なつみちゃん「あれ?ガキ来てるかと思ったけど」
マスター「……」
なつみちゃん「私、ガキにとってなんなんだろう……。トイレに行くからって置いていかれる程度の存在なのかな……」
マスター「……」
なつみちゃん「あんなに尽くした……ッ!あんなに尽くしたのに……。身も心もガキに弄ばれて……馬鹿みたいッ!」
マスター「……」
カランカラン
マスター「いらっしゃい。どうぞお好きな席に」
客「ブレンドひとつね。いやー、聞いてくれよマスター」
マスター「どうしたんです?」
客「今来るときに、物乞いのガキかな……。そこにぶっ倒れてるもんだから俺びっくりしちゃって」
なつみちゃん「!?」
客「あまりにもきたねぇ身なりしてるもんだからさ、そんまま放置して来たんだけど。いやー、この辺りも物騒になってきちまって……」
マスター「……そうですねぇ」
なつみちゃん「ちょっと!助けに行かなくていいの!?」
マスター「なんでわしが……。まだ孫だって確信もないのに……。ブレンド、お待たせしました」
客「ありがとう……。ふぅ、いやーやっぱこの味だなぁ!」
マスター「ありがとうございます」
なつみちゃん「……」
マスター「……」
なつみちゃん「……ひとつ教えてあげる」
マスター「……なんじゃ」
なつみちゃん「写真よ。ガキは一枚の写真をいつも大事そうに持っていた」
マスター「……写真」
なつみちゃん「その写真に映っていたのは、まだ産まれて間もない赤ちゃんと、それを抱き抱える初老の男性」
マスター「!?」
なつみちゃん「その男性が左手に持っていたもの……それがなにか、あなたならわかるはずよ」
マスター「まさか……」
なつみちゃん「わかったなら、早く助けに行ってあげて!」
ガタガタッ
客「お、おいどうしたんだい!?」
マスター「すみません……ちょっと出てきます」
客「出るってどこに……?」
マスター「わしの、たった一人の……」
孫に会いに━━