森記念財団は上場株式時価総額などの「金融商品市場」や外国為替取引高などの「外国為替・金利市場」といった4項目で世界の都市を評価した。日本の得点が高かったのは「金融仲介機能」で、銀行や保険会社、年金がどのくらい集まっているかを評価軸にした。
東京一極集中がランキングに有利に働いた。東京はメガバンクや大手生保などが本社を構え、運用額で世界最大の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もある。米国では金融機関や年金の本社は分散する。例えば米国最大の公的年金のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は同州サクラメントにある。
世界3位という東京の位置づけに対して、ある運用会社の幹部は「GPIFやメガバンクはあるが、海外金融機関の進出は限定的でローカルの域をでない」と疑問視する。森記念財団の評価でも、東京は金融の国際展開を支援する「高度専門人材」の項目が主要都市に比べて低かった。グローバル面での課題は多い。
政府の掲げる資産運用立国を目指す上で、中核となる東京が国際金融都市として評価されていなければ、海外投資家が日本に資金を移したり、海外金融機関が日本に拠点を開いたりする動きの妨げになりかねない。政府が熱視線を送る中東の政府系ファンドなどは東京の金融事情に詳しいとは言えず、ランキングのようなデータの影響力は大きくなる。
政府・金融庁は今後、森記念財団のランキングを海外向けのアピール材料などにしていく方針だ。世界の主要都市は海外マネーの誘致合戦を繰り広げており、日本も強化する。だが、うわべだけを取り繕っても、勢いは長続きしない。規制緩和やグローバル人材の育成など競争力を高める本質的な政策から目をそらしてはならない。
(湯浅兼輔)
(了)