そんな少女の体に異変が起きたのは第四話、「放浪の旅、君と出会いし猪カレー」の料理描写パートに入ったとにだった。
娘「へー、今度はカレーか。美味しそう」
......
......その時だ、長旅でもう意識もハッキリとしていない私の目の前に現れた物.....。猪カレーだった。よく煮込まれ黒みのかかったルーのなかに、一際黒い"ヤツ"が居るではないか。しかし、まずは距離を置く。静かにスプーンを握り、隙の無い構えをとる。やはり最初はルーとライスだ。白く粒のたったホカホカのご飯に、たっぷりのスパイスが薫るルーを潜らせる。まるでドレスアップした花嫁のようなその姿に、私の心は......
......
娘「......?カレーの香り?今日の病院食もカレーなのかな?」
何処からともなく流れてくる、カレーの香ばしい香りが少女の鼻孔を擽る。
時間はもう5時半を過ぎ、ちょうどお腹が減ってきた少女にとっては堪らなかった。
娘「やった。本を読んでる時に出てくる食べ物って、無性に食べたくなるんだよね」
そう言って、本を閉じる。ワクワクしながら待てど、なかなか夕食は運ばれて来なかった。
それどころか、芳醇なその香りは少しずつ薄れていった。