東大教授が「東大卒」を調査した
本田由紀・東京大学大学院教授
男ばかりの日本社会を反映して、男ばかりの「勝者」を送り出す場と位置づけられている東京大学。
東京大学大学院教育学研究科教授の本田由紀さんは、「日本社会にはびこるメリトクラシー(能力主義)とジェンダーギャップ」が凝縮されていると言います。
東京大学の卒業生を対象にした社会調査(※1)を実施した本田さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】
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偏見を濃縮している
――なぜ調査をしようと考えたのですか。
本田氏 学生・教員の女性比率の低さをはじめ、ジェンダー平等の状況が悪いことは認識されていました。
私が座長としてまとめた全学生・教職員を対象とした「東京大学におけるダイバーシティに関する意識と実態調査」(2020~21年実施)でも明らかになりました。
中にいる人間だからこそ、外から言われるのではなく、自己点検をする必要があると思いました。
――その問題意識から社会観を詳しく聞いています。
◆男女で明確な差が認められたのは、「生活に苦しんでいる人は努力が足りないせいだ」(「まったく賛同しない」は女性は40.4%、男性は26.2%)などのメリトクラシーに関わる項目と、「家事育児は主に女性が担うべきだ」(「まったく賛成しない」は女性は62.0%、男性は36.3%)などのジェンダー平等に関わる項目です。特に年代が高くなるほど、その傾向が強くなります。
日本社会全体と同じ傾向であり、当然といえば当然です。しかし、調査でも確認できたように、特に男性の卒業生は典型的な「勝者」として、しかも年代が高ければ高いほど、高い地位に就き、権力・発言力・財力を手にしています。
日本社会の問題点が卒業生を経由して再生産されている、それも濃縮して再生産されている可能性を示しています。
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230619/pol/00m/010/002000c