女「どうか我が国をお助けください。…男様?」
男「ううっ、猫ちゃん…死んじゃやだぁ」グス
男「車にはねられて、猫ちゃんが…猫ちゃん…ううっ」
女「…っ。そちらの猫を助けることは出来ます。ですが男様には我が国へ来ていただきませんと、それも叶いません」
男「行ぐよ、行ぐがら、猫ちゃん助げてぐれぇ」
女「わかりました。それでは手をおとり下さい」
男「ああ。うおっ、まぶしっ」
―――――
―――
―
女「どうか我が国をお助けください。…男様?」
男「ううっ、猫ちゃん…死んじゃやだぁ」グス
男「車にはねられて、猫ちゃんが…猫ちゃん…ううっ」
女「…っ。そちらの猫を助けることは出来ます。ですが男様には我が国へ来ていただきませんと、それも叶いません」
男「行ぐよ、行ぐがら、猫ちゃん助げてぐれぇ」
女「わかりました。それでは手をおとり下さい」
男「ああ。うおっ、まぶしっ」
―――――
―――
―
?「ああ、来てくださったか」
男「え゛?あ゛。ぞんなごとよりっ、猫ちゃんを助げてぐれっ」グシ
?「わかっている。メイドさん、手伝ってくれ」
メイド「はい、ただいま」
?「では治癒魔法を。…これで」ポワー
?「…よし。メイドさん、猫さんに毛布と寝床を」
メイド「承知しました」
?「猫さんなら、もう大丈夫だ。傷もふさがった。しばらく休ませれば元気になる。あとはメイドさんに任せてくれ」
男「ほんとうか?ほんとうに大丈夫なのか?」
?「ああ、大丈夫だ。我が名に懸けて誓おう」
男「あぁ、ありがとう。ありがとう、ううっ」グス
?「それでは改めて、男よ。来てくれて感謝する。私はこの国の王、魔王だ。そして、迎えに出したそこの女は側近だ」
側近「以後、お見知りおきを」
男「は?え?(国?女のまおぅ?角??」
魔王「混乱するのも仕方ない。しかし我々には時間が無い。見てもらいたい物がある。こちらへ付いて来てくれ」
男(前を歩く魔王と名乗った女、顔がやけに土気色だ。後ろの女はそうでもないが)
男(しかし石造りの地球暦以前の中世的な建物だな…。ここは、倉庫か…)
男「っ!あれはコアか?AC?なぜ胸部に剣が刺さって?」
男(アーマード・コア(Armored Core)、ACと呼ばれる機動兵器。場違いな雰囲気にも程がある)
魔王「そうだ。あれはアーマード・コア。男にお願いしたい。どうか、あれで我が国を危機から救って欲しい」
側近「どうか、お願い致します」
魔王「どうか、このとおり、力を貸してくれ。民を救って欲しい」
男「頭を上げてくれ。猫ちゃんを助けてくれた。それに報いたいし手助けしてやりたいが、俺でいいのか?」
魔王「貴方でなくてはならないのだ。何の間違いも無く、貴方をこの世界に召喚したのだ」
魔王「どうか、男、お願い致す」
男「…そうか(結局何も変わらなかった。ここに来てもまた、戦いからは)」
男「…猫ちゃんが無事で一緒に居られるなら、それでいい。頭を上げてくれ。俺はどうすればいい?」
魔王「そうか…うん、ありがとう。男、ありがとうっ」
魔王「それではまずは、その剣を引き抜いてもらいたい」
メイド「魔王様!大変です!敵ACの侵攻が始まりました!」
側近「魔王様。私は砦に戻ります」
魔王「頼む」
魔王「では男。その剣は受け取って欲しい」
男(あのコアに刺さっていた剣。人間にしか扱えない呪いがかけられ、彼女らの命を容易く奪っていく剣、か)
男「いいのか?」
魔王「よいのだ。これは贖罪だ。もし私が貴方に害をなすならば、その剣で私を討ってほしい」
魔王「あのコアは前魔王が使っていたものだ。操縦席に剣を収める場所も設えてある」
魔王「ACについてはメイドさんに聞くといい。あれで中々の使い手だ。準備が出来次第、出撃してくれ。よろしく頼む」
おう
男(ほとんどが知っている仕様と同じで助かった。左腕用の射撃武器まであるとはな)
男(機体は中量二脚。兵装はグレネード砲、小型ロケット、ライフル、ブレード。少し重いがなんとかなるな)
男「出るぞ」
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
メイド『渡した地図に移動ルートを記しています。作戦予定領域はここから南西にある砦周辺です』
メイド『側近様は先行していますが、ACなら直ぐに追い付くでしょう』
メイド『追い越す際、味方信号弾を見落として損害を与えないように注意してください』
メイド『今作戦は敵AC撃退と砦の防衛が目的です。男様、御武運を』
男「ああ、行ってくる」
男(あれが砦?でかいな)
男(見えた。重量二脚、中型ロケット、レーザーライフル、ライフルか)
男(まだこちらに気が付いていないか。ここからなら。グレネード砲は、やはり構えるのか)ドォン
『ばかな。ACだと!?』
『姫様のナイトが現れたぞ!』
オペレーター『ああ、助かった!聞こえますか?こちら砦のオペレーターです。今、砦の損壊率は50%です!』
男「ああ、聞こえている」
男(セオリー通り、側面を取りに回り込みながらライフルで…っ)タァンタァンタァン
『もうすぐ姫様も着くぞ!機体だけは護りぬけ!』
男(ロックが外れる?くそっ、ロケットの扱いは苦手だってのに)ダン ブオン ダン
『話が違うぞ!』
オペレーター『砦損壊率60%』
男(安定してロック出来るようになってきた。それにしても)タァンタァンタァン
『騎馬隊出せ!歩兵隊もだ!向こうを押さえるぞ!』
『いかんぞ…』
男(鈍い重二だったな。横を取りやすくて助かった)タァンタァンタァン
『お前ら続け!』
『死にたくな…っ』
オペレーター『敵AC撃破を確認しました』
『回収班!向かうぞ!急げ!』
『2陣まで出ている!3陣出るぞ!』
オペレーター『続いて、敵後続部隊がACを出してくる前に、壱の砦の制圧をお願いします』
オペレーター『敵は歩兵大隊。壱の砦には固定砲台が数ヶ所あります。弾薬補給出来次第、出撃してください』
男「(そうなるか)わかった。ところで武器変更は出来るか?マシンガンに変えたい」
オペレーター『少し待ってください。あ、司令』
司令『話は聞いた。大丈夫だ。補給所はそちらから見て左の、そうだそこだ』
司令『歩兵隊が先行している』
司令『前線を押し上げる好機なんだ。よろしく頼む』
― 壱の砦
オペレーター『施設制圧を確認しました。作戦完了です』
『システム 通常モードに移行します』
男「ふぅ」
オペレーター『お疲れ様でした。間もなく側近様が砦に到着します』
オペレーター『補給と、それから配給も用意してあります。別命あるまで、そちらの壱の砦で待機です』
男「了解した」
男(ほんとに別世界なんだな。まるでおとぎ話だ。あれはオークってやつか?)
