娘「......」グスッ
娘「......駄目だ駄目だ。すぐに思い込むのは私の悪い癖だって、昔からママにも言われてるじゃない!」
顔を左右に振り、気分を奮い立たせる。
そうして無理にでも虚勢を張った。
強がっていなければ、すぐにまた飲み込まれてしまう。
「......そうだ、さっきの看護婦さんから借りた本......ちょっと読んでみようかな」
手にしたのは日本各地のグルメを巡る、しがない作家を主人公とした小説だった。
内容は、場所毎に描かれる短編集となっていて、ストーリーや設定よりも食事部分の描写に力をいれた物だった。
娘「......なになに......私は売れない作家、西宮竜平。私は何より食べることが好きで......」
普段なら気に求めないような小説だったが、不思議と引き込まれていった。
飾り気の無い、親しみやすい文体が、まるで少女を励ましてくれてるかのようであった。
娘「......へぇ、そういうのもあるのね......」
なかには一風変わった料理などもあり、第三話を読み終える頃にはすっかりその作風にはまっていた。