幸せな事だって、私は思うようにしてる。
だいいち、近所にすんでるあとソバカスだらけの......
......
娘「祖母の祖母の祖母の......って、凄い老舗なんだなぁ......」
娘「結構面白いかも」
恋愛小説、と聞いてイメージしていたものよりはるかにお転婆な文体に困惑しつつも、じわじわとその世界観に魅せられていった。
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 03:28:09.15 ID:bnhUTu2Uサクサクと読み進めていくと、ついに後の恋人であろう男が登場する。
......
その日は、久々の雨で、私はウキウキしてた。でも、ちょっと降りすぎたわ。まるで今までの分も全部吐き出すみたいに。だからあんな奴と出会っちゃったのよ。
「やあ、タオルをありがとう。助かったよ。しかし、埃っぽいお店だね」
ずぶ濡れた猫みたいに震えてたからしょうがなく入れてあげてタオルまで貸したのに、失礼なやつったらありゃしなかったわ。
ちょっと鼻と背が高くて、それなりの見た目ではあったけど。最初はこんなやつもう絶対に関わりたくない。そう思ったわ。
......
娘「......ふふ、不器用だなぁ」クスッ
少女は、本の世界の女の子の可愛らしさに微笑んだ。
娘「......さあて、女の子とずぶ濡れ君はどうなるのかな......」
ワクワクしながら次へ次へとページを捲っていく。
途中、様々な場面や景色が少女の眼前に現れ、よりいっそう彼女を没頭させた。
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 03:32:15.48 ID:bnhUTu2U_____________
| (^o^)ノ | < おやすみー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 04:02:44.59 ID:d+9xT9f7このペースだと1ヶ月くらいかかりそうだな
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 07:11:19.05 ID:USRYg4T7傘屋の女の子に男の子の傘が入ってしまう内容なのかな
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 07:15:54.93 ID:bS+9Issoおらワクワクしてきたぞ!
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 08:20:32.20 ID:/p6oNsIDおやすみ君が憎い
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/13(金) 19:45:32.06 ID:N0VSMVqM面白い
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 00:15:06.79 ID:NXvlKrXq _____________
| (-o-) | < z Z 乙 ......
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 00:27:48.73 ID:7Tex0RTY驚異の睡眠時間が創作のエネルギーなのか?
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 00:56:03.30 ID:CR+o6+LI夢精したら書き込めるシステムか
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 17:59:36.45 ID:8aVXOh5S面白い
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 18:03:24.96 ID:KSsTIE1n _____________
|\(^O^)/| < おはよー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/14(土) 19:34:45.41 ID:UbQ2dRHEおはよう
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/15(日) 08:16:42.18 ID:kpNtG4AHまた眠ったのか
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/16(月) 08:06:37.50 ID:PQpao7kiねむいよおおお
いつまで寝てんだ?
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/17(火) 07:17:37.39 ID:7L9osaJ6鋭意制作中と思いたい
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/19(木) 18:34:40.09 ID:GQ9+YBhZそろそろオキロ
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/19(木) 19:42:48.57 ID:ECbQX2fXただでさえ少ないnepに何人目かの死者
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/19(木) 20:00:36.26 ID:EqUR8SzX永眠したのん?
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/19(木) 20:14:48.75 ID:CZ/re82l誰か続き
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/19(木) 22:24:35.66 ID:B5VsMposわっふるわっふる
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/21(土) 11:05:51.50 ID:IhnohH0Xこれはエロまで長そう
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/21(土) 11:17:14.24 ID:HMN79k/aほんといつまで寝てんだよ…
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/21(土) 11:25:11.48 ID:59UDL4kg関係ないけどこの病体験してみたい…
>>96
netvipに記憶したことが頭ん中で反芻し続けるってやついたな
あんまりいい気持ちじゃないと思うぞ
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/21(土) 14:21:00.38 ID:OqGShxip昔のやらかしをふとしたキッカケで思い出して
うわああああああってなるのは1日1回くらいあるな
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/23(月) 01:17:26.66 ID:zi/r76ez _____________
| (^ω^;) | < オ、オハヨー......。
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
いあいあ
それから、傘屋の少女とずぶ濡れの少年は、ピクニックをしたり、星を見に行ったり、はたまた雷雨の日に古い大木の中で肩を寄せ合い嵐が過ぎるのをまったり、数々の冒険を繰り広げ、物語は佳境へと歩を進めた。
............
「......それじゃあ、また来るよ。今日は......この黒猫の傘を借りていこうかな」
そう言って、彼は一本傘を取る。
「ちょっと、それだって売り物なんだから。ちゃんと返してよね」
私は念を押す。その日は、ちょうどずぶ濡れだった彼と出会ってから二月の日で、出会った時と同じ、大雨だった。
彼は、分かってるよ、と一言残して、いつもみたいに前を向いたまま手をヒラヒラ降って去っていく。
本当はもう少し話したかったけど、引き留めなかった。
また明日、いや明後日でも、晴れた日にひょっこり顔を出すだろう。
そう思ったから、引き留めなかった。
次の日も、その次の日も、......一週間たっても、彼は来なかった。
............
