内容はスレタイ通り
自分の家系や土地にまつわる話 冠婚葬祭などの習慣について語りましょう
身バレしない程度のフェイクは可ですがあまり誇張して嘘臭いのは不可
学術資料とまではいかなくても歴史学や風俗学の参考になるようなお話が聞きたいです
内容はスレタイ通り
自分の家系や土地にまつわる話 冠婚葬祭などの習慣について語りましょう
身バレしない程度のフェイクは可ですがあまり誇張して嘘臭いのは不可
学術資料とまではいかなくても歴史学や風俗学の参考になるようなお話が聞きたいです
(もうだいぶ昔の話になります 記憶が曖昧で記述がおかしい所もあると思いますがご容赦を)
俺がまだ幼稚園に行っていた頃の話
父の実家に行くと祖父がいろいろな事を教えてくれた
その内容は幼稚園児に教えるような内容とはほど遠く
罠の仕掛け方や獲物の捌き方
縄の編み方や竹や蔓でカゴを編んだりする手順だった
叔父は「外孫にそんな事を教えても無駄だ」と止めるように諭していたが
男の初孫と言う事もあり叔父の意見は無視して
祖父は俺が訪ねる度にいろいろな事を熱心に教えていた
俺が2年生になって荒縄くらいは普通に編めるようになってきたある日
「お前が独り立ちしたら剣(つるぎ)を作れ 作り方は俺が教えてやる」と言った
「剣てなに?」と聞くと
「山で使う道具だ 山包丁とも言う」
その時はへぇと言う感じで半分聞き流していたがそれからしばらく経って
俺が中学生の時に祖父は亡くなった
もうその頃は同級生と遊んでばかりで祖父の所へは殆ど行ってなかった
祖父の葬儀は当時でも珍しい土葬で後で分かった事だが祖父の強い希望だったと聞いた
葬儀が終わり忌中払いの宴会の席で俺は山包丁の事を叔父に聞いた
「爺さんがこんな事言ってたんだけどさ 詳しい作り方は聞いてないんだ おじさん知ってる?」
「あれは爺様の家の古い習慣だ 今更お前がやる事じゃない」
叔父は不機嫌そうにそう言った
「じゃあ本家なら知ってるかな?」
そう言う俺に叔父は突然怒鳴った
「本家なんかに行くな!俺たちが行っていい場所じゃないんだあの家は!」
宴会の席が静まり返って祖父の兄弟たちは気まずそうに下を向いている
俺は父親に引きずられるようにして宴席を後にした
叔父のあまりの剣幕にこの話はそのままになってしまったが
それから10年あまり 俺が結婚を決めて相手方の父親と飲んだ時の事
「君の家はどこがルーツなんだ?ウチは長野の山奥に先祖がいて木こりの家系だと聞いているよ」
そういえば・・・ 祖父の教えてくれた事は山仕事の事そのものだ
その事を相手方の父に話すと
「ははっそうか ウチと似たような家系なんだな」
その時はそれで話が終わったのだがある事に気が付いた
(あれ?本家って倉があって武具とか刀がいっぱいあるって聞いた事あるぞ?)
小学校に同じ苗字の先輩がいてその子は俺を弟のように可愛がってくれた
長男で上の兄弟が欲しかった俺も姉のように慕っていて昼休みには話し込んだりしていたが
その時に教えてくれたのがその倉の話だった
しかしあの時の叔父の剣幕といい親戚付き合いが全くと言っていいほど無かった
(葬儀ですら行き来が無かった)件といい本家に行く気にはならない
そして次の週 平日に休みを取った俺は車で1時間の県庁所在地にある県立図書館で史書を読み漁った
2時間掛けて調べて4冊目の○○風土記の解説書に俺の探していた記述が見つかった
××地方の豪族○○氏の家来 □□八騎と呼ばれる者の中に特に弓に優れた△△と言う一族がおり
近隣の豪族からの侵略の度に活躍し敵を寄せ付けずその働きは鬼神さながらと伝わる
△△は俺の苗字だし××地方は祖父の家のある町の旧名
これが俺の先祖か・・・ しかしなぜそんな武士がカゴや縄の作り方を?
