安価でSS書くわ ID:1fgLDAnU

229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 18:15:28.07 ID:1fgLDAnU

昨日の今頃こむらがえった左肩がまだいてぇなんだこれ
>>231
>>232
>>233

239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 19:23:22.27 ID:1fgLDAnU


これは私のおばあちゃんから聞いた話なんだけどね。
おばあちゃんが産まれた村は、名前もついてないような小さな村だったんだって。
ある日、一人の母親が出産するって言うから、村のみんながお寺に集まって、お祈りしてたらしいのね……

ーーーーーーーーー

母「うっくうううううッ!!」

先生「金さん、もう少しです、頑張って……!」

金(もうすぐ……私の子に会える……!!)

先生「頭!頭が見えてきたよ……!頑張って、頑張って……!」

金「ふんぬうううぅぅう!!」ネチャネャ

先生「頭が出てきました!頭が……!」

先生「……」

先生「……なにこれ」

金「せ、先生……?ハーハー」

先生「……!」

先生「ご、ごめんなさい……。ほら、もう少し!頑張って!」

ーーーーーーーーーーーー

先生「……」

村人「先生、どうだったんだい!?うまくいったのかい!?」

先生「えぇ……まぁ……」

村人「そうか良かった!みんな、今日は祭じゃ!新しい村人を全員で歓迎してやろう!」

先生「住職さん……ちょっと」

住職「?……どうしました?」

先生「いえね、たった今産まれた子の様子が……」

住職「なんです?」

先生「……まぁ一度見てもらえればわかると思います」

住職「はぁ……」

ーーーーーーーーーーーー

オギャーオギャー!

住職「これは……」

目の前で懸命に泣き叫ぶ小さな命

住職「私は何度か御産に立ち入ったことはあります。産まれたての赤子も幾度となく見てきた」

だがこの赤ん坊は……

住職「頭が異様に肥大化している……」

先生「金さんにはまだ見せてません。どうすべきでしょうか……」

住職「ふむ……」

住職「難しい問題ではありますが、彼女は苦しんでこの子を産んだ。正直に言って、あとは彼女の判断に任せるべきでしょう……」











243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 20:06:09.60 ID:1fgLDAnU

住職「金さん、お体に大事はありませんか?」

金「は、はいなんとか……。それより、私の子は……」

住職「大丈夫です。無事に産まれましたよ。今先生が連れてきますから」

先生「……」

オギャーオギャー!

金「あぁ私の子……。その顔をはやく見せておくれ」

金「……!?」

住職「……」

オギャーオギャー!

金「……この子が本当に、私の子なんでしょうか……?」

住職「ええ……。なぜそのような形で産まれてしまったか、私にも先生にもわかりません」

金「……」

住職「辛いことを言うようで心苦しくはありますが、きっとその子は『普通の子』とは違う生き方をせざるを得ない」

住職「今ならまだ、流産という形で村人たちに報告できます。ご判断はその子の産みの親である、金さんが下してください」

オギャーオギャー!

金「……」

住職「……では私共はこれで」

先生「……」

ーーーーーーーーーーーー

結局その母親は、「私が産んだ命だから。子供に罪はない」と、女手一つでその子を育てるという判断をしたらしいわ。
住職と先生も快諾したんだって。
村人たちにはこう言った。
「赤ん坊は産まれて間もなく死んでしまった。だから当分、母親のことはそっとしておきなさい」
村で育てると確実にいじめられちゃうものね。
その子には、狭くとも母親の愛に満ちた幸せな世界に生きて欲しかった

金「おーい尻男(シリオ)?なにしてるんだい?」

尻男「んーとね、アナルごっこ!」

金「あなる……?なんだいそれ?」

尻男「僕もわかんない!」

金「そっかぁ……。私にはもっとわかんないなぁ……」

住職「尻男、そろそろ勉強しましょうね」

金「うん!僕勉強大好きだよ!」

住職「そうかそうか。良い子ですねぇ」

ーーーーーーーーーーーー

住職がお寺の部屋を空き貸してくれたおかげで、最初は順調に育てられたらしいの。
先生も一緒に遊んだり、たくさん協力してあげた。
でも、やっぱり運命は残酷で。
その子が丁度七歳になったとき、事件が起きた━━

