【コラム紹介】大手ジャーナリズムは何やってんだ|世の中ラボ|斎藤 美奈子|webちくま ID:pZaLnVm7

2番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2020/11/23(月) 21:10:38.67 ID:pZaLnVm7

 秋田魁新報取材班『イージス・アショアを追う』。秋田魁新報は、ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の配備計画を追った一九年六月五日のスクープ記事(見出しは「適地調査、データずさん」)で、一九年のJCJ賞と日本新聞協会賞を受賞している。本書はその舞台裏を描いたレポートである。
 発端は一七年一一月一一日の読売新聞の記事(「陸上イージス、秋田・山口に/政府調整、陸自が運用へ」)だった。この時点では、イージス・アショアがどんなものかも知らなかった。それでも「やれることは何でもやってみる」という方針の下、政治経済部を中心に取材がスタートした。翌一二日の記事(「地上イージス、本県候補/県民、にじむ不安」)が初の自社出稿記事だった。
 地元の声、県議や市議へのアンケート調査、イージス・アショアを世界で唯一実戦稼働させているルーマニアでの取材レポートなど、手探りの取材と不定期の連載を続けながらも膨らむ疑問。住宅地に近い新屋演習場(秋田県秋田市)がなぜ配備候補地なのか。イージス・アショアは何を守るためのものなのか。
 転機は一九年五月二七日だった。防衛省が適地調査報告を公表したのである。その中に奇妙な図があった。配備には不適と結論された「他の国有地の検討」に関する地形断面図だ。鳥海山(標高2236メートル)と本山(標高712メートル)が同じ高さにデフォルメされて描かれている。仰角はどちらも約15度。
〈分度器持ってたりしない?〉〈買ってきましょうか〉。社会地域報道部でのそんなやりとりの後、三角関数を使って計算してみると、本山の仰角は四度でなければおかしい。県内大学の複数の研究者も、報告書に誤りがあるのは確実と指摘した。専門業者の測量も経て、六月五日、スクープ記事が紙面になった。
 記事には解説も付記された。〈配備計画の根幹となる調