次に俺が向かったのは祖父の墓がある真言宗の寺
ここは俺の後輩の親が住職をしている
顔を見るなり笑顔で迎えてくれた住職
「おお久しぶりだな 墓参りか?」
「ええ今度結婚する事になったんで祖父に報告でもと」
「そうかそうか」
嬉しそうに微笑む住職
「それで来たついでって言うとなんですけどウチの△△家の過去帳って見せて貰えます?」
とたんに顔が曇る住職
「ああ過去帳か・・・ あれは本家の家長か跡取りにしか見せられないんだ すまんな」
「そうですか分かりました じゃ線香あげて来ます」
何か隠しているなと直感したが住職にも都合があるはず
食い下がらないで素直に引いた
線香をあげながら祖父の墓の前でつぶやく
「なあ爺さん・・・ あんた何者なんだよ・・・」
次に向かったのは町役場
住民課で戸籍謄本の写しを請求する
「祖父の代までお願いします」
そう言って書類を差し出すとしばらくして課長?らしき人が対応する
「あなた△△家の分家の・・・ A君だよね?」
「そうです」
「なぜこの謄本を?」
「祖父の事を知りたくて」
課長はしばらく考えてからぽつりと言った
「Bちゃんには絶対に内緒にしてくれるなら出しますよ」
思わぬ所で叔父の名前が出る
黒幕は叔父なのか?
「くれぐれも他言無用でお願いしますよ」
「ああお金はいいです 証拠が残っちゃうから」
そう苦笑いしながら課長は封筒を差し出した
封筒の中身を見るのが怖くてその写しを見たのは次の日だった
その写しにはこんな記述があった
大正○年 婚姻により●●を△△家の戸籍に編入
え? 爺さんて婿養子だったのか?
だから武士からぬ仕事と言うか技術を持ってたんだな・・・
しかしいくら昔だからって婿養子ってだけでこんなに嫌がられるものか?
ますます謎は深まる
俺は写しに書いてある祖父の実家に向かう事にした
場所は県内にある山の近く 山岳信仰で修験者が集まる場所としても知られている山だ
その家は山の麓の竹やぶの隣にあった
「こんにちは・・・ あの・・・」
「おやいらっしゃい なんのご用かね?」
にこやかに話すお婆さん この人は俺の親戚なんだろうか?
「あの ここから××に養子に行った●●って人の事を聞きたいんですが・・・」
ちょっと怪訝そうな顔をして俺の顔を見る
「あんた・・・ ●●の孫かい?」
「そうです」
「そうかそうか じゃあいいかね お茶でも飲んで行きなさい」
警戒を解いたように笑顔になるお婆さん
俺は座敷に通されてお茶を勧められた
「私は●●の姪だよ 葬儀には行かなかったから会うのは初めてだね」
そうして俺の家系の謎解きが始まった
「で 何を聞きたいんだね?」
俺は本家と断絶状態の事 叔父や住職が何か隠している事
その隠蔽は町役場にまで及んでいる事を話した
お婆さんはため息をつきながら話を始めた
「まあ仕方ないよ あんたの本家は大昔からあの土地に住んでる旧家だ」
「そこへウチみたいなどこの骨とも分からんような男が婿に行ったらそりゃぁ嫌がられるからねぇ」
「それにウチは明治になってから戸籍を作ったような家だから」
「それまでは山で狩りをしたりして里には近づかなかったような家だったらしいからねぇ」
「明治維新の時に幕府と改革派が争った時期があったでしょう?」
「あの時にはウチの一族も多少関わってたようだから昔のお侍さんの家はずいぶんウチの事を恨んでいたと思うよ」
「おそらく●●はそういう事を隠して婿に入ったんじゃないかねぇ」
「それが後になって分かったもんだから断絶されちゃったんだと思うよ」
謎が解けた・・・ だが最後に残った謎がある
「ああ山包丁かい? あれは半分お守りのようなもんで所帯を持ったら自分用の物を作るのさ」
「形? なんだろうねぇ 神様がぶら下げてる両刃の剣みたいな奴だね」
「あたしの親も持ってたけどお棺に入れて埋めちゃったからここにはもう無いよ」
「土葬? そりゃそうさ火葬じゃそんなもん入れたら焼けないでしょ」
その後も祖父の一族にまつわる話や今でも残る風習についていろいろ教えてもらった
「あんたは●●から山包丁の引継ぎをされてるんだからここもあんたの実家だよ」
「またいつでもいらっしゃい」
そして俺は家に帰ってから一本の大型ナイフを自作した
これは30年経った今でもお守りとして枕元に置いてある
そして現在
来年俺の娘が結婚する
もちろん娘にも祖父の血が流れているのだが
縄編みやカゴ作りは残念ながら興味が無いようでいくら教えても覚えようとはしなかった
だからせめてこの話を聞かせてお守りの山包丁を持たせて嫁にやろうかと思っている
あとは孫が男の子でこういう技術に興味を持ってくれればいいな と密かに期待している
~~終わり~~
面白かったけどほぼ3年前か