とある観光地で電車に乗ったときのこと ID:vvFBupmR

1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/30(月) 01:09:24.99 ID:vvFBupmR

ちょっと車内を見渡せば空いてる席もあったんだろうけど、べつに疲れてるわけでもないし立つことにしたんだ
立ってる人は他にもいて、俺の隣にはひとりの若くて細身の女性が旅行雑誌を読みながら立っていた 雑誌のページはスイーツの特集だったな
書いたとおり、車内は空いてるってわけじゃなかった かと言ってすごく混んでるってほどでもなかったんだ
だから彼女と俺の距離は一歩か二歩くらいはあったよ 少なくとも物理的にはね

彼女のことを俺は(甘いものの食べ歩きでもしてんだろうな~かわいいな~ぐへへ)なんて思いながらちらちらと盗み見ていたんだけど、その子は全然顔を上げないんだ それくらい雑誌に没頭していたんだな
そんな彼女の様子はいじらしくて、とても魅力的だった 俺は是非ともそのご尊顔を拝したいと思い始めたんだ

だがやはり、彼女は雑誌の抹茶スイーツに見入っている
俺はだんだんとそのスイーツ及び写真、ひいては雑誌そのものを憎く思うようになった たかが雑誌のくせに彼女を独り占めしていることが許せなかったんだ

3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/30(月) 01:22:24.81 ID:vvFBupmR

俺はどうしても彼女の顔が見たかった そのためにはその旅行雑誌が邪魔だと思った
とはいえ、こんな公共の場で見ず知らずの女性から雑誌を奪い取って引きちぎるわけにはいかない
そんなことをすれば彼女は悲しむだろうし、なにより俺は旅行雑誌に見入る彼女に惹かれていたんだから


そんな彼女と雑誌と俺の複雑な三角関係を乗せたまま、電車は次の停車駅に差し掛かった
当然ブレーキがかかるわけだけど、俺はつり革に掴まっていたからどうということもなかった
ところが、彼女は旅行雑誌に夢中だったもんだからバランスを崩しちゃったんだな そのまま俺に寄りかかってきたんだよ

彼女が体勢を立て直すのに3秒くらいかかったと思う
その間ずっと身体がくっついていたわけだけど、その時の俺の気持ちをどう表現しようか
言うまでもなく俺は童貞だし、異性の友人なんていたことがない 女性に対する免疫なんて皆無だ
にも関わらず、彼女の身体は慣性に任せて俺にどんどん密着してくる
そんな状況で彼女を見る余裕なんて精神的に無いし、むしろ「今すぐ避けたい」と思っていたけど、なんとか3秒間耐えきることができたんだ

体勢を持ち直した彼女は急いで俺から離れた 少しの間俺のことを見ていたように思うけど、俺は明後日の方向を見ていたから確かなことはわからない

5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/11/30(月) 01:25:43.22 ID:vvFBupmR

再び電車が動き出したときには彼女はすでに雑誌を読み始めていた
俺は彼女を盗み見ることをやめて、窓の外を眺めることにしたんだ さっきの彼女の肩の感触を思い出しながらね


彼女は俺より先に電車から降りた 俺は彼女の顔を知ることはできなかったのさ


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