自分はなんて大変な病気になってしまったのだろう。
そんな思いが少女の頭をよぎる。
本を読むだけで、......正確には活字を読むだけで、脳がそれを自らが受けている快楽と錯覚してしまう。
つまり、快楽をシンクロさせてしまうのだ。
活字劇の中の人物と感覚を共有する。
普通に考えれば、夢物語の中の話だ。
......ここで、少女の中に恐ろしい疑問が浮かんだ。
考えるだけでも恐ろしかったが、一度それを考えたら、行動せざるを得なかった。
共有するのは、本当に快楽だけなのか?
ベットの側にあるナイトテーブルの上のメモ帳とペンを手に取り、試しにいくつかの例文を書いてみる。
"私の目の前にはパンがある。"
活字に目を走らせる。......しばらく見つめるが、もやもやとした感覚以外、何も感じはしなかった。
娘「......何がいけないのかな? 」
少し文を変えてみる。
"私の目の前には、よくトーストしたパンがある"
しばらく見つめていると、今度は微かにパンの香りが漂ってきた。
娘「......状況の説明だけじゃだめなんだ」
実験を続ける。