その日の夜。
患者達も寝静まり、静寂と暗闇に包まれる病棟の中、煌々と明るいナースステーション。
眠気覚ましのコーヒーを飲みつつ、医者は看護師にこう切り出した。
医者「......君の担当の、208号室の彼女はどうかな?」
ナース「......娘ちゃん、ですか」
医者「彼女はかなり珍しい症例の子だから、注意して経過を見て欲しい」
ナース「はい」
医者「といっても、まだ入院して二日だから、何がどうとかはないかな?」
ナース「はい、特には。食事も今朝とお昼は全然食べませんでしたが、夕食はしっかり食べていました」
医者「そっか。まああのくらいの女の子だからね。体重が増えるのを気にして食事を抜いたのかもね」
そう言って医師はコーヒーを一口含んだ。
ナース「......そうかもしれません。......ただ」
不意に看護師の声色が暗くなる。
医者「ただ?」
ナース「今日のお昼の娘ちゃん、なんだか様子が変だったんです」
医者「......変、とは?」
医師の声色も変わり始める。