>>1の続き
――その現状を改善するために、企業は何をすべきだとお考えですか?
これまでもこれからも、企業は経済の要となる存在です。そこに変化はありません。先ほども申し上げた通り、問題の一つは、CEOの報酬がどんどんと上がってきていることです。かつては労働者平均の20倍から40倍程度でしたが、いまでは200倍から300倍にまで膨れ上がっています。CEOのみならず、バイスプレジデントなど経営陣全体の報酬が上がっているため、そのコストは膨大になりました。
そうした企業が、新規市場において、CEOの報酬がそこまで高額でない企業と競争しなければならない。すると結局は、とにかくいまのシェアを拡大するという方向に向かいます。まずは、経営陣に対して報酬の適正化を図る必要があります。より安価な給料でも同程度の仕事をこなしてくれる人がいるのではないか、といったことも考えなければならないでしょう。
また、これまでの企業は株主のことばかり考えて、それ以外のステイクホルダーを無視してきたと思います。米国のビジネススクールは、間違ったことを教えてきたと認めなければいけません。ビジネススクールでは、企業の収益性を最大化しろ、そのためには従業員、サプライヤー、ディストリビューターにはできるだけ支払いを少なくしろと教えています。しかし質の高い従業員、サプライヤー、ディストリビューターにさらなる報酬を支払えば、製品もビジネスもよくなるのが現実なのです。だからこそ、日本企業は株主中心ではなくて、あらゆるステイクホルダーとの関係構築により力を入れてほしいと考えています。
そのために企業は、マーケティング理論をより経営に取り込んでいく必要があります。マーケティングとは極めて戦略的なものであり、どの市場でどの製品を投入すべきなのか、その時の価格帯は、流通はどうするかを、包括的に考えるべきものです。しかし、現在のマーケターはトップの経営陣の中で意思決定をしておらず、「この製品をもっと魅力的なものに」「広告をうまくやれ」「コピーを洗練しろ」と、コミュニケーションばかりに目を向けています。それではマーケティングの本来の力が失われるのは当然でしょう。
私は、CFOやCOO、CIO(チーフイノベーションオフィサー)と同じくらいCMOを生み出し、彼らを上級経営陣の中に入れることを提案します。そして製品をつくるときには、売り方だけではなく初期段階から関わらせるべきです。財務のことばかりをやるのは、マーケティングではありません。
後編更新は12月11日(金)を予定