今回はお姉ちゃんがウガリット神話についてお話ししてやるぜ?
しかもヤム編モート編全部お話するぜ?
大サービスだからな
でも実はウガリット神話だけじゃないけど……
今回はお姉ちゃんがウガリット神話についてお話ししてやるぜ?
しかもヤム編モート編全部お話するぜ?
大サービスだからな
でも実はウガリット神話だけじゃないけど……
遠い遠い昔の話 まだキリスト教もなかった頃のカナンのお話
まだイスラエルにユダヤ教もなくて、もちろんエジプトでアマルナ革命が起きるより前のカナンのお話
天地を想像したであろうその夫妻と70人の子供達はそびえ立つサフォンの山々の上で暮らしていました
偉大なる創造主である天の父神エールと、すべての生命と神聖を司る地の母神アシェラト
二人は地上に光を生み出そうと思いました。そうして最初の子供、太陽の女神シャプシュが生まれました
光が溢れだした地上ですが、まだ生物が暮らすにしては熱く乾いていたのです
それもそのはず、太陽の神が生まれるということは同時に乾季の神も産まれてしまうということなのです
こうして産まれた第一の王子、炎と乾季の死神モートは地上を焼きつくしてしまいます
これでは生命が繁栄するのは難しい。アシェラトは全ての生命の母でもあるので放っておくことができないのです
そこでアシェラトは大地の渇きを潤すべく、地上に広大な海を作ることにしました
そうして二番目の子供達、アスタルトとヤム(またの名をナハル)が生まれました
アスタルトは太陽のそばに輝く金星で、海を行く者達の目印になります
そして龍神ナハルは水流その物ですので、乾季である兄モートを地の縁へと追いやってしまいます
ついに地上に生命が満ち溢れる時代がやってきたのです
ですけどモートを追いやった第二の王子ヤムは敵がいなくなったので、自分こそが王にふさわしいと増長し始めます
大津波を起こして地上の生命を呑み込み、人間たちに供物や生贄を用意させるようになったナハル
これでは地上はすぐに沈んでしまいます。こうなったらモートの二の舞いです
そこでアシェラトは雨雲を操り雷と風で波を沈める大気と嵐を作ろうとします
だけども偉大なる創造主エールは実のところこれ以上自分の支配する領域を取られたくないので
第三の王子、嵐と雷を司る豊穣神ハダドを産まれた直後に捕まえてしまおうと考えます
アシェラトはエールの思惑を阻止するべく愛おしい息子を天高きサフォンの宮殿の窓から投げ捨ててしまいます
こうして落ちていった赤ん坊のハダドは地上に住む国津神ダゴンの領地に落ちていきました
その姿は人々にとって最初の雷だと言われてます
さて地上のエールとして名高い魚神ダゴンに拾われ育てられたハダド、彼は凛々しく成長していき
いつしかこう言われるようになりました バアル・ハダド(主なるハダド) バアル・ゼブル(王なるバアル)と……
さてさて地上に落ちたハダドが心配なアシェラトは、ハダドの妹である月の女神アナトを監視として送り込みました…
…
アナト「やっと見つけた! ハダド兄さん!」
ハダドはどうやら一人で狩りをしていたようです。正直なところ弓の腕はあまり良くないようでした。
ハダド「当たらないなぁ……うーん」
矢は猪にも鹿にも当たりません。ハダドはいつも接近戦を仕掛ける性質でした。気まぐれに弓を使っても当たらないも
のです。
ハダド「やっぱこう言うのはセンスよセンス」
そう言って弓を放り出すとハダドは腰につけていた短剣を手で持って、直接野牛だの猪だのを狩っていきます
アナト「ハダド兄さん、雄々しくてかっこいいなぁ……」 アナトはハダドの投げ出した弓と矢を拾います。
アナト「ハダドの匂いがする……兄様、危ない!」
力いっぱいに弓を引きます。ひゅー、すとんっとハダドの横をかすめて、矢は蛇の身体を脳天から尻尾まで一気に貫き
ます
ハダド「うおっ、誰だ今の! って、本当に誰?」
アナト「あぁ、お兄さん! 会いたかった! エッチしよ!」