男(こっちのオークが隊長か?)
隊長「ほらよ。配給だ」
男「ああ、ありがとう」
隊長「ケッ、姫様のナイトが人間とはな。…そうか、貴様レイヴンか」
男「…ん…意外といけるな」
隊長「…フン」
側近『休ませてやれず申し訳ない』
男「いや、いい。これしきで恩が返せたなんて思っちゃいない」
側近『それはこちらの台詞だ。男様には』
男「まあいい。それで作戦内容は?」
側近『ああ。次は弐の砦を奪還する。敵はAC1機と歩兵大隊だ』
側近『砦に対し西から男様、わずかに遅れて北から将軍のACが仕掛ける』
側近『男様には敵ACへの陽動をお願いする』
側近『私は敵後続部隊の侵攻に備え、そちらの壱の砦にACで向かう』
側近『この攻略が完了すれば、一先ず危機は脱する。今しばらく力を貸してくれ』
なんだこれ
― 作戦領域,弐の砦周辺
オペレーター『遅れはありません。作戦は予定通り進行中』
男(丘陵地帯に入ったが、弐の砦はまだレーダー範囲外か)
男(っ!フロート!中型ロケット、スナイパーライフルにライフル)
男(すでに出てきてたか)タタタ
『その機体…動かせたのね』
男(障害物も無くフロートは動き易い。引き撃ちされるときついな)タタ タタタ
男(だが、肩武装パージで軽くし速度を上げれば…っ)パシュンパシュン
『いい度胸じゃない』
男(なんとか同等に動けるようになったが)タタタ タタタ
『こちら将軍!待たせたな!』
男(そう簡単には横を取らせてくれないな)タタタ
『忌々しい』
『閣下』
『ええ、撤退よ』
オペレーター『敵ACと敵歩兵大隊の撤退を確認』
オペレーター『施設制圧を確認しました。作戦完了です』
― 魔王別邸,始の都市
男(ようやく戻ってきた、始の都市)
男(あぁ猫ちゃん、会いたかったよぉ)
男(…魔王の顔色、前より良くなってるな)
魔王「男、ご苦労だった。貴方が居なければ今ごろ」
男「それはお互い様だ。それより魔王。なぜ猫ちゃんをだっこしている。そんな気持ちよさそうな顔で…っ。俺にはだっこさせてくれないというのに!くそっ、猫ちゃんは俺を捨てて、魔王に付くというのか…っ」
魔王「そんなことはないぞ、ふふ」ナデリ ナデリ
男「猫ちゃんを助けてくれて感謝してはいるが、ぐぬぬ」
メイド「男様、猫ちゃんは男様にとても感謝しておりましたよ。それに、とても心配しておりました。今は安心して寝ておられるのです」
男「それなら良いのだが、しかしやはり。ぐぬぬ」
男には改めて非礼を詫びなければならない。
そして力を貸してくれたこと、本当に感謝している。
いろいろ聞きたいことがあるだろうが、まずは男、貴方のことについてだ。
召喚魔法はこちらの世界に招くことは出来るが、元の世界へ送り返すことはが出来ない。
向こうの世界で男が見た側近は思念体、実体の無い幻のようなものだ。
研究は続けているが、送り返す方法は見つかっていないのだ。
本当にすまない。
次に情勢だ。
我が国は魔王国、大陸の北に位置する。同じく大陸の東に東国、西に西国がある。
南は、かつて国があったが大戦が起こり海に沈んでしまった。今では島がいくつかあるだけだ。
男を召喚した時、我が国と西国は戦争をしていた。
奴らは密かに準備し、侵攻してきたのだ。
押し込まれたが戦線を拮抗させるまでは出来た。しかしACにはACでしか対抗できない。
独立勢力、ましてや東国が西国に呼応して動いていれば我が国は滅んでいた。
だから男には、本当に感謝している。
貴方に報いなければならない。
この国をもってしたいが、そういう訳にもいかない。
ならばせめて、自ら羽ばたける鳥になって欲しい。
― 屋敷,始の都市
男(俺が召喚されたここ始の都市に屋敷、ついでに支度金を貰ったが)
メイド「男様。そのお召物も良くお似合いですよ」
男「メイドさんはよかったのか?俺に付いて来て」
男(魔王の専属で、姉妹のように共に育ったと言う彼女。人間との混血で他からの風当たりが強いらしいが)
メイド「魔王国の全ては魔王様のものです」
メイド「魔王様が贈られたのは、男様を対等な立場として認めているから」
メイド「わたくしは魔王様に命じられたからだけではなく、わたくしが望んで来たのです」
メイド「ですから、お気になさらずともよいのです。これからよろしくお願いしますね、ご主人様♪」
