「ミネストローネ」番組では白いミネストローネが出ていました。白いということは生クリーム、もしくはルーを入れたということ。イタリア料理は土地の食材で作られているので、この特徴はアルプスの料理に多いものです。ルーは貴族料理の流れなので、郷土料理では使いません。ましてや郷土料理の代表格であるミネストローネにはなおさらです。
ミネストローネは野菜が豊富に採れる半島の部分の料理で、生クリームが入ることはありませんし、もし入っていたとしたらそれはミネストローネではありません。別の名前になるでしょう。
「ボロニェーゼ ビアンコ」現在のトマトが入る形になったのは100年ほど前だとされています。ボンゴレ ビアンコとロッソのように、トマトが庶民料理に入る前と後ということで、ボロニェーゼも元は白。主人公の新発見ではありません。
ボロニェーゼと言われる所以は、そこが豊かな地で、豚肉、仔牛肉、成牛肉、生ハムを自由に使えるのでわざわざボローニャの名前が付けられました。合わせるパスタは手打ちのタリアテッレが定番。番組のものはどう見ても香味野菜も入っていず、一種類の挽肉(多分豚肉)を炒めただけ。しかもパスタは市販の乾燥生パスタでタリアテッレではない。さらに、鉄製のフライパンでパスタを炒めるなんて有り得ない!
「イカ墨のスパゲッティ」沖縄料理と合わせた新料理ということになっていますが、「イカ墨のスパゲッティ」は元々南イタリア、シチリア料理です。
ヴェネツィア料理だという人がいますが、それはスパゲッティのではなく絞り出しパスタ「ビーゴリ」を使っている場合。
土地の食材で作られるイタリア料理なので、スパゲッティの材料であるドューラム小麦が採れない北イタリアで乾麺を使うことはありません(輸送が発達した現代では北部でも乾麺が使われています)。
コウイカは海にいますからシチリアでもヴェネツィアでも獲れるので、双方にイカ墨料理が生まれても不思議はありません。
それから、どんな料理でも、料理人は美しく盛り付けることができます!
イタリア料理をずっとやってきた人間にとって、これがイタリア料理だと思われるのはあまりに辛いので、記しておきます。正直言って、そう思われたら、涙が出ちゃう。
監修に我が尊敬する室井シェフのお名前が出ていますが、博識の室井シェフがこれらのことを知らないわけはありません。
(おわり)