ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム ジョディ・アーチャー Jockers
投稿者yukkie_cerveza殿堂入りNo1レビュアーベスト100レビュアー2017年5月
コンピューターを駆使して計量文献学的にベストセラーを産む法則を解析した書です。大変面白く、一気に読み終えました。・・・・・・・
昨今流行(はや)りとも思える「ガール小説」を見つめたくだりが目をひきました。
近年のベストセラーには『The Girl With the Dragon Tattoo』、『Gone Girl』、『The Girl on the Train』と見事なまでにタイトルに「ガール」の文字が銘打たれています。・・・・・・・・
最後に翻訳について一言。川添節子氏の翻訳は大変こなれていて、読みやすいものです。その訳業に読書を大いに助けられました。
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一か所だけ校閲ミスがありました。
*169頁:「小説とは人と人の交流を描いたものであり、子として立場、家族としての立場が絡むもの」とありますが、「子として立場」ではなく「子としての立場」ですね。
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関連書籍として以下の本をご紹介しておきます。
◆スティーヴン・キング『書くことについて』(田村義進訳/小学館文庫)
:『ベストセラーコード』の184頁に「形容詞と副詞、特に形容詞は使われる頻度が低い」とあります。キングも『書くことについて』の中で、「副詞の多用は、自分の文章が明快でなく、言いたいことがよく伝わらないのではないかという書き手の恐れを示すもの」(166頁)と記しています。
◆曽根田憲三『ハリウッド映画でアメリカが読める』(開文社出版)
:『ベストセラーコード』の著者は昨今の「ガール小説」の主人公たちを、「昔からあるスリラーやミステリー、あるいはホラーをプライベートな空間に持ち込ん」(232頁)で注目されていると評しています。こうした女性たちがヒロインの小説を「ドメスティック・ノワール」と称するようです。
それで思い出したのは、映画の「フィルム・ノワール」のこと。この『ハリウッド映画でアメリカが読める』によれば、1940年代の「フィルム・ノワール」誕生の背景には、女性たちの社会進出があり、映画の妖艶な女たちは、時代が要請した<居るべき場所=伝統的な核家族>に引き戻されんと闘争して、やがて敗れていく存在であるというのです。
それと引き比べると、「ドメスティック・ノワール」の主人公たちはもっと主体的でどこかしら肯定的な女性といえるでしょう。そこに時代の変化を感じます。
◆尾崎俊介『ホールデンの肖像―ペーパーバックからみるアメリカの読書文化』(新宿書房)
:『ベストセラーコード』の270頁に、オプラ・ウィンフリーとジョナサン・フランゼンの間に「騒動」があったと書かれています。「騒動」がどんなものであったのかはアメリカ人の読書好きの間では広く知られているとみえて、詳細については何も書かれていません。その詳細はこの『ホールデンの肖像』で知ることができます。
◆クリストファー・ボグラー/デイビッド・マッケナ『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』(府川由美恵訳/アスキー・メディアワークス)
:ハリウッドで活躍するストーリー開発コンサルタントと、コロンビア大学他で映画についての講師も務める人物の共著。彼らは、ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』、そしてウラジーミル・ヤコブレビッチ・プロップの『昔話の形態学』を主たる基本文献として、ハリウッド映画の物語を様々