男(自由が認められている奴隷か。複雑だな)
男(結局、押し切られてACまで受け取ってしまった)
男(レイヴン…か)
魔王国
大陸の北に位置。
魔族の住む国。妖精族、鬼族、獣族、竜族、悪魔族などを総じて魔族と呼ぶ。多民族国家。人間は嫌われており、混血も居るが良く思われていない。
魔王、側近、メイドは悪魔族。大臣は鬼族。メイドには人間の血が四分の一入っている。
王政。魔王が治める。ACを3機保有。
国民は全て等しく王の奴隷だが、言論、職業選択、経済活動、婚姻の自由はある。一夫多妻制。妻は4人まで。
魔法技術があり、魔力を込めた製品を生産、特産品の一つ。
農業が盛ん。食料輸出も多い。
各国の国境線は明確ではない。都市や砦の拠点を中心に影響力を行使できる範囲を自国領としている。
国家間には緩衝地帯が広がっており、大小様々な独立勢力が存在している。極少数だがACを所有しレイヴンとなっている者も居る。
男が活動拠点としている始の都市は、魔王国の中でも重要拠点の一つ。他には研究都市、国境都市などがある。
現魔王は就任から一年しか経っていない。前魔王は兄、側近は腹違いの妹。
前魔王は西国の西将軍と緩衝地帯の野盗対策の会談の際、暗殺された。
犯人は捕まっていないが、西将軍の手引きではないかと噂されている。
前魔王のACもこの時、おそらく一味の者に剣を突き立てられ封印された。
どういう理由か、起動しなくなった上にジェネレータに触れられなくなった。
西国
大陸の西に位置。
人間の住む国。魔族を嫌う者が多い。
封建制。西王が統治。ACを6機保有。内1機は男に撃破され魔王国に回収された。
鉱物資源が比較的豊か。鉱石の輸出をしている。
東国
大陸の東に位置。
人間の住む国。西の排他的な宗教に対し、他教に寛容。
王政。東王が治める。ACを5機保有。
武具、農機具の生産・加工が盛ん。
レイヴン
どの国にも属さないAC乗りの傭兵。個人から団体まで、形態は様々。
― 魔王城,首都
魔王「魔王城まで呼び出してすまないな、男」
魔王「紹介しよう。これは魔法技術研究所の所長だ。魔法の研究もだが、魔法のACへの応用も研究してる」
所長「はじめまして、男殿」
男「(小柄だな。妖精族か?)よろしく」
所長「早速ですが男殿、あなたから見たACに関する意見を色々と聞かせてもらいましょう」
男「魔法なんて全然わからないが、いいのか?」
所長「そんなの全く問題ありません。ささ、こちらへ」
魔王「それでは私は猫さんと」
大臣「魔王様」
魔王「ヒッ」
アーマード・コア
かつてあった大戦の折、召喚された兵器。
コアシステムにより頭部、コア、腕部、脚部などのパーツを自由に組替えることが出来る為、汎用性が高い。
武装も含め生産する技術は無い。継承されたものか発掘されたものが主。
外装ダメージの修理は一応可能。しかしFCS、ブースタ、ジェネレータ、ラジエータと深刻なダメージは修理不可。
ブースタ、ジェネレータ、ラジエータは経年劣化等で数が徐々に減っている。
現在、実戦で運用可能なジェネレータは世界に18個と言われている。
各種ミサイル、オービットを除く弾薬は生産出来る。薬莢の加工は東国が一歩抜きん出ている。
輸送機、輸送ヘリ、トレーラーが存在しない為、自走で移動が主。パーツを分割し馬車や牛車でも輸送できる。
国境にACを展開することは宣戦布告と捉えられてもおかしくない。各国とも常にACの動きを監視している。
実戦運用に耐えない頭部、コア、ジェネレータを転用、軍用無線通信に使っている。
他にも教練用のシミュレータに転用しているが、極一部の限られた者しか利用できない。
武装も都市防衛用の砲台に転用されることがある。
男の知るACとは全く異なるが、操縦方法はほぼ同じ。
魔王国保有のACパーツにジオ・マトリクス、エムロード、バレーナ、ムラクモ、クロームの単語は見つかっていない。
魔法
魔力、金、血などを代償に何らかの現象を起こす術。妖精族と悪魔族が得意。
簡単なものは詠唱だけで、大規模なものは魔方陣を使う。
魔法は魔方陣に魔力を込め、代償を捧げ、詠唱して発動する。時間の連続性は必要ない。
唐突なAC要素やめろw
所長「ありがとうございました」
