安価でSS書くわ ID:RPvPCEIS

22ジャストパイラー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 18:46:52.68 ID:RPvPCEIS

なつみちゃん「私、美味しかった……?」

ガキ「う、うん……」

なつみちゃん「そっか、良かった……。あ、そう言えば写真の男にはもう会えたの?」

ガキ「……うーん、わからない。あのカフェにいるジジイがそうかもって思ってたんだけど……」

なつみちゃん「カフェ?」

ガキ「あぁそっか、なつみちゃんはまだ行ったことないよな。行けばガリガリ君くれるジジイがいるんだよ、そのカフェに」

なつみちゃん「どうしてそのお爺さんが写真の男だと思うの?」

ガキ「見て、この写真」

なつみちゃん「?……赤ちゃんを抱いてる男がいるわ」

ガキ「その男の左手」

なつみちゃん「……ガリガリ君」

ガキ「そう……でもその男が持ってるのはソーダ味。カフェのジジイがくれるのはソーダ以外の味」

なつみちゃん「そんな、味が違うだけで別人だと決めつけるのは……」

ガキ「なつみちゃん……。ガリガリ君を食う奴ってのは『ガリガニスト』か『その他の有象無象』って決まってるんだよ……。ソーダ味以外は認められないんだ……」

なつみちゃん「そ、そうなの……」

ガキ「……」

ガキ「デートしよっか……」

なつみちゃん「……うん」

24ジャスパー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 19:26:36.06 ID:RPvPCEIS

ーーーーーーーーーー
次の日


カランカラン

ガキ「おうジジイ、今日も来てやったぞありがたく思いな」

マスター「……」

ガキ「あ?今日は客いねーのか」

マスター「……お前が来るようになってから客はめっきり減った」

ガキ「けっ、知るかよ。ほら、いつもの寄越しな」

マスター「……」スタスタ

ガキ「ジジイ、トイレ借りるぜー」

なつみちゃん「ちょ、ちょっと……!」

ガキ「あぁごめんなつみちゃん。ちょっとここで待ってて……」

なつみちゃん「……うん」

マスター「あれ……」

なつみちゃん「ガキならトイレよ」

マスター「……」

なつみちゃん「ちょっと!私の声が聞こえないの!?ねぇ!!」

マスター「わしのシコティにでもするかの……」

なつみちゃん「ふっふざけんなあああああ!!!」

ガキ「おう戻ったぞ。ほら寄越せ」

マスター「ちゃんと手は洗ったろうな」

ガキ「2ヵ月は洗ってねぇよ。関係ねーだろ」

マスター「なっ……!?まぁいいわ、ほれ」

ガキ「……」

ガキ「ジジイいい加減にしとけよ。これコーラ味だぞ。俺いつもなんて言ってるよ」

マスター「……嫌なら返せ」

ガキ「けっ……。気に入らねぇなその態度。いつか強盗に入ってやる」

マスター「……」

ガキ「じゃあな」

ドアバタン

マスター「はぁ……」

なつみちゃん「……いや私は?」

マスター「お主、あのガキのなんなんじゃ」

なつみちゃん「私の声聞こえてたの!?なんで無視したのよ!」

マスター「……」

なつみちゃん「また無視……」

マスター「買い出しに行く。お前もついてこい」

なつみちゃん「ついてこいって言うか、私をポケットに入れてくれないと……」

26ジャスパー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 19:58:34.17 ID:RPvPCEIS

ガキ「コーラ味ってのはガリガリ君の中で最も邪道だと思うんだよ」ガリガリ

ガキ「元来、ソーダとコーラは争いを繰り返してきた。20世紀、史上最も残酷と言われた三ツ矢戦争……。結局勝ったのはソーダだった」

ガキ「コーラはそれに屈することなく海外勢を手込めにして勢力を伸ばして……ってあれ?なつみちゃん?」

ガキ「うわぁ……カフェに忘れてきた」

ガキ「取りに戻っ……うっ……」クラクラ

視界が回る
ここにきて、極度の栄養失調がガキを襲う

ガキ「やべぇなこれ……」

ドタッ

ガキ「うっ……うぇッ……ゲホゲホッ」

ガキ(あぁクソ……)

もう、立つ力すら……
意識が暗闇に呑まれていく━━

ーーーーーーーーーー

なつみちゃん「ねぇ思ったんだけど、どうしてそんなにガリガリ君買うの?あなたがそんなに食べる訳じゃないでしょ?」

マスター「……」

なつみちゃん「おじいちゃーん!!聞こえてるー!?耳遠いってレベルじゃないよこれ……」

マスター「……息子との約束じゃよ」

なつみちゃん「あぁ聞こえてるのね。ちゃんと反応してくれないと」

マスター「息子は言った。『親父、いつかお前の店に俺の息子が現れる。そのときは、何も言わずに、ガリガリ君を与えてやってくれ』と」

なつみちゃん「……」

マスター「あと単純にわしが好きだから」

なつみちゃん「へぇ……」

マスター「さて、買うものは買った。あのガキもそろそろお主を忘れたことに気づく頃じゃろう」

なつみちゃん「ね、ねぇ。ガキはあなたの孫……じゃないの?」

マスター「……」

なつみちゃん「また無視ですか……」

マスター「……わしも迷っておる。が、あまりにも息子と似ていないんじゃよ。息子はもっと温厚な男じゃった……」

なつみちゃん「そうなの……」

マスター「……」

ーーーーーーーーーー

28ジャスパー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 20:27:14.05 ID:RPvPCEIS

