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ドイツの頑な姿勢にギリシャは完全敗北
(中略)
支援延長の条件は、ギリシャ側が構造改革案を提出し、EU各国がこれを承認するというものだが、その中身はドイツが要求していた
ものがほぼそのまま採用されたと言われている。税務官出身で法学博士でもあるドイツのショイブレ財相が頑として首を縦に振らず、
ギリシャ側は実質的に100%の譲歩を迫られる形となった。
建前上はEUとギリシャの交渉だが、欧州メディアはストレートに「ドイツとギリシャの交渉」という書き方をしており、EUの意思決定権が
ドイツにあることを誰も隠そうとはしていない。
ユーロの恩恵をもっとも受けたのはドイツ
(中略)
EUはもともとフランスによるドイツの政治的な封じ込めを目的として作られたという側面がある。だが皮肉なことに、EU創設とユーロの
導入は、ドイツを欧州における盟主に祭り上げる役割を果たしてしまったようである。
戦後賠償を回避したドイツのしたたかな政治力
3月9日、ドイツのメルケル首相が日本を訪問したが、日本側は歴史認識問題をめぐって完全にドイツ側に翻弄された。あまり知られて
いないが、ドイツは厳密な意味で第2次世界大戦の戦後賠償は行っていない。ドイツは大戦後、米ソの対立によって東西ドイツに分裂
したが、西側諸国は1953年「ロンドン債務協定」を結び、最終的な賠償については東西ドイツの統一後、平和条約を締結するまで
棚上げにすることについて合意したからである。
(中略)
しかし、1990年に東西ドイツ統一が実現した時には、平和条約は結ばれず、代わりにドイツ最終規定条約が締結された。同条約に
おいては、戦争に関する問題はすべて解決済みという認識になっている。結局のところ、ドイツはその政治力を最大限駆使し、賠償を
行わずに戦後処理を事実上終結させることに成功したのである。
ドイツとしては、せっかく終了した戦後処理について蒸し返されたくないという思いが強い。日本政府要人による一連の歴史認識問題に
関する発言は、戦後の基本的な国際秩序を壊すものと映っている可能性が高い。同じ戦後秩序に対する認識といっても、敗戦国で
あったドイツのそれは、戦勝国であった米国とは大きく異なっている。こちらの事情も分かってほしいという、日本側の「思い」はドイツには
通用しない可能性が高い。
(中略)
ドイツが狙う次世代の産業覇権
(以下略)