アナトはぎゅーっとハダドを抱きしめます。押し倒されたハダドは何がなんだかわかりません
ですけどアナトがあんまりにも強くも求愛するもんですから、ハダドの生殖器もいきり立ってしまいます
こうして処女と童貞を交換し合った二人はこうして夫婦になりました
ダゴン「やっと迎えが来たのか。もっと早く来てもらっても良かったんだが」
アナト「今のハダドならみーんな王として認めてくれるわ!」
ハダド「俺が王になれるの?」
アナト「そうよ! ハダド兄さんは神々の王にふさわしいに決まってる!」
ダゴン「いきなり子供が落ちてきたから本当何ごとかと思ったんだぞ」
ハダド「こんな田舎臭い地上ともおさらばできるの?」
アナト「本当本当!」
ハダド「そう言われちゃあ仕方ないなぁ。ダゴン、悪いけど地上の王は別のやつにしてくれよな」
ダゴン「はー、早く地上管理の任解かれて休暇過ごしたかったのに。そう言うなら別のやつ送ってくれよな」
アナト「さぁ早く行きましょう我がバアル!」
ハダド「バアル、バアルかぁ。ふふふ、言われるとなんかくすぐったいなぁ」
アナト「ぴったりですよー」ぎゅー
ハダド「……いや、なんか、くすぐったいなぁ……」そわそわ
アスタルト「わぁ!やっときてくれた!貴方がハダドね!!」ぎゅー
ハダド「こ、これも姉妹!?」ぼいーんぼいーん
アナト「もう! アスタルトはすぐそうやって!」
アスタルト「かわいいかわいいー。アナトだけにはもったいないわ」
アナト「あたしのバアルなの!」
ハダド「じゃ、じゃあさ、とりあえず一発やろうよ」
アスタルト「うわでかい。ヤムのよりでかいわ。やっぱり乗り換えて正解ね」
アナト「もう! そりゃあ大量に子孫を残すのが男の義務だからしょうがないけど」
アスタルト「いいじゃないいいじゃない!いつもはアナトちゃんが独占していいから!」
アナト「それならよし」
ハダド「精が尽き果てそう」
こうしてサフォンの会議場に辿り着いた三人
他の神々はハダドの逞しい姿を見てヤムよりも王にふさわしい存在だと感じ取ります
そして定例のエールを中心とした会議が始まります……
アナト「偉大なるハダドをサフォンの頂に」
アスタルト「崇高なるハダドを我がバアルに」
ほとんどの神々はアナト達の意見に賛同してバアルを擁立しますが、一人だけその意見に賛同しない神がいたのです
それは絶対なる父神エールその人でした ヤム=ナハルの使いでありヤムそのものでもある分身の龍リタンは言います
リタン「ヤムこそが王にふさわしく、ナハルこそが上に立つにふさわしい」
エール「そうだ、ヤム=ナハルが王である。ハダドはヤムの台座となり、バアルはナハルの椅子となれ」
リタン「隷属であるバアルはアナトを引き渡し、従者であるハダドはアスタルトを献上しろ」
ハダド「ならば私がヤムを打ち倒し、バアル・ハダドがナハルを滅ぼす」
こうしてヤムとバアルは決闘を行うことになったのです
余談ですがこのお話の元であるラスシャムラ碑文はこのように同じことを別の言い方で言う韻を踏んだ対句法がされて
います
それは碑文が読むものではなく歌として歌うものだったということを表しています。
さて決闘するとは言ったもののハダドには武器がありません
そこで南の方角から来る神々の武器職人のコシャル=ハシスに武器を作ってもらうことにします
バアル=ハダドやヤム=ナハル、コシャル=ハシスなど、ウガリットの神々は二つ名や別名というより
言われている両方が主な名前となっています 神話が対句法で歌われるため、他の神話よりも強調することが多かった
からでしょうか
コシャル「ハダドは嵐の神である。すなわちバアルは雨の神である」
ハシス「ならばバアルの武器は撃退する稲妻であり、ハダドの武器は追放する雷鎚である」
こうして撃退するヤグルシュと反発するアイムル、二本の雷鎚が彼に与えられました