男「いや、こちらこそ。参考になった、ありがとう」
所長「おや、将軍殿じゃないですか。東国方面警備に戻ったと聞いていましたが」
将軍「そうなんだが所用でね。そちらは男か。顔を合わせるのは初めてだな。改めてよろしく」
男「(獣族だったのか。犬かな?)ああ、よろしく」
将軍「君の戦いぶりは聞いているよ。是非とも機会を設けて手合わせをお願いしたいな。きっと良い戦いになるだろう」
男「俺でよければ、いつでも」
将軍「期待しているよ。それじゃあ、これで」
所長「わたしもこれにて失礼します」
男「ああ、またな」
大臣「男様、よろしいでしょうか」
魔王「男に依頼したい事がある」
魔王「これは断っても構わない」
魔王「何故なら、男を『レイヴン』だと認めた上で我が国の利益の為に依頼するからだ」
男「そんな顔をされたら断れなくなるだろ。もとより断るつもりも無いがな」
男「依頼内容を聞かせてくれ」
大臣「それは私から説明致します」
大臣「西国軍が占拠している国境都市の奪還作戦に参加して頂きたい」
大臣「この作戦を成功させて、戦争を終わらせます」
― 指揮所,壱の砦
側近「来てくれたのか」
男「断る理由がない」
男「それで、どうなってる?」
側近「ああ、都市へ通じる地下道の最終確認に部隊を派遣している」
側近「敵はAC2機と歩兵一個師団。私がACを誘き出し交戦、男様は地下道から都市へ侵入し制圧する」
側近「私一人でも攻略可能なのだがな。リスクを減らす為とは言え」
男「気にするな」
伝令「緊急事態です!傭兵団と思しきAC1機、国境に接近中。こちらへ向かっている模様!」
側近「こんなときに…っ」
ボリュームあるな
男「(中量二脚、小型ロケット、マシンガン、ブレード)各部異常なし。出るぞ」
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
側近『すまない。今、迎撃を頼めるのは男様しかいない』
男「気にするな。なんてことないさ」
側近『相手は傭兵団のNo.2、若頭だと思われる。気を付けてくれ』
男「ああ、行ってくる」
オペレーター『間もなく接触予測地点です』
男「レーダーで捕らえた。見えたぞ。重量二脚、大型ロケット、レーザーライフル、ハンドガン、データの通りだ」
『お前が期待の新人か。いいだろう、お手並み拝見といこうか』
男(渓谷に誘き出された格好か。いうほど狭くはないが)タタタ
男(…っ。ハンドガンにロケット。ダメージもでかいが、喰らうと足を止められる)グラッ
男(速度と旋回で上回れば勝機も見えるっ)タタタ タタタ
『ほう』
男(重二のくせに飛び回りやがって)タタタタタタ
男(頭上から背後を取りに来るが、その前に側面に回り込めれば)タタ タタタ
『やはり…あいつには無理だな』
男(装甲が厚いっ…貫けないか)タタタタタ
『これ以上は契約外だな。今日はこれで引き上げる。また会うかも知れんな、レイヴン』
オペレーター『観測班より連絡。傭兵団ACの撤退を確認。迎撃成功です』
男「(威力偵察…か)これより帰還する」
側近『これより国境都市奪還作戦を開始する』
側近『これで戦争を終わらせる。皆、よろしく頼む』
男「各部異常なし。出るぞ」
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
オペレーター『地下道の先に司令室と管制室があります。これを制圧してください』
男(さて、この地下道を抜ければ…)
男(ここは…地下倉庫か…この先に…)
『ようやくお出ましね』
男(っ!フロート!マシンガン、読まれてたか…っ)タタタ
男(この狭さ。とにかく動くしかないっ)タタ タタタ
男(多少の距離は取れても、横の動きが限られるっ)タタタ タタ
『…ずいぶ…調子がよさ…だねえ』
『貴様が…を…っ』
男(向こうも始まったか)タタタ
『やるじゃない』
男(回り込みにくい分、正面からの撃ち合いになる)タタ タタタ
『…くそっ…びはおわ…だ…ごしろ…』
『管制…ちゃんとえん…し…』
男(狭い空間で削り合い、まずいな…っ)タタタ タタタ
『ッ…のきた…負けるは…が…っ』
『閣下、お時間です』
『ええ。お守りもここまで。西将軍、殿をお願いね』
男(引いた?撤退したのか?)
