物語とか書いてみる #52

52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2017/01/09(月) 20:23:42.63 ID:AA+lQcYc

「大丈夫」と答えたので植え込みの方まで歩く。植え込みまであと一歩くらいの距離に来たところで成田が声をかけてきた。

「ねえ須藤」

 依然その声は弱々しい。振り向くと彼女は俺のすぐ後ろにいた。彼女は顔を下に向けたまま体をふらふら小さく揺らしている。

「呼んだか?」と聞くと、成田は何事かつぶやいた。しかし、あまりに小さい声なので聞こえない。「なんて言ったんだ?」

 成田に顔を近づけてその声を聞き取ろうとすると、ふいに彼女がその体を寄せてきた。そのまま俺に寄りかかるように体重を預ける。突如感じた彼女の体重は驚くほどに軽かった。

 彼女を抱き止めるかたちになってしまい、急激に頭に熱が上がる。ふわりと甘い香りがした。シャンプーの香りだろうか。それから彼女の息づかいが聞こえた。呼吸が浅くなっているのがわかる。温かくほっそりとした体は、力を入れれば壊れてしまうのではないかと思うほど弱々しかった。

「ど、どうした。なにやってんだ」慌てて問いかけると成田は今度は聞き取れるくらいの声で

「吐きそう」と言った。

 その言葉に頭の混乱が一気に引いていく。彼女は両腕の中で、その頭を俺の胸にもたれかけていた。これから彼女が何をするのか、変に冷静な頭で悟る。だがどうすればいいのかわからなかった。

「ちょっ、待て」

 俺が大声で言うと、成田は素早く身を引き、植え込みの上にかがみこんだ。その直後、彼女の口から何かが溢れだした。

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