>>3の続き
● 鉱工業生産指数も伸びていない 輸出は量的拡大をもたらさなかった
今回の景気拡大期で、輸出が量的拡大をもたらさなかったことは、図表7の鉱工業生産指数の推移を見ても確かめられる。
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2000年代の景気拡大期では、鉱工業生産指数が顕著に増加した。しかし、今回はほとんど増加しなかったのだ。
詳しく見ると、つぎのとおりだ。
前々回の景気拡大期の鉱工業生産指数は、02年の97.5から07年の114.6まで、17.5%増加した。
それに対して、今回は、12年の97.8から16年の97.7まで、ほとんど一定、ないしは若干の低下だった。17年には102になったが、それでも、12年から4.3%増加したにすぎない。
つまり、前々回の景気拡大は、生産の増加という量的拡大を伴うものであったのに対して、今回の景気拡大では、量的拡大がなかったのだ。
以上から得られる結論は、つぎのとおりだ。
いざなみ景気と呼ばれる前々回の景気拡大期では、輸出の増加が製造業の売り上げを増加させた。これによって、経済の量的拡大効果が生じた。
それに対して、今回の景気拡大期では、輸出の増加が製造業の売り上げを増加させた効果は認められない。
ところで、以上で見たのは、売上高や売上原価である。一方、株価に影響を与えるのは、営業利益だ。
この点については、さらに立ち入った分析が必要だ。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
(了)