海はあるのに空がなかった。
砂浜はあっても、石一つ落ちていない。
描写にない部分は黒く塗られていた。
そんな奇妙な空間だというのに、何故か気分はリラックスしていた。
娘「......なんか、落ち着くかも。これも一種の快楽かな?」
ふと現実に戻る。
薄暗い病室で紙切れを見つめるひとりの少女。
娘「......だんだん分かってきたけど」
ごくり、と生唾を飲んで、ペンを走らせる。
"私は背後から刺された。鋭く冷たい痛みが体を駆け巡り、ドクドクと赤黒い血がナイフをつたい地面に滴り落ちる。月明かりもない暗い路地裏には助けてくれる人影はない"
娘「......描写入れて......背景も入れて......っと」
娘「......まさか、ね」
次の瞬間、背後から鋭い痛みが少女を襲う。