オペレーター『敵AC1機と敵歩兵大隊の撤退を確認。敵AC残り1機です』
オペレーター『敵AC撃破を確認。施設制圧を確認しました。作戦完了です』
― 指揮所,国境都市
魔王『男、側近、此度の働き感謝する』
男「それほどでもない依頼をこなしただけだ」
側近「もったいなきお言葉。これで終戦への道筋も」
魔王『ああ、盗られたものを取り返しただけだからな。嫌とは言わせない』
魔王『すぐに停戦合意できるだろう。終戦協議には東国にも来てもらう』
魔王『それから男にも協議の場に来てもらおうと思う。そのつもりでいて欲しい』
側近「私はしばらく、ここに残らねばならん」
側近「男様には感謝している。ACの鹵獲や要人を捕虜に出来たのは男様のおかげだ」
側近「交渉は有利になるだろう」
男(停戦合意はそれから一週間後だった。終戦協議が始まるまでには更に二週間を要した)
― 終戦協議会場,緩衝地帯中央部
東王「…領土は開戦以前と同様に保有するものとする。以上で異議はないね?」
魔王「ああ、それでいい」
西王「異議はない」
東王「さて。次は捕虜と賠償に関してだが」
魔王「その前に一ついいだろうか」
東王「なんだね?」
魔王「レイヴンと認めて欲しい男が一人居るのだが、連れて来てもよいかな?」
西王「それがこの場と何の関係がある」
魔王「その彼に、こちらで預かっているACパーツ一式を報酬として渡してもよいのだが」
西王「チッ、連れて来い」
魔王「ありがとう。そこの君、男を呼んできてくれ」
男「失礼します。…どうも」
魔王「今回の戦いで彼には『レイヴン』として色々と助けてもらってね。各々の国にも彼を『レイヴン』として認めてもらいたいのだが、どうだろうか?」
東王「君が例の…。いいだろう、我が国は認めよう。君とは、いい関係が結べることを願っているよ」
男「ああ、よろしく」
魔王「西王はどうだね?」
西王「とんだ茶番だな。まあ、いいだろう。認めるよ、レイヴン」
男「…どうも」
魔王「おめでとう、男。ようこそ、新たなるレイヴン」
男「…ありがとう」
魔王「ところで、前の依頼の報酬をまだ渡していなかったな。始の都市にACガレージなんてどうかな?」
西王「…っ。籠の鳥にするか!」
男「俺は俺の思うようにする。貰えるなら貰っとくよ」
西王「…レイヴン、調子付くなよ」
男「俺はそちらともいい関係でいられたらと願っているんだがな」
西王「フン」
東王「さて。そろそろ議題に戻ろうじゃないか」
―――――
―――
―
― 屋敷,始の都市
男「せいっ。せいっ」
メイド「もっと腰を入れて!」
男「おう!せいっ。せいっ」
側近「邪魔をする。…メイド、男様は棒を振り回して何をやっているのだ?」
メイド「いらっしゃいませ、側近様。ご主人様が剣の稽古をと申されましたのでお手伝いを」
男「よく来たな、側近」
メイド「素振りはまだ終わっていないぞ!休むな!」
男「ハイ」
側近「…あまり無理はするなよ」
メイド「心得ております♪」
男「すまない。待たせたな」
側近「猫さんと一緒にくつろいでいたよ。それにしてもなぜ剣の稽古を?」
男「いやなに、これからはACだけじゃなく生身でも多少は戦えるようになろうかと思ってね」
男「小火器は扱えるんだが、ナイフの類は全く駄目なんだ」
側近「しょうかき?」
男「あー、ボウガン?だったか、人用のライフル類のことだ」
側近「なるほど。何れにせよ鍛錬は良いことだ」
男「それで今日はどうしたんだ?」
側近「ああ、依頼書を届けに来た。正式なルートのものだ」
男(正式なルート。レイヴンとコンタクトを取れない者に代わり、国が依頼書を届けることだ)
男(代行は無償だが、依頼内容は各国に検閲される。お墨付きという訳だが)
側近「さて、届け終わったので私は帰る。依頼内容を聞くのは規定違反だからな。それでは失礼する」
男「ああ、ありがとう。またな」
男「それでは、依頼内容を見るか」
『敵対する独立勢力への攻撃に協力して欲しい』
『敵は他のレイヴンへ応援要請をしていない。今がチャンスなのだ』
『撃滅した敵勢力の領土と契約金を報酬とする』
メイド「いかがなさいますか?」
男「金を払えば通信施設の利用が出来るとはな」
男「(中量二脚、小型ロケット、マシンガン、ライフル)各部異常なし」
男「猫ちゃんは側近が見てる。後顧の憂いは無い。出るぞ」
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
メイド『渡した地図に移動ルートを記しています。作戦領域は魔王国南西の緩衝地帯です』
メイド『今のところ周辺に敵の反応はありませんが、十分気をつけてください。御武運を』
男「ああ、行ってくる」
男「さて、そろそろのはずだが…あの村か?」
メイド『それらしい反応はありませんが…』
男(無人か?でかい倉庫だな。…ん?)
『お前に依頼したのは、この俺さ』
メイド『AC!?倉庫に隠れて…っ』
『まんまと騙されてくれたな。おめでたい野郎だ』
『だが安心しな。すぐに楽にしてやるよ!』
男(…っ。逆間接、小型ロケット、ライフル、スナイパーライフル、か)
メイド『敵AC、所属は不明です』
男(ぴょんぴょん跳ねやがって)タタタ
男(だが、ジャンプ後の着地が隙だらけだ)タタタ タァン タタタ タァン
男(側面に回り込みながら狙っていけばっ)タタタ タァン タタタ タァン
『じょ、冗談じゃ』
『おい!早く加勢しろ…っ』
