カップが止まったのは5分ほどたったあとだった。くらくらする頭を押さえながらカップから降りる。若干気持ちが悪い。さすがに文句のひとつでも言おうかと成田を見ると、彼女もまた足元がおぼつかないようだった。顔色も良くない。見るからに調子が悪そうだ。もしかして今ので酔ったのではないだろうか。
「大丈夫か?」まさかと思いながら訊ねると
「ん、まあ」と顔を少しうつ向かせて答える。
声にいつもの快活さがない。どこへ向かうつもりなのか、彼女は俺を置いて歩いていった。だがどうも足取りが危なっかしい。右へ左へふらふらしている。急いで成田に追い付き
「どっか座るか?」と聞くと彼女は立ち止まって
「うん」とだけ答えた。
だが周りにベンチはないようだ。
「ちょっと歩かないといけないけど」
そう声をかけると、成田は再びそろそろと歩き出す。彼女の先を歩き、誘導するようにして座れる場所がないか探すことにした。
必要なときに限ってベンチがなかなか見つからない。しばらく歩いているうちに、いつの間にか開けた場所に来ていた。周りには人がおらず、遠くの方に連れだって歩く学生たちが見えるだけだった。
広場の隅の方に植え込みがある。根本のあたりが段差になっており、そこが座るのにちょうど良さそうだ。
「あそこまで歩けるか?」言いながら成田の方を向く。彼女はまだ調子が悪そうだった。