>>6 続き
「除染実習は認めない」
「自分の体がどうなるのか、とても心配です」
18年春、カインさんは東京・上野公園で開かれた外国人労働者の支援集会の壇上で「告発文」を読み上げていた。支援者らに背中を押され、リスクを知らされずに除染作業に従事していた経験を告白したのだ。
このスピーチから間もなく、新聞やテレビが「除染実習生」と大々的に報じた。国も重い腰を上げ、「除染作業は技能実習の趣旨にそぐわない。これからは除染作業を含む実習計画は認めない」と宣言した。
法務省は、実習生を受け入れている他の監理団体に対し、カインさんの実習先を探すよう依頼。昨年8月に、大手トンネル施工専門の建設会社に迎え入れられた。
仕事は、三陸海岸の宮古市と盛岡市を結ぶ新道路のトンネル工事。現場から車で5分ほどの宿舎で、他の従業員約20人と寝起きした。うち8人がカインさんらベトナム人実習生だった。「専門の日本語を覚えるのが難しかった」
実習生としての満期である18年9月下旬まで、わずか2カ月だったが、忘れられない思い出もできた。同宿の40歳代、50歳代の日本人とお酒を酌み交わした。彼らにとってカインさんは息子と同世代。カインさんが交際しているベトナム人実習生の女性の話などで盛り上がった。
上司だった男性は「仕事も分からないなりに一生懸命やってくれた。またぜひ、うちで働いてほしい」と懐かしむ。
(続く)