娘「......で、でも本は本当に面白くて......」
娘「......私、恋なんてしたことなかったのにすごくドキドキしたし......あの嵐のお話とか」
ナース「......ああ、あのおっきな樹の中で雨宿りするお話?」
娘「はい。......それに花畑のピクニックとか、あと丘の上に流れ星を見に行く話とか」
ナース「うんうん。わかる。素敵よね」
娘「本当に素敵で、夢中になっちゃいました。......だからこそ、続きが知りたいのに怖くて」
いとおしそうに本の表紙を見つめる少女。
ナース「そっか。......よし」
娘「え?」
そう言うと、看護師は突然娘から本を取り上げた。
ナース「この本、一旦私がまた預かるわ」
娘「そんな......」
ナース「大丈夫。明日他の本を持ってきてあげるから。
娘「......でも」
ナース「この本の続きは、娘ちゃんの心の準備が出来た時にすればいいわ」
娘「......」
ナース「ね?」
娘「......うん。そうします」
ナース「いい子いい子」
そう言って看護師は少女の頭を撫でる。
少女は少し照れ臭そうに笑った。