物語とか書いてみる #38

38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2017/01/08(日) 20:14:59.15 ID:7K8h533b

 確認が終わると、スタッフが離れる。機械の動くゴォーという音がして「神の対義語」が動き始めた。初めはブランコのように小さくゆっくり揺れていたが、それでも安全バーを強く握る。今でこそ揺れは小さいが、そのうちさっき見たようにとんでもない高さまで上がるのだ。そう思うと呑気に構えてなどいられなかった。

 徐々に振れ幅が大きくなっていく。それにつれて速度も上がる。座席は地面の近くをすごい速さで通り過ぎ、空中のある高さで一瞬止まる。そして乗客に浮遊感を与えながら再び地面に向かって動き出す。座席は一往復するごとに半周だけ回転している。

 乗る前から抱えていた緊張は、座席の到達する高さが高くなるにしたがってほぐれていった。乗り場の前の行列を見下ろすほどの高さに到達した頃には楽しいとすら感じていた。座席が回転しているため、動きが止まる度に違う景色が見える。真っ青な空が広がっていたり遊園地を歩く人々の姿が見えたりと、同じところを往復しているのに乗っていて飽きない。他の乗客のわーきゃー言う声も聞こえた。隣の席からは成田の声も聞こえる。ジェットコースターのように動きが予想できないわけではないから余裕がある。自然と「おお、すげえ」などとつぶやいていた。座席が水平の高さを超えたときには怖いと思ったが、どうしようもないというほどでもなかった。安全バーがあるおかげで安心してそのスリルを楽しむことができた。

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