252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 20:33:19.78 ID:1fgLDAnU

尻男「ねぇお母さん。『お外』ってどうしてあんなに狭いの?」

金「んー?どうしたんだい急に」

尻男「僕ね、思ったんだ。鳥や虫は『お外のお外』からきてるんだよね」

金「……さぁねぇ」

尻男「住職のおじちゃんはどうしていつも僕らに食事をくれるの?」

金「……」

尻男「勉強してるとね、ちょっとずつわかってくるんだ。食事って、勝手にでてくるものじゃないよね?」

尻男「なんかね、変だなって。勉強してる場所と僕が生きてる場所は違うのかな……」

金「……お母さんもわかんないな」

尻男「なんで?お母さんは『お外のお外』に出たことないの?その着物だって、僕が着てる着物だって、どこから運ばれてくるの?」

金「……」

尻男「僕ね、もっと知りたい。『お外のお外』に出てみたい」

金「それは駄目!『お外のお外』には」

尻男「『お外のお外』には怖い生き物がいっぱいいるんだよね」

金「……そうよ」

尻男「じゃあどうして鳥や虫は怖くないんだろうね」

金「……やめなさい」

尻男「僕は鳥や虫を殺せるよ。だから鳥や虫が怖くない生き物なんて、僕も怖く」

金「やめなさいってば!」

尻男「……」

金「尻男は知る必要なんてないの……。お母さんの隣にいて、それだけでいいの……!」

尻男「……」

尻男「……そっか」

ーーーーーーーーーーーー

金「それじゃ、そろそろ寝るよ」

尻男「……うん」

金「おやすみね、尻男」

尻男「おやすなさい」





尻男「……」

尻男「……お母さん?」

金「……」グー

尻男「寝たの?」

金「……」

尻男「そっか、寝たんだ」

尻男「……ごめんね、お母さん」バサッ

254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 21:04:09.72 ID:1fgLDAnU

見回り「今日も見事な満月、うむ。綺麗じゃ」

見回り「隣にもっと綺麗なおなごがいれば……なんてなヘヘッ」

見回り「森付近も以上なし……と。あとは寺を回って村を適当に……」

ガサガサッ

見回り「……!?」

シーン

見回り「……狸か?」

見回り「……」

シーン

見回り「狸だな。まったく、驚かせんなや……」

見回り「さて、はよ見回り終わらせてソープにでも……」

???「こ、こんばんわ」

見回り「!? 誰じゃ!」

???「えっ……えと……」

見回り「子供……?こんな時間に出歩くとは、親はなにしてるんじゃ」

???「えと……」

見回り「誰の子じゃ。わしが叱ったる。その顔よー見せてみー」

???「……」

見回り「……なんじゃお前その頭」

???「えっ……」

見回り「化け物……。人の言葉を話せる化け物じゃろ」

???「いや僕は……」

見回り「うっうわっ!こっち来んな!!いかん、本物の化け物じゃ……!」

???「ちがっ僕は……!」

見回り「化け物じゃーーー!!モノノケが出たぞーーー!!」

ゾロゾロゾロ

「化け物!?」「どういうこっちゃ……」「う、うわっあの頭……」

村人「おっお前!この村さなにしに来た!?」

???「……なんで、なんで人がこんなに……」

見回り「何を言っとんのじゃ!その頭と言い、お前この村に災い呼び込む気じゃろ!」

???「わざわい……?なに、それ……」

村人「ええい人の身なりもせぬモノノケよ……!言葉を覚えたからとて、ズカズカと人の地に踏み込むとはなんてまぬけな……」

見回り「生かしちゃおれん。男共、やっちまえやー!!!」

ウオアアアアアアア!!!

???「えっ、待って……!話を聞いて……」

ーーーーーーーーーーーー

261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 21:44:29.20 ID:1fgLDAnU

ーー朝

金「ん~!おはよう、尻男」

金「……尻男?」

ダッダッダッダッ

住職「金さん……大変だ……!」

金「住職さん……どうしたんです……?」

金「それより尻男そちらに行って」


尻男が、殺された


金「……え?」

住職「昨日の夜に抜け出して外に出たらしい。それを見回りの奴が見つけて『化け物』だと……」

金「……」

金「住職さん、冗談にしちゃちょいと性が悪いんじゃないですかね」

住職「……」

金「信じませんよ、そんなこと」

住職「……」

金「あーあほくさ。あんたにはここ貸してもらった恩もあるし、礼を言うならば限りがない。そんくらいお世話になっとる」

金「でも言って良いことと悪いことの分別なんて、あんたが一番ついてんでしょうに」

住職「……嘘を言ったわけではありません」

金「……」

住職「死体は見ないほうがいい。ほとんど原形がないくらいに滅茶苦茶にされてます」

金「……」

金「……そうですか」

金「もういいです。わかりました。一人にしてください」

住職「……」

ーーーーーーーーーーーー

その夜、母親は舌を噛んで自殺したらしい。
住職はその子と母親の遺体を丁重に葬ってあげた。
普通より大きいサイズの棺桶に親子を一緒に入れて、「せめてあの世では幸せに暮らせるように」と。
住職と先生二人だけの、静かで悲しい葬式が行われた。


先生「住職さん、真実を村人たちに話すべきでは……?これじゃあの親子があまりにも報われない……!」

住職「……」

先生「どうしてこうなってしまったんでしょう……。誰にも罪などないというのに」

住職「……」

先生「……住職さん!」

住職「……村人には、話せません」

先生「どうしてです!?」

住職「……真実を言ったところで村人たちは信じてくれるでしょうか」

住職「それに、もし信じたとしたら、糾弾されるのは殺しに加担した男共になるでしょう」

住職「私はこの村を守る住職として、村人たちの間に不穏ないさかいを生ませたくない」

先生「……」

住職「このことは、私と先生だけの胸の内にしまいましょう」

先生「……」

先生「……わかりました」

269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 22:38:55.88 ID:1fgLDAnU

翌年から村は大飢饉に陥ってしまう。
地震や台風などの天災。
農作物の流行り病。
海や川で取れていた魚は死に絶えたかのように、てんで取れなくなってしまった。

自ずと村は疲弊していった。
伝染病が蔓延し、どんどん人が死んでいった。
唯一医学の知識を持った先生も、伝染病にかかりこの世を去った。


村人「住職さぁん!俺らどうしたらいいんだっ」

女「もう食べる物もほとんどなくて、子供が育てられない……!」

住職「……」

住職(これは天罰なのかもしれない……)

