作中では北島マヤの演技に観客が飽きずに通う、とされているけれども、実際にはそんな演技は二度目で飽きられる。通いつめて二度三度と見てそのたびに新たな細部に驚かされる、のが姫川亜弓の演技なのだ。
初めての共演となる「ふたりの王女」は非常にシンボリックである。
オーディションと役作りの過程で、引っ張るだけ引っ張る。「ふたりの王女」というこの劇中劇は劇としてつまらない。アルディスもオリゲルドもたいした役ではない。後の「紅天女」のぐだぐたの前兆である。
劇中、マクベスのパクリのようなシーンもあったが、ギリシア以来の伝統を守ったシェイクスピアと違い、この劇では主人公が死なない。安っぽい、続編ご期待なのである。悲劇の伝統を守ってアルディスもオリゲルドも死なせるべきであった。
また、北島マヤ演じるアルディスは最後にいいとこ取りして自分ひとり快適な環境へ男と逃げる。アルディスを見逃し命を救ったオリゲルドは自らの運命へ独り歩み去る。この配役を推した月影先生の、人を見る目は的確といえよう。