メイド『敵AC撃破を確認。待って下さい、もう一機。あれは…野盗のAC!』
『ふん、助けるつもりなど、もとよりない』
『お前は、ここで終わらせてやる』
男(四脚、小型ロケット、あれは、チェインガンか。フィンガーが2)
男(くっ、この距離はまずいっ)タタタ
男(縦に横にと、よく動く…っ)タタ タァン タタタ
男(距離を取って動きながら当てていくしかない…っ)タタタ タァン タタタ タァン
男(少しずつだが、確実に削られている)タタタ タァン タタタ タァン
『レイヴンなど、不要な存在だ』
男(残弾、もつのかっ)タタタ タァン タタタ タタタ
『っ…馬鹿な…父さん』
メイド『敵AC撃破を確認。周辺に反応ありません』
メイド『野盗には懸賞金がかけられています。運用費も少しは回収できそうですね』
男「そうだといいな」
メイド『それでは軍に撃破したACの回収依頼と、懸賞金の申請をします』
メイド『軍が到着するまで、警戒しつつ待機をお願いします』
男「わかった」
男「見知った顔が居て助かったよ」
隊長「フン、仕事だからな」
男「仕事が早くて助かる」
隊長「派手に暴れまわったようだな」つ書類とペン
男「仕方なくてね。回収したパーツはガレージに運んでくれ」ウケトリ カキカキ
隊長「ACの中身はよく知らんが、使えそうなパーツは少ないようだな」
男「まあね。だが、このままにして下手に出回ってもまずいんだろ?」つ書類とペン
隊長「当然だ。そのために来ている」ブンドリ
男「それじゃ、あとはよろしく頼むよ」
隊長「フン、しっかり請求するからな」
― 屋敷,始の都市
男「なんとか収支は黒字になったな」
メイド「損壊したパーツにも値を付けて引き取って頂きましたから」
男(野盗ACのパーツは損壊したが軍が把握しているものだった)
男(もう一つのACはブースタ、ジェネレータがそもそも運用に耐えないレベルの劣化品だった)
男(なぜ動かせたのか、軍も調査に乗り出すようだが)
側近「邪魔をする。男様は居るか」
メイド「いらっしゃいませ、側近様」
男「よく来たな、側近。今日はどうした?」
側近「研究都市への招待状を持ってきた」
男「研究都市?」
側近「魔法技術研究所があり東国方面警備の要となっている都市だ」
男「ああ、将軍と所長が居るところか」
側近「そうだ。その二人からの招待状だ。シミュレーターでの模擬対戦依頼と、先日の野盗ACの意見聴取だ」
男「猫ちゃんと離れたくないから断ってもいいかな?」
側近「…」ジワ
メイド「ご主人様は、やはりお優しいのですね」
男「報酬が良かったからだ」
メイド「ふふ」
男「メイドさんまで付いてこなくてもいいのに」
メイド「始の都市や首都ならまだよいのですが、他の場所では人間にあまり良い感情がありません」
メイド「わたくしなら地理にも明るく、護衛の心得もございます。お任せ下さい」
男「はあ、勝てないな」
― 司令部,研究都市
男(馬車で一週間。ようやく研究都市司令部に着いた)
所長「遠路はるばる、ようこそ男殿。馬車はどうでしたか?」
男「思ってたより良かったよ。初めてだったから色々新鮮だった」
所長「そうでしたか。お疲れでしょうから今日はお休みになって、明日からということで」
所長「そうそう、今晩我が家で食事でもどうですか?めずらしいワインが手に入りましてね」
男「将軍は明日の午後だったか」
メイド「はい、明日の午後からでございます」
男「ワインは少しなら大丈夫だな。メイドさんも一緒にいいか?」
所長「ええ。ええ、いいですよ。宿舎へ迎えに行きましょう。それでは後ほど」
― 所長私邸,研究都市
所長「すみませんね。メイド殿に給仕を手伝ってもらうなんて」
メイド「お気になさらずに。では用意をしてまいります」
男「ああ」
所長「それでは今のうちにワインを味見しましょうか。グラスをっと」
所長「おお、いい香りですね。それでは乾杯」
男「乾杯」
所長「ふむ、中々の味ですね」
所長「わたしはね、妖精と人間のハーフなんですよ。小さい頃はよく虐められました」
所長「それでも勉強はよく出来たほうでしてね。こうして所長まで務めさせてもらってる訳ですが」
所長「それでも虐めや偏見が無くなる訳じゃあない。いろいろ怨みましたよ」
男「(身体が)…っ」ガタッ バリンッ
所長「あなたさえ出てこなければ。…この魔法陣に命を捧げてもらいますよ」ヒュン
男「くっ(何かを投げた素振りに、とっさに剣を抜いて盾にしたが…っ)」ガキン
男(弾いた?もう、力が…)グラリ
ガチャバタンッ
メイド「ご主人様!これは召喚の!?曲者は貴方か!今お助けします!」ダッ
所長「チッ、だがもう遅い」
メイド「氷矢!」ヒュン
所長「っ!ぐふぅ…ふふ…この陣を出して、完成だ…っ」バタリ
メイド「ご主人様!今治療を!お怪我は?毒!?」ポワー
男「ゴホッ。魔法…便利…だな」
ゴゴゴゴゴ
メイド「召喚魔法が発動してる…っ」
男(魔法陣から、ゆっくりと少しずつ浮き上がり出てきているのは)
男「…最悪だ。今すぐ逃げるぞっ」グイッ
メイド「ですが、あれはACでは?」
男「あれは人が乗っていなくとも動く。破壊が終わるまで…っ」
男「…ナインボール」
男「司令部に向かおう」
メイド「こちらへ。肩を貸します」グイッ
男(ナインボール、動き出したかっ)
男(急いでいるが、近いようで遠い…っ)
男(所長の私邸、次に研究所を破壊し始めたか)
男(こちらを向いた!?)