男「こんな村、はやくに出るべきだったんだっ……。この先どうやって生きていけば……」

見回り「なぜわしらがこんな目に……わしらが何か悪いことをしたと言うのか……」

住職「……」

住職の頭に浮かぶのは、あの親子の顔

住職(私は神を信じる者でありながら、とても愚かな決断をした)

住職(ひと一人の命より、村の安定を願ってしまった)

ーーーーーーーーーーーー

寺に戻った住職は、あの親子が眠る大きな棺桶を開けた。

住職「……」

中には、誰も入っていなかった。

住職(私が間違っていた……。あのとき村人たちに全てを話すべきだった……)

住職(この大飢饉は、あの親子の私怨によるものではない。愚かな決断をした私に対する、神からの罰だ……)

住職は立ち上がり、村の広場へと向かう。
胸の内に隠した箱の紐を解き、すべての真実を村人たちに話した。

ーーーーーーーーーーーー

見回り「……わっわしは……なんてことしちまったんだ……」

住職「……」

女「そうよ……!全部あんたのせいでこうなった!」

男「今すぐその腹切って、責任取れやがれ!」

見回り「す、すまねぇ……!本当に……すまねぇ!!」

住職「……やめましょう」

女「でも金さんを……。尻男を殺さなければこんなことにはならなかったのよ……!」

住職「だからといって、見回りを攻めても何も変わりません」

住職「私共が今しなければならないことは、金さんと尻男に懺悔することです」

女「……」

住職「皆さん、寺の仏間に集まってください」

280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:14:00.19 ID:1fgLDAnU

住職(金さん、尻男。どれだけ言葉を並べようと、あなた方の苦しみが払拭されることはないでしょう)

住職(どれだけ謝ろうと、あなた方は私共を許してくれはしないでしょう)

住職(ただそれでも、私は私の罪を悔い改めたい。あなた方に背負わせてしまった重荷を解き放ってあげたい)

住職(ここで懺悔しても飢饉からは救われない、それでもいい)

住職(ただ一言)

━━申し訳なかった

住職(それだけ伝われば、私は救われます)

寺から響く懺悔の声は、三日三晩止むがなかったという。

ーーーーーーーーーーーー

村が変わったのは、それから幾年を越えた冬のこと。
しんしんと雪が降る朝、いつものように漁に出掛ける漁師。

漁師「はぁ……。どうせ、今日も小魚数匹、それだけだ……」

漁師「……ったく早々に逝った奴等が羨ましいったらねぇや……」

漁師「……おっ?」

漁師「……なんでぇこの気持ち悪ぃ生き物……」

漁「うっうぇ……しかも大量にいやがるじゃねぇか……!」

漁師がその日上げたのは、見慣れない8本足の奇形な生き物。

女「ちょっとぉ……せめて食えるもの取ってきなさいよ!」

漁師「うるせぇやい!こいつしかいなかったんでぇ!黙って食いやがれってんだ」

女「どうやって食えばいいってのさ!」

漁師「知るかいそんなもん」

女「ったく……。仕方ない、甲羅剥いて味噌汁に入れて食おう……」

ーーーーーーーーーーーー

ズルル

漁師「なんでぇこれ……」

女「……!」

漁師「うめぇええええええ!!!」

女「あっ、あんたっ!はやく村のみんなに分けてやんな!」

漁師「おっおう!俺のぶん残しとけよ!」

ーーーーーーーーーーーー

住職「これは……」

漁師「一回だけ!一回だけ食ってみてくだせぇよ!」

住職「しかしどうやって……」

漁師「んなもん適当にペペーイとやってポーイですよ!」

住職「は、はぁ……味噌汁にでも入れてみましょうかね……」

ーーーーーーーーーーーー

それで、そのカニはどれだけ取っても溢れるほど出てきて、たちまち村を救ったんだってさ。
町から交渉に来る人もいて、村にお金が入って、そのお金で医者をたくさん呼んで伝染病も治しちゃったんだって。
そう、それもこれも、全部カニのおかげだっておばあちゃんが言ってた。
住職はその後そのカニにこんな名前をつけたんだって。

どんな名前だと思う?

おわり

281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:15:17.15 ID:1fgLDAnU

シリコンバレーすまん……
一応 尻男(シリ)金(コン)で絡めたつもりが……

289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/03/06(金) 23:26:43.05 ID:1fgLDAnU

あぁあとオチな
カニの名前

頭歪蟹(ズワイガニ)

よく考えたらくっそわかりにくいな
すまんこ


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