トールがミョルニル一本、インドラがヴァジュラ一本、ゼウスがケラウノス一本だと考えると一本お得なのです
一方ヤムの剣もコシャル=ハシスが作ったもので確かに強いですが、ヤムの圧政中に作られたものだったので
コシャルがどんな武器にも手を抜かない達人だったとしても素材自体が粗悪だったりと工房の調子が悪かったりして
色々な事情が重なって新しい武器には叶わないことでしょう
ヤム「バアルはナハルにひれ伏すがいい!」
バアル「ハダドはヤムを撃退する」
ヤムはヤグルシュを叩き落とそうとしますがヤグルシュは相手に向かって飛んで行くので効果がありません
叶わないと悟ったかあえなく竜は逃走しようとしますが、その隙を狙ってヤグルシュが背中に直撃していきます
ハダド「バアルはリタンを追放する」
二本目の雷鎚がヤムの頭目掛けて飛んでいき、ナハルの眉間を打ち抜きました
ナハル「ハダドこそがヤムの王である!!」
その場に倒れ断末魔としてそう負けを認めたリタン。こうしてバアルが戦いに勝利したのです。
アスタルト「何も殺すことなかったんじゃないの。兄弟なんだし」
バアル「いや、でもなんか怖いじゃん」
アナト「でもこれでお兄様が王ですよ!やったね!」
アスタルト「あ、そうか、わーい! じゃあその死体バラバラにして海に流しちゃえ。復活したら怖いから」
バアル「えーっ、復活するの?」
さて王になったバアルですけれども、あれだけバアル擁立に乗り気だった神々はなぜだか言うことを聞きません
そもそも神々はヤムが嫌だったから代わりにバアルを押し上げただけでした
それにバアルにはヤムやその兄弟のような、つまり天の神々が持つべき素晴らしい宮殿がないのです
ですから屋敷を作るためにアシェラトに許可を取りに行く必要がありました
アシェラト「おお!我が愛しの息子ちゃんよー!」ぎゅー
バアル「く、くるし」
アナト「お母様! バアルに屋敷を作る許可をください! ハダドには兄弟たちのような家がないのです」
アシェラト「あーそんなのコシャルに頼めばいいじゃない。あっ、でもヤムちゃんの対策しないとね」
バアル「やっぱり復活するんだ……」
カナン人の世界観に永遠の生は存在しませんが、同じように永遠の死も存在しないのです
ましてや世界各地でしつこく再生する蛇神の部類です 生き返らないはずがありません
コシャル「7日掛かるけど、なんで窓をつけようとしない」
バアル「絶対いらない」
ハシス「天の神が窓をつけないなんて話があるか」
ハダド「リタンが絶対入ってくる」
コシャル「絶対いるって言ってくるようになるからな」
バアル「ないない」
ハシス「じゃあ海岸行って来い。いいものあるから」
ハダド「海岸? わかった」
こうしてバアル・ハダドは海岸に向かいます。そこに置いてあったのは大きな檻でした
中には復活したリタンがお酒に釣られて捕らえられています。
アナトとアスタルトがコシャルに頼んで作らせておいたのです
リタン「笑えよ」
バアル「ざまぁ」
こうしてバアルはもう一度リタンを討滅して宮殿に戻りコシャル=ハシスに「窓をつけろ」と言いました
>>10
デュランダルの話ですか
怒りに狂う神が一人いることを覚えていますか? 自分が擁立していたヤムが負けてしまった父神エールです
すっかりバアルが王となってしまったのでエールは老いた神として地の果てへ隠居してしまいます
ですけれども、これは実のところ別の理由があり、すぐ帰ってくることになるでしょう
なぜなら彼はヤムによって抑えられていた彼に会いにいったのですから……
エール「バアルを打ち破れ。モートよ」
モート「おぉ! ついに大神エールに愛される時が来たのです!」
エール「そうだ、全ての生命はお前の食事だ」
モート「父神エールの申し付けとあらば、この乾季、喜んで王となりましょう」
こうしてモートの使いで分身であるリタンがバアルの元にやってきました
ヤムのリタンが水の蛇ならモートのリタンは炎の蛇であり、アンラ・マンユとアジ・ダハーカの関係に近いでしょう