男「狙われている!メイドさん先に行け!」
メイド「!?」
『そこの正体不明機!好きにはさせん!』
男(将軍の機体!助かったのか)
メイド「司令部まで、もう直ぐです」ギュ
― 司令部,研究都市
ドゴォーン ドゴォーン
メイド「お身体の調子はいかがですか?」
男「だいぶ良くなったよ。ありがとう」
メイド「わたくしの落ち度です。なんなりと罰を」
男「落ち度なんてないし、罰の必要もない。助けてもらっている」
ドゴォーン
少佐「イチャついてるところ悪いんですが、あの外で暴れてる奴の情報はもうないんですか?」
男「中身の詳しいことはわからん。あれは無人で動き、世界の均衡を保つ為にあらゆるものを破壊をしていた」
男「この地で奴がどう判断するか知らないが、破壊が終わるまで止まらないかもな」
少佐「そんなあ」
ドゴォーン ドゴォーン
伝令「少佐!将軍が劣勢です!」
少佐「!」
少佐「虎司令、お客様をお連れしました!」
虎司令「ご苦労、配置に戻れ。すみませんね、男殿、メイド様」
男「いえ。将軍はどうですか?」
虎司令「見てのとおり、あまりよくありませんな。無人で疲れ知らず。エネルギー効率は通常の2倍以上。パルスライフルは弾切れ無し」
虎司令「にわかに信じられませんでしたが…奴は化け物ですな」
虎司令「なんとか都市の外に誘い出すことは出来ましたが、このままでは負けるでしょう」
メイド「応援は?」
虎司令「魔王様が間もなく」
『ぐあぁ』
オペレーター「将軍、さらに被弾。中破」
副司令「砲撃戦に備えろ!」
オペレーター「魔王様、レーダー圏に入りました!」
『すまな…っ』
オペレーター「ああ!将軍、大破!」
『私の国で好き勝手してくれる。我が国にたてつく者がどうなるか教えてやろう』
オペレーター「魔王様、交戦!」
オペレーター「敵AC、移動を開始。南下しています」
副司令「回収班を出せ!」
オペレーター「国境警備隊より連絡。敵AC、緩衝地帯に入り観測圏を出ました」
『研究都市司令部へ。そちらへ行く。受入れを頼む』
虎司令「国境警備隊へ連絡。引き続き警戒を厳にせよ」
虎司令「副司令、後は任せる」
虎司令「さあ、お二方とも。魔王様をお迎えに上がりましょう」
魔王「そうか、所長が」
魔王「召喚魔法は秘術。歴代の魔王しか知らず、中でも一部の者にしか使えないはずだった」
魔王「男、申し訳ない。恩を仇で返すとは…こうなってはその剣で私と一族の首を刎ね、お詫びをするしか」
男「そんな詫びは要らん。それでは所長の思う壺だ」
男「召喚魔法の詳細が漏れたなら、それもなんとかしないといけない」
男「それに魔族と人間の対立が根本にあるんだろ?それを何とか、時間はかかるだろうがしてくれ」
魔王「わかった…我が名と一族に懸けて誓おう」
魔王「虎司令、所長と情報漏洩の捜査は憲兵隊特命係に任せる。協力してやってくれ」
虎司令「国家憲兵にですか…わかりました」
― 屋敷,始の都市
男(聴取はすぐ終わったが、また馬車で一週間)
男「はあ、やっと帰ってきた。猫ちゃんただいま」
側近「男様!戻ったか!」
男「ああ、側近。今戻った。猫ちゃんは」
側近「男様、すまなかった。私が安請け合いしたばかりに、恩を仇で返すとは。こうなってはその剣で私の首を」
男「そんな詫びは要らん。姉妹で同じことを言うな」
メイド「ご主人様、傭兵団の女頭領と名乗る方がお見えになっております」
女頭領「堅苦しい挨拶は抜きにしようじゃないか」
男「それは助かる。それで、何のようだ?」
女頭領「うちのがあんたをえらく気に入っててね。顔を拝みに来たのさ」
女頭領「それから、こいつは手土産さ」ポイ ⌒封書パサ
女頭領「あんたらの探し物が見つかるといいね」
男「なぜ、こんなことを?」
女頭領「うちらも迷惑してるのさ。だけど情けない話、手も足も出ない」
女頭領「そっちのお二人さんとは、もうねんごろかい?」
女頭領「早く手をつけないと取られちまうよ。それじゃあ邪魔したね」
男「ああ…」
側近「…」
メイド「…」
猫「みゃー」
男「…封書の中を確認しようか」
側近「そ、そうだな」
メイド「お茶を淹れなおしてまいります」パタパタパタ
男「ナインボールに襲撃された場所と観測された地点。一番新しい情報は昨日か」
側近「潜伏できそうな場所のピックアップまで済んでいるのか」
男「お膳立てが過ぎるな」
側近「罠と?」
男「わからん」
側近「見過ごすと言うのか」
男「そうは言ってない」
側近「では何なのだ!」
男「俺は、奴と一度戦って負けた。あの時死ななかったのは運が良かっただけだ。今戦っても、良くて五分」
側近「怖いのか」
男「俺はレイヴンだ。自信がある奴、正義感に溢れる奴、理想を求める奴は長生き出来ない」
側近「貴様がそんな腰抜けだとはな!見損なったぞ!」
側近「帰る!」
メイド「ご主人様」
男「はぁ。すまない」
メイド「いえ、ですが」
男「怖いのは本当だ」
男「ナインボ-ルを放ったのは魔王国だ。放置したままには出来ない」
男「緩衝地帯が反魔王国に傾く前に対処したい」
男「だが、緩衝地帯へ容易に軍のACを動かすことは出来ない」
男「傭兵団はNoだと言った。なら俺がやるしかない」
男「この情報、司令に渡して調べてもらうか」
男「あとは…(俺の覚悟だな)」
― 演習場,始の都市
男「模擬戦を受けてくれてありがとう」
側近『ふん、魔王様からの願いでなければ断っている』
オペレーター『ペイント弾及び模擬戦用ブレードを使用します。ダメージ判定、武器破壊判定には従ってください』
男「ああ、わかっている」
側近『了解』
男(側近は中量二脚、中型ロケット、マシンガン、ブレードか)
男「(中量二脚、小型ロケット、マシンガン、ライフル)各部異常なし」
『システム 戦闘モード 起動します』
オペレーター『READY』
オペレーター『GO!!』
