娘「タイトルは......雨音の下で......か」
娘「看護婦さんがあれだけ言ってたんだし、ちょっとだけ読んでみようかな」
......
......ここ数日、ちっとも雨が降らない。地面はカピカピに干上がり、私は商売あがったり。傘屋なんて今時どうかしてるなんて事は、自分でも分かってる。
それでも、おばーちゃんのおばーちゃんの、そのまたおばーちゃんの頃からずっと続いてるこのお店を畳むことなんて、私にはできなかったわ。傘は、大昔からあって殆ど形を変えずに残っている数少ない道具の一つで、
私はそんな素敵な知恵の結晶達と囲まれて日々を過ごしているの。それは結構幸せな事だって、私は思うようにしてる。
だいいち、近所にすんでるあとソバカスだらけの......
......
娘「祖母の祖母の祖母の......って、凄い老舗なんだなぁ......」
娘「結構面白いかも」
恋愛小説、と聞いてイメージしていたものよりはるかにお転婆な文体に困惑しつつも、じわじわとその世界観に魅せられていった。