科学の危機が映し出す社会の危機――マートン規範と宮崎・早野論文 #1

1番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2021/05/28(金) 22:18:21.72 ID:JHQvoLoH

科学の危機が映し出す社会の危機――マートン規範と宮崎・早野論文
黒川眞一 (くろかわ しんいち 高エネルギー加速器研究機構名誉教授)


 1942年にマートン(Robert Merton)は“Science and Technology in a Democratic Order”(「民主主義体制における科学と技術」)というエッセーを発表し,次のような科学の規範を提唱した。すなわち,Universalism(普遍性),Communism(公有性),Disinterestedness(無私性),そして Organized Skepticism(組織された懐疑主義)の4つである。普遍性とは,科学者の活動にとって,その人物の個人的または社会的属性,すなわち,人種,国籍,宗教,階級,個人の資質などは一切関係がないということである。公有性とは,科学における成果は社会的協働の成果であり共同体が所有することである。無私性とは,純粋な知識欲,無欲な好奇心,人間性に対する利他的な関心などの,科学が職業である以上科学者がもたなければならない性質であり,私利私欲は避けられなければならないことである。最後の組織された懐疑主義とは,科学者は権威や権力に従うことなく常に批判的知性を働かせなければならないということである。マートンがこのような規範を提唱したのは,全体主義による「反知性主義という病気が蔓延しようとしている」ことに抗し科学を守り民主主義を守るためである。マートンが提唱した4つの規範は,「反知性主義という病気が蔓延」している現代の日本の科学者にとって重要であることはいうまでもない。
(続)

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