さて、何から話すべきか #15

15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2021/04/05(月) 17:04:23.98 ID:h8ZTXJnH

春うららかな、ある日、ある町、ある男
「…なんて美しい日だ」
二日ほど続いた雨は上がり、太陽の日差しが波のようにじんわりと町を温めている
花粉症に悩まされることのない俺は、ベランダに出て、葉の多くなった桜を見たり違う種類の鳥が会話しているのを聞き、心ほぐ自然への感謝を思いそんなことを呟いていた
今日みたいな一日を無駄にしてはいけない
にわかに沸き上がった感情は俺を足早に玄関に向かわせた
さっき食べた母さんの朝食のおかげかエネルギッシュな自分を感じる。これなら日中遊んでも大丈夫だろう
靴ひもをきつめに結んで外へと飛び出した
「まずはどこに向かうかなぁ」

   近所にある山

 ◎  駄菓子屋

「よし、駄菓子屋に行くか」
家から歩いて数分のところにある駄菓子屋「つんつん」
同級生の母がやっている店で昔から通っている
つんつんという名前は同級生の両親が小学生たちに親しまれるようひらがなにしたという以外は何も考えずなんとなくそうなった名前らしい
しかし俺にとってはこのつんつんにはもう一つ意味が込められているに違いないと思っていた
その意味というのがまさしく俺が今駄菓子屋の前で中に入れずウロチョロしている理由なのだ
「いないといいんだけどなぁ」
今日の天気ならどこかに遊びに行っていると思うんだけど
そう思いながら、俺は店のガラス戸をそろりと開いた
「いらっしゃいま・・・なんだお前か。きっしょ」
「す、すみません・・・いたんだ」
「なんか悪いの。私の家なんだから当然じゃん。それともひきこもりのあんたになんか言われる筋合いがあるわけ」
ありませんと頭を下げる
開口一番罵声を浴びせる彼女の名前は、木元若菜(きもとわかな)、同級生の女の子だ
家が近いので小学生の頃は登下校が一緒で両親も仲がいい、といわゆる幼馴染のはずなんだが
「早く帰れよ、家が腐る」
俺に対しての当たりがものすごく強い。というかいじめだこんなものは
「そ、そこまで言わなくても」
縮こまった体でそそくさと駄菓子を物色する。保育園の年長くらいまでは一緒に団子を作るくらいには仲が良かったのに
彼女がトラなら俺は雑草か小動物のフンだろう。今では生態ピラミッドが離れすぎて捕食もされずにただ怯えるだけなのだ
必要量のお菓子を若菜の座るレジ台に出す
「あ、あとラムネ一つください...」
ラムネは彼女の座るレジの横にあるガラス張りの冷蔵庫から取り出すのだ。どうやら電源がそこにしかないかららしい
いつもなら誰にでも優しい若菜のお母さんが世間話をしながら取ってくれるのだけど
「ちっ、めんどくさいわね、何本よ?」
「え?今、一つって...」
「ちっ!・・・まぁあんたいつも一人だし一つ以外ないわよね」
な、なんて酷いことを。今日の彼女はひときわ厳しいようだ。確かに普段から侮蔑の目を向けてきたり、無視されるのは間違いないが今日は異様だ
まぁいつも一人なのは合ってるけども!
だからか、なのにか、つい俺は人間にそっと吸い付く蚊のように彼女の琴線に触れる質問をしてしまった
「な、何かあったの?いつもより怒ってるみたいだね。へへ・・・」
後で母に聞いたがこの質問は怒っている人間には逆効果らしい
「うっさいわね、あんたに関係あんの?ゴミはしゃべらないからゴミでいられるのよ喋ればもう公害よ」
「あ、あ、ごめん」
「・・・友達と出かける予定だったのに母さんに店番頼まれたのよ。これでいいでしょ」
俺がよほどひきつった顔をしていたからだろう彼女が応

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