男(真っ直ぐ突っ込んで来やがった…っ)タタタ タァン タタタ
男(こいつも上に横によく動く…っ)タァン タタタ
男(頭を越えて背後を取りくるっ)タタタ
男(やはり距離を…っ、とらないと)タタ タァン
オペレーター『男、小破です』
側近『他愛もない』
男(速いな…っ)タタ タァン タタタ タァン
オペレーター『側近、小破です』
男(この距離を維持できれば…っ)タタタ タァン タタタ タァン タタタ
オペレーター『男、中破です』
側近『終わらせるっ』
オペレーター『側近、中破です』
男(…っ)タタタ タァン タタタ タァン タタタタ
オペレーター『男、大破。側近、大破』
オペレーター『男、戦闘不能。そこまで。側近の勝利です』
男「ふぅ」
側近『…もう一度だ』
男「…」
側近『男様、もう一度勝負しろ』
男「…ああ、わかった」
男「今戻った」
メイド「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
男「ペイントを落とすのが一番大変だとはな」
男「あー勝敗は1勝4敗だ。ペイント弾の在庫を使い切って終わった」
男「やはり側近は強い。色々試させてもらったが、戦場では相対したくない」
メイド「そうでしたか。良い鍛錬になったようですね」
男「ああ。…そろそろ連絡が来る頃じゃないか?」
メイド「…はい。魔王様からご連絡が。明日、司令部に来て欲しいと」
男「わかった」
― 司令部,始の都市
魔王『男、本来なら直接会うべきなのだがこのような形で依頼することを許して欲しい』
魔王『我らの不始末の尻拭いをさせている事は承知している』
魔王『男、正体不明機を撃破してくれ。頼む』
男「わかった。その依頼受けよう」
魔王『…作戦内容は司令から説明する』
司令「正体不明機は緩衝地帯の、以前レイヴンが野盗と交戦した場所から少し東に行った地点に潜伏していると判明した」
司令「この場所は地下に坑道がある。縦穴を降りて横穴を進んだ先の空間が潜伏場所になっている」
司令「この坑道はAC発掘の為に掘られたもので、その空間もかなりの広さがあると予測されている」
司令「作戦は、敵に察知される前に坑道に侵入、撃破すること」
司令「作戦行動中、軍は全面的にレイヴンを支援する。弾薬費、修理費もこちらで持つ」
司令「なお、これまでの情報から、兵装はミサイル、グレネード砲、パルスライフル、ブレード。ミサイルを除く弾薬の補給は完了、外装も8割まで回復していると考えられる」
司令「以上だ」
魔王『男、すまない。よろしく頼む』
男「(中量二脚、マシンガン、ライフル)各部異常なし」
メイド『渡した地図に移動ルートを記しています。作戦領域は魔王国南南西の緩衝地帯です』
メイド『今のところ周辺に敵の反応はありません』
男「出るぞ」
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
メイド『間もなく作戦領域です。周辺に反応なし。坑道入口にマシンガンとライフルの予備を各1用意してあります』
男「わかった。これより坑道に侵入する」
メイド『坑道最深部では通信が出来ません。御武運を』
男「ああ、行ってくる」
男(ナインボール、いよいよか)
男(底まで着いたな。先に進むか)ガションガション
男(っと、この先に奴が居るのか)
『…全てを壊す…お前も』
男(思っていたより空間が広くて助かった…っ)タタタ タァン タタタ タァン
男(相変わらずっ…上に横によく動くっ)タタタ タタタ タァン
男(…上から回り込んで背後を取りくるっ)タタ タァン タタタ タァン
男(わかっていても、対処するのはきついっ)タタタ タァン タタタ
男(こちらも、距離をとって動き続けるっ)タタタ タァン タタタ タァン
男(パルスライフルの連射は脅威だ。装甲もてよ…っ)タタタ タァン タタタ タァン
男(火を噴いた?もう少しっ)タタタ タァン
男(…止まった、か?)タタタタタ
ボボボボォーン
男(周辺に反応なし)
男「…これより帰還する」
― 魔王城,首都
魔王「此度の働き、心より感謝する」
男「依頼をこなしただけだ」
魔王「それでもだ。本当にありがとう」
魔王「それで報酬なのだが。私を娶ってはくれまいか」
男「!?」
側近「!?」
大臣「!?」
メイド「!?」
魔王「それなりの持参金も用意できるし不自由にはさせん。それに」
魔王「魔族と人間とが和解するのも、私と男が結婚するのが一番早く解決すると思うのだ」
魔王「メイドさんのお母様も素敵な方だった。私もあの方やメイドさんのような子を」
大臣「魔王様!?」
男「待ってくれ」
魔王「なんだ?第2夫人でも構わないぞ?…もしや…もう第4夫人まで」
男「そうじゃない。俺では国民は納得しないだろ。確かに傭兵としては役に立ったが所詮ただの兵だ」
魔王「それで十分だと思うが…そうか…名案だと思ったのだが」
大臣「そ、そそそうです!一介の人間では民は納得しません!ご再考を!」
魔王「なるほど。では男よ、人間の王となれ。王ならば文句も出まい」
魔王「賠償に託けて西国辺り切り取ってしまえばよかろう」
魔王「そもそも西国の男神教が排他で――」
―――――
―――
―
男(その後、総出で魔王を説得した。あまり納得していなかったが)
男(報酬は金にしてもらった。西国からの賠償金が相当な額だったらしく、大臣は喜んで払ってくれた)
男(だが結局、始の都市のガレージと屋敷を国土、首都に領事館を置くという形で独立国家にさせられた)
男(名目が変わっただけで実態は変わらないが)
男(レイヴンの国…愚かな)
メイド「ご主人様、依頼が来ております」
男「猫ちゃんと一緒に居たいから断ってもいいかな?」
END
くぅ~疲
変な汗かいたもう二度とやらねえ
ホモはレズはっきりわかんだね
オーク隊長は誘い受け
魔王娶るとこまでやろうぜ
乙
面白かった!