なつみちゃん「あれ?ガキ来てるかと思ったけど」

マスター「……」

なつみちゃん「私、ガキにとってなんなんだろう……。トイレに行くからって置いていかれる程度の存在なのかな……」

マスター「……」

なつみちゃん「あんなに尽くした……ッ!あんなに尽くしたのに……。身も心もガキに弄ばれて……馬鹿みたいッ!」

マスター「……」

カランカラン

マスター「いらっしゃい。どうぞお好きな席に」

客「ブレンドひとつね。いやー、聞いてくれよマスター」

マスター「どうしたんです?」

客「今来るときに、物乞いのガキかな……。そこにぶっ倒れてるもんだから俺びっくりしちゃって」

なつみちゃん「!?」

客「あまりにもきたねぇ身なりしてるもんだからさ、そんまま放置して来たんだけど。いやー、この辺りも物騒になってきちまって……」

マスター「……そうですねぇ」

なつみちゃん「ちょっと!助けに行かなくていいの!?」

マスター「なんでわしが……。まだ孫だって確信もないのに……。ブレンド、お待たせしました」

客「ありがとう……。ふぅ、いやーやっぱこの味だなぁ!」

マスター「ありがとうございます」

なつみちゃん「……」

マスター「……」

なつみちゃん「……ひとつ教えてあげる」

マスター「……なんじゃ」

なつみちゃん「写真よ。ガキは一枚の写真をいつも大事そうに持っていた」

マスター「……写真」

なつみちゃん「その写真に映っていたのは、まだ産まれて間もない赤ちゃんと、それを抱き抱える初老の男性」

マスター「!?」

なつみちゃん「その男性が左手に持っていたもの……それがなにか、あなたならわかるはずよ」

マスター「まさか……」

なつみちゃん「わかったなら、早く助けに行ってあげて!」

ガタガタッ

客「お、おいどうしたんだい!?」

マスター「すみません……ちょっと出てきます」

客「出るってどこに……?」

マスター「わしの、たった一人の……」

孫に会いに━━

31ジャスパー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 20:55:11.58 ID:RPvPCEIS

マスター「はぁはぁ……!」

マスター(しまった、どこに倒れていたのか聞いておくべきじゃった……)

マスター「……ふふ」

マスター(大事な物事を忘れるところなんて、わしそっくりじゃないか……)

ーーーーーーーーーー

ガキ「……」

マスター「あ、あれは……!」

ガキ「……」

マスター「ガキッ!大丈夫か!?」

ガキ「うっ……うぅ……。なんで、てめーが……」

マスター「黙っとれ……。とにかく、わしの店に……」

ガキ「うっゲホゲホッ!……あぁ」

マスター「……」

こんな状況なのに、わしは嬉かった
ガキの手に握られたしわくちゃの写真
背中に感じる、確かな重み

マスター「わしの知らん間に、こんなに大きくなりおって……」

ガキ「……」

マスター「すまんなぁ、もう少しはやく気づいていれば……」

マスター「……ガキ、もう少しじゃ、頑張れ……!」

ーーーーーーーーーー

カランカラン

客「おっおいマスター!そのガキは……」

マスター「……はぁはぁ」

なつみちゃん「大丈夫なの!?はやく治療を……!」

マスター「大丈夫じゃ……。わしの家系がこういうときに食べるもの……」

なつみちゃん「ガリガリ君……。コンポタ味……」

マスター「こうして、細かく砕いて口の中に放り込めば……」バリバリ

ガキ「……うごほォッ!ゲホゲホッ!オゲエェエエ!!」

なつみちゃん「これじゃ駄目……!やっぱりソーダ味じゃないと……! 」

マスター「くッ……!コンポタでは力足らずだったか……」

なつみちゃん「だ、だからソーダ味を……!」

マスター「それは駄目じゃ!ソーダ味は体に与える刺激が強すぎるッ!それにわしが風呂上がりに食べようと……」

なつみちゃん「そんなこと言ってる場合じゃ……」

ガキ「……大丈夫、だ……」

マスター「!?」
なつみちゃん「ガキ!?」

ガキ「俺は、ソーダ味に……耐えてみせる……」

ガキ「だから……構わず……うっゲホゲホッ!」

マスター「クッ……わかった……!」

マスター「頑張れ……!頑張って……耐えてくれぇ!」バリバリ

ガキ「うっウゴオオオアアアアアッ!アアアアアッ!!アァアアアアアッ!!!」

なつみちゃん「ガキ……頑張って……!」

ガキ「アガアアアァァアアアア!!ンギョエエエエアアアア!!」

マスター「……クッ」

頑張れ
頑張れガキ……!

33ジャスパー◆3VwoWSjoHw:2015/03/11(水) 21:09:21.73 ID:RPvPCEIS

ーーーーーーーーーー

カランカラン

マスター「いらっしゃ……」

ガキ「おうジジイ!今日もこんなシケた店でシコシコなにやってんだぁ?」

マスター「……ジジイはやめろと言っておろうが」

ガキ「うるせーや。お、なつみちゃん!そろそろ新しいなつみちゃん持ってこないとなぁ」

なつみちゃん「そうね、残り二枚よ」

ガキ「……」

マスター「……」

なつみちゃん「……」

ガキ「おいジジイ、なにボケッとしてんだよ。俺は今最高に腹へってんだ」

マスター「……はぁ。お主本当にわしの孫か?もう少し言葉遣いをだな……」

ガキ「あの写真見りゃわかるだろ。言葉遣いも直す気ねーよめんどくせぇ」

マスター「……ちょっと待っとれ」

なつみちゃん「お爺さん、本当に嬉しそう」

ガキ「そう?俺にはいつものジジイにしか見えないけど」

マスター「……ほれ」

ガキ「……おいジジイ」

マスター「なんじゃ」

ガキ「そうそうこれだよこれ!俺がずっと食いたかったの」

マスター「ふんっ……」

『ガリガリ君の、ソーダ味!』

おわり


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