娘「......どうしたのかな、ずぶ濡れ君......」
ふと我に帰り、物思いに更ける少女。
本はもう残り数十頁しかなかった。
はやく続きが知りたい。だが、同時に結末を知るのが怖かった。
娘「......続きはまた今度にしよう」
そう言って本を置く。辺りを見れば、もうすっかり夕方であった。
キターーーー!!
きたか
待ってた!
ナース「......娘ちゃん、入るよ?」
娘「......」
ナース「......娘ちゃん?」
娘「......あ、看護婦さん」
一人黄昏る少女の病室に、看護師が入ってきた。
心配そうな顔で少女の表情を伺っている。
ナース「......大丈夫そうね。良かった」
娘「......はい?」
ナース「ううん。なんでもないの。......あ、娘ちゃん。はい、お夕食よ」
娘「ありがとうございます」
そう言ってお盆を受けとる。
ナース「あー......その。......その本は面白かった?娘ちゃん」
娘「え?......はい。でもまだ途中までで......」
ナース「そうなの」
娘「すごく面白いし、話の続きは気になるんですけど、」
娘「ずぶ濡れ君......男の子がどうなったのか、心配で先が読めないんです」
ナース「......そう」
nepで今一番期待されてるスレ
娘「......で、でも本は本当に面白くて......」
娘「......私、恋なんてしたことなかったのにすごくドキドキしたし......あの嵐のお話とか」
ナース「......ああ、あのおっきな樹の中で雨宿りするお話?」
娘「はい。......それに花畑のピクニックとか、あと丘の上に流れ星を見に行く話とか」
ナース「うんうん。わかる。素敵よね」
娘「本当に素敵で、夢中になっちゃいました。......だからこそ、続きが知りたいのに怖くて」
いとおしそうに本の表紙を見つめる少女。
ナース「そっか。......よし」
娘「え?」
そう言うと、看護師は突然娘から本を取り上げた。
ナース「この本、一旦私がまた預かるわ」
娘「そんな......」
ナース「大丈夫。明日他の本を持ってきてあげるから。
娘「......でも」
ナース「この本の続きは、娘ちゃんの心の準備が出来た時にすればいいわ」
娘「......」
ナース「ね?」
娘「......うん。そうします」
ナース「いい子いい子」
そう言って看護師は少女の頭を撫でる。
少女は少し照れ臭そうに笑った。
その日の夜。
患者達も寝静まり、静寂と暗闇に包まれる病棟の中、煌々と明るいナースステーション。
眠気覚ましのコーヒーを飲みつつ、医者は看護師にこう切り出した。
医者「......君の担当の、208号室の彼女はどうかな?」
ナース「......娘ちゃん、ですか」
医者「彼女はかなり珍しい症例の子だから、注意して経過を見て欲しい」
ナース「はい」
医者「といっても、まだ入院して二日だから、何がどうとかはないかな?」
ナース「はい、特には。食事も今朝とお昼は全然食べませんでしたが、夕食はしっかり食べていました」
医者「そっか。まああのくらいの女の子だからね。体重が増えるのを気にして食事を抜いたのかもね」
そう言って医師はコーヒーを一口含んだ。
ナース「......そうかもしれません。......ただ」
不意に看護師の声色が暗くなる。
医者「ただ?」
ナース「今日のお昼の娘ちゃん、なんだか様子が変だったんです」
医者「......変、とは?」
医師の声色も変わり始める。
医者「詳しく聞かせてもらえるかな」
ナース「はい。......私、彼女に本を貸したんです。グルメ小説と、あとは私の好きだった恋愛小説」
医者「......なるほど。それで?」
ナース「彼女、すごく気に入ってくれた見たいで。でも少し夢中になりすぎているというか」
医者「......まあ、入院生活は退屈だろうからね」
ナース「......そうですけど、ちょっといきすぎているです。今日のお昼の時も、私が呼び掛けても呼び掛けても眼中にないみたいに」
医者「......彼女、すごい集中力を持っているんだね」
ナース「でも、本を読んでいるはずなのに、目は本のずっと奥を透かして見ているような感じなんです」
医者「......ふーむ」
ナース「先生、彼女は大丈夫ですよね?」
医者「......大丈夫。大丈夫だよ。心配いらない」
医者「確かに彼女は珍しい症例だけども、あの病気は文字を認識すると、脳の快感を司る部分が反応を起こす、というものだ。ある種の共感覚みたいなものだよ」
医者「とにかく、心配しすぎて彼女を刺激する方が良くない。そういう面でも、しっかり経過を見守ってくれるかい?」
ナース「......はい。分かりました」
医者「よし。......もう一回コーヒーを入れようかな......あ、君も一杯どうだ?」
ナース「......ありがとうございます」
ゆっくりと、運ばれてきたコーヒーを口にする看護師。
湯気のたつ熱々とした苦味が、彼女の不安を少し紛らわせた。
_____________
| (^o^)ノ | < おやすみー
|\⌒⌒⌒ \
\|⌒⌒⌒⌒|
既に兆候があるのか
冬眠しないようにしてくれ
次は早く起きてくれると願う
待ってるから未完のままにしないでおくれ
快楽以外も感じるようになったのかな
官能
休日だけの更新でもええんやで
AGE☆
あげ
待ってる
あげ
あ
上
スレ立ってから1ヶ月目か
あ
期待
期待あげ
あげ
このスレッドは過去ログです。