リタン「我が屋敷へ招待しよう。我が弟バアル」
バアル「モートの屋敷だと! ふざけるな!」
水ドラゴンであったヤムには雷が等倍でも、炎ドラゴンのモートには効果がいまいちのようです
リタン「招待されたのなら来るのが王としての責務だろう?」
そうしてバアルはモートの屋敷に向かいました……
モート「どうしたバアル、入ってこないのか」
バアル「おぉ!我が兄モートよ、どうか許していただけないものだろうか」
モート「許す? 私が許すべきことなど何もない。私とお前があったのはここが始めてだろう?」
バアル「私は敬愛なる兄モートに贈物を用意する手はずを整えている!」
モート「ここまで呼びつけておいて食事の一つも出さないのは面目ない。むしろ私、モートが贈り物をするべきだろう」
バアル「……わかった」
モート「そうだ、それでいい我が弟よ。そして貴様に死の贈物をしてやろう。その返しとして貴様は臓物を贈物にすればいいのだ」
死そのものであるモートの屋敷は冥界そのものである。あぁ、バアルは今まさにモートの胃を下っているのだ。
豊穣神が死に、乾季が王となったため、地上の生命は衰退していきます
人間たちは死を恐れる余り死そのものであるモートを信仰することによって死から逃れようとします
こうして乾季の時代が訪れたのです
さてモートは生命を食い漁るのに夢中でそこら辺の草原をブラブラと散歩しているので
サフォンの頂の王座はいつも空っぽになっていました
アシェラト「バアルが死んでしまったのなら、次の王を建てないと行けない」
エール「誰か代わりがいるとでも」
アシェラト「アスタルはどうでしょう。彼は強くバアルに匹敵するでしょう」
アスタルは元々金星の神でアスタルトの男神版でしたが、灌漑の神の性質もありました
そのためバアルの恵みの雨の代用としては至極全うな選択だったのです
ですけどあくまで代用品、本物の雨には遠く及びません
アスタルは王座に座ってみたのですが、背が小さく頭が届かなかったのです
そのためアスタルは神々の王になるのを諦め、地上の王となったのです
アスタル「ショックです!」
ダゴン「あーやっと新しいの来たよ」
この神話がいわゆるルシファーの堕天物語につながってると言う話もありますが定かではありません
さてエールですがアスタルのザマを見て、バアルにモートをけしかけるべきではなかったと考えました
エール「バアルこそが王にふさわしかったのだ!!」
創造主もこうなってしまえば喪に服すしかありません。エールは自分の行いを悔やみました
一方バアルがいなくなってしまったため正妻であるアナトは各地を放浪していました
すると曠野でバアルの仇であるモートに遭遇してしまいます
アナト「兄様はどこにいる」
モート「さぁ、私の知らないところだろう」
アナト「兄様をどこに隠した」
モート「さぁ、自分の胃の中は自分では見れないからな」
アナト「そうか」
アナト「じゃあ死ね」
一触即発、アナトはモートに掴みかかると心臓を突き刺し、身を引き裂き、大地に撒き散らします
虐殺者を殺せば死人が減るように戦神であるアナトは死そのものを殺して死を止めることができたのです
ですけどモートの身体の中にはバアルはいません。バアルの身体は地の裏側、冥界の奥にあるのです
アナトはハダドの名を叫びます。バアルの名を呼び続けます。
見るに見かねた神が彼女の前に現れました。太陽の女神、シャプシュでした
シャプシュは西に沈み地の裏側を通って東から現れます。彼女は冥界でバアルの死体を見つけていたのです
シャプシュ「連れてきた。本当はボクは地上に手だしてはいけない約束であるのだけれど」
こうしてアナトの背中にバアルの遺体が載せられました
アナト「おぉ我が長姉シャプシュよ。共にバアルの墓を建てるのだ」
バアルはこうしてサフォン山に葬られました
バアルとモートが死んで7年後、アナト達は夢を見ました
それは乾いたはずの川の流れが復活し世界に生命が満ち溢れる夢です
バアルが復活すると言う予知夢だったのです
バアル「ただいまー」
アナト「兄様ぁあああああ!!!」ぎゅー
アスタルト「さすが弟くん!」
エール「すまなかったバアル。お前が王にふさわしかったのだ」
バアル「いや、まだ早い」
アシェラト「っていうと……」
モート「ただいまー」
エール「えっ」
バアルが雨季ならモートは乾季、夏と冬は交互に来るものです
ましてや中の兄弟であるヤム=ナハルも復活したのです
死と再生を司る無限の蛇の兄弟達、その戦いは終わってないのです
さぁラストスパートです 乾季と雨季の戦いは繰り返されます
バアル「バアルが倒れた、しかりハダドが倒れた」
モート「次はモート」
バアル「バアルが死んだ、しかりハダドが死んだ」
モート「次はモート」
バアル「バアルが討たれた、しかりハダドが討たれた」
モート「次はモート」
バアル「バアルが葬られた、しかりハダドが葬られた」
モート「次はモート」
バアル「バアルが破られた、しかりハダドが破られた」
モート「次はモート」
バアル「バアルが殺された、しかりハダドが殺された」
モート「次はモート」
バアル「バアルが消えた、しかりハダドが消えた」
モート「次はモート」
シャプシュ「いい加減にしなさいモート! もういいでしょう!」
モート「我が双子シャプシュよ! 何故止める!」
シャプシュ「これ以上の勧告を無視した場合、ボクは最大の炎を持ってして貴方の屋敷である冥界を光で焼き払うことになる!」
モート「それは……!! いや、わかった。このままだと戦いは永遠に終わらないようだからな」
シャプシュ「おめでとう。バアル」
バアル「ありがとう、太陽の女神。キミにはなんでもあたえよう」
シャプシュ「いいのです。ボクは均衡を保つ者ですので」
シャプシュはメソポタミア神話のアッカドのシャマシュと同語源であり、シャマシュは盟約の神です
他にもユーラシア全体に伝わる太陽神ミトラも契約の神であり、代行の天使メタトロンの前身とも言われています
ならばカナン本来の太陽の女神シャプシュもきっと均衡を取り持つ裁判官なのでしょう
さてこうして偉大なるバアルが全員に認められた王となりました
ですけどモートやアスタルを信仰していた時期があった人間たちを許せない神が一人
アナトは晴れて王となったバアルの祭儀の間も心が踊りません
ホイホイと信仰を変える人間たちのことを本心からは信じていないのです
アナトはバアルの妻ですが処女神なのです。処女膜の有無の話じゃありませんよ
つまるところ貞操観念の話であり性欲に溺れず自分の夫だけを愛すると誓えるのが処女なのです
さてアナト、自分の神殿に戦神である自分を信奉する兵士達を招いたはいいものの
彼らの執り行う祭儀にやることなす事が全部気に食わないのです
モートの時と同じように、ふっと彼女の中で何かが切れました
アナト「100!」
アナト「500!」
アナト「1000!」
次々と、数え切れなくなるまで兵士を殺していくアナト
人間の脂肪で身体を洗い、人間の血液で髪を洗い、彼女の心を満たしていきます
ですけどバアルはそんなことをよしとしません。豊穣神なのですから
バアル「バアルの敵であるナハルを倒し、ハダドの障害であるリタンを倒し、王の仇であるモートを倒したアナト」
バアル「キミの戦いの役目は終わった。今度は私と共に豊穣神として愛を振りまいていこう」ぎゅうっ
アナト「……はいっ! 我がバアルであるハダドの命ずるままに!」ぎゅー
こうしてセクメトがバステトになったように、カーリーがパールヴァティに戻ったように
アナトもまたバアルの妻として、全ての人間の王の母になったのです
バアルとアナトの子ども達、つまり人間の王の話はまだまだ続くけど
ウガリットの神々の神話はこれでおしまい
ヤハウェ「俺が出てないぞぉおおおおおおおおお」