(2015年3月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43238
欧州の航空機大手エアバスが、超大型旅客機「A380」の最重要顧客から要求を突きつけられている。
設計から就航までに十数年を要し、すでに数十億ユーロの資金が投じられている同機を改良する
のか否か、今月中に決断せよと迫られているのだ。
A380を最も多く運航しているエミレーツ航空のティム・クラーク社長は、座席数が500を超えるこの
世界最大のジェット機にもっと燃費効率の高い新エンジンを搭載するようエアバスに求めており、その
回答に期限を設けたと話している。
(中略)
A380を主力機に位置づけているエミレーツは、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるハブから
148都市に多数の乗客と大量の貨物を運ぶことで市場シェアを高めてきた。
しかし、A380のエンジンは1990年代後半に設計されたもので、新世代のエンジンに比べれば見劣り
する。エミレーツはA380を計140機発注したが、そのうち81機はまだ納入されていないため、これらの
機体では最新技術による大幅な燃費節減を図りたいというのがクラーク社長の考えだ。
「ここをちゃんとやれば、恐らくコストを10~13%も削減できる」とクラーク氏は語った。
しかし、エアバスはためらっている。この機種では新しい顧客の獲得に以前から苦労しており、今年に
入ってようやく現在の生産コストをカバーできるようになったという経緯があるため、さらに資金をつぎ
込むことには抵抗があるのだ。
エアバスのハラルド・ウィルヘルム財務担当取締役は昨年12月、新規の受注がなければA380の
生産を打ち切る可能性があることを示唆した。この発言は、数人の取締役が共有していると思われて
いる見方を反映したものだった。
実際に生産打ち切りとなれば、エアバスにとって大失態になるだけでなく、エミレーツの事業拡張計画
にとっても重大な制約条件になりかねない。この計画は、500人超の乗客を運べる超大型ジェット機を、
新たな航空機を受け入れる余裕が乏しいことの多い空港に飛ばすことに依存しているからだ。
(続く)