2020年☓☓月☓☓日(火曜日)
「まー君!まー君!電球切れたから新しいの買ってきて!」
そんな母の声で目を覚ました。
今日の仕事終わりに電気屋に寄って電球を買って帰ると母に伝えて家を出た。
ー20:30
疲れた身体にムチを打ち遠回りして電気屋に向かう。
全国チェーンのカマダ電気は人で溢れていた。
数年前からネット通販が流行り電気屋に人が溢れているなんて何年ぶりの光景だろうか。
(早く買って家に帰ろう)そんな気持ちからか足取りも速くなる。
「白熱灯・・・白熱灯・・・」
我が家では昔から同じメーカーの白熱灯を使っていて同じものを探していたが見つからない。
どこにもない。
現総理大臣安倍晋三の笑顔の写真の載ったパッケージのLED電球が大量に並ぶ。
パッケージには『LED電球 TORIMOROSU』と書かれている。
製造は日本帝国電気會社だ。
いつもの白熱灯でなければ母が激怒するだろう。
店員に聞く 「マショマルの白熱灯はありませんか?それが良いんです。」
「あー、もう製造していないんですよ。今あるのは日本帝国電気會社のLED電球だけです。」
俺は絶望した。
母に激怒されるのはもちろんだが自分もマショマルの電球が気に入っていたからだ。
小さな頃に母と一緒に電気屋に行って買ったのもマショマルだった。
ついでにゲーム買ってくれたこともあった。
夕日に照らされた帰り道を母と手を繋ぎ近所の家から漂ってくるカレーの匂いに包まれながら帰った幸せの日々。
全てが否定された気分だった。
「安倍晋三許すまじ」
俺は愛用のカシオのビンラディンモデルで爆弾を作りそのまま国会に向かって歩いた。
「お母さん今までありがとう・・・マショマルの白熱灯は買って帰れないけど代わりに俺が国会から大きな光を灯すよ」
ー完ー