名張毒ぶどう酒事件、名古屋高裁が再審認めず 元死刑囚側の異議棄却 | 毎日新聞
三重県名張市で1961年3月、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第10次再審請求で、名古屋高裁刑事2部(鹿野伸二裁判長)は3日、再審開始を認めなかった同高裁刑事1部の決定を不服として奥西勝・元死刑囚=89歳で病死=の妹、岡美代子さん(92)が申し立てていた異議を棄却する決定を出した。弁護団は最高裁に特別抗告する方針。
異議審では検察側が、事件現場の公民館で農薬入りのぶどう酒を飲んだ被害者らが事件前の様子を語った供述調書9通を約15年ぶりに開示。調書には、ぶどう酒瓶の王冠の封かん紙について「ビンの口に巻かれていた」と供述する内容が含まれ、「(封かん紙は)切れてその場に落ちました」とする奥西元死刑囚の捜査段階の自白と食い違うため、弁護団は毒物混入時に封かん紙が破れたとする確定判決の矛盾を示すものと主張していた。
弁護団はまた、王冠の封かん紙の裏面に付いたのりに関し、製造段階とは異なる洗濯のりなどに使われる成分が検出されたとする鑑定結果を新証拠として提出。「真犯人が毒を入れ、封かん紙を貼り直した」と主張していた。
異議棄却の決定を受け、再審請求人の岡さんは「本当、無念です。残念です。裁判長・裁判官に怒りをもって『何故に』と問い、抗議したいです。私の命のある限り、再審無罪、えん罪を晴らして兄の名誉を回復するために頑張りたい。そのために長生きをして無罪を勝ちとりたいと思っています」とのコメントを出した。
奥西元死刑囚は第9次再審請求中の2015年10月、収監先の八王子医療刑務所で病死。岡さんが請求人となって同11月、第10次となる再審を請求していた。弁護団は王冠の封かん紙ののり成分に関する今回とは別の鑑定結果などを新証拠として提出したが、名古屋高裁刑事1部は17年12月、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらない」と請求棄却の決定を出し、岡さんが異議を申し立てていた。
第7次再審請求で名古屋高裁刑事1部が05年、再審開始決定を出したが、同高裁刑事2部が取り消し。最高裁が10年、審理を差し戻したものの同高裁刑事2部が改めて決定を取り消している。【道永竜命】
https://mainichi.jp/articles/20220303/k00/00m/040/041000c
2022/3/3 10:48(最終更新 3/3 18:49)