GEB GEB 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』 ダグラス・ホフスタッター I Am a Strange Loop(Douglas R. Hofstadter) カーツワイル 「不思議の環」白 #12

12yukkie_cerveza 殿堂入りNo1レビュアーベスト100レビュアー 5つ星の:2018/09/04(火) 05:23:19.19 ID:???

yukkie_cerveza
殿堂入りNo1レビュアーベスト100レビュアー
5つ星のうち5.0(2018年―第107冊)各作家の文章スタイルの特徴を統計学的に明らかにした、知的興奮を与えてくれる一冊
2018年8月14日
 著者はハーバード大学で応用数学を専攻した人物。古典文学から現代小説までの活字作品を、統計学を用いて多角的に分析してまとめたのがこの書です。小説内に現前と存在しながら、読者にはまったく気づくことのなかった事柄を明らかにしてくれるという意味で、大変大きな驚きと知的興奮を与えてくれる一冊です。

 英語圏で出版された文章読本の類(William Strunk Jr./E.B.White『英語文章ルールブック』、スティーヴン・キング『書くことについて』、ジョディ・アーチャー/マシュー・ジョッカーズ共著『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』)で、繰り返し述べられていたのが、無駄に副詞を多用しないで文章を書くべし、というルールです。
 この『数字が明かす小説の秘密』では、この副詞の使用を控えるルールを、著名な作家たちは実際にどこまで順守しているかを、コンピュータをつかって調べ上げていきます。
 私自身、初めて知ったことですが、英語圏で多用を慎むべき副詞とは、sleepilyやirritably、sadlyといった-ly型の単語のことを特に指すようです。-ly型副詞は、文脈で明らかにするべきところを、単語ひとつで読者にばらしてしまうことになり、だからこそsuddenlyのような副詞は差し控えるべきだというのです。
 著者の調査結果によれば、ヘミングウェイは確かに-ly型副詞の使用頻度は低い(1万語につき80回)ものの、J・K・ローリングスなどは1万語につき140回と多めだということが判明します。そして様々なトップ100リストに選出されたような書の-ly型副詞の使用頻度を見ると、確かに使用頻度が少ない書ほど優秀作品とみなされる場合が多いのだとか。
 また、思考動詞を多用するなというのも作家のルールとして存在するようです。thinkやwant、believeやdesireという単語を使用して「語る」のではなく、「示せ」ということです。
 そして、very、rather、pretty、littleという修飾語を多用するなというくだりを読んで、トランプ大統領がツイートでなにかというとveryと書くことを思い返しました。

 そのほかにも、作家の使う単語や表現のスタイルには一定の特徴があるため、覆面作家の素性を推測することも可能だといいます。1万語あたりのthe とandの使用頻度を分析するだけで、それぞれの作家の<指紋>が検出されるのです。
 こうした調査の結果、リチャード・バックマンの文体は統計学的に確かにスティーヴン・キングのそれに近いといえるし、ロバート・ガルブレイスのそれはJ・K・ローリングスに近いといえるのです。一方、覆面作家のトマス・ピンチョンは一時期サリンジャーの別名ではないかとされたことがありますが、両作家の文体を統計学的に分析すると、やはり別人である可能性が高いということも判明しています。このくだりは下手な推理小説よりも謎解きの過程を楽しみながら読みました。
 そして私は、ニューヨークタイムズのベストセラーリストの常連である覆面作家リチャード・キャッスル(『Heat Wave』など)の素性をこの統計学でぜひ割り出してほしいと思ってしまったのです。

 この書は、英語圏の古今の著名小説の名が満載されているので、ちょっとした読書ガイドとしても役立てることができるのではないでしょうか。この書に名を挙げられた小説を読んでおけば、英米文学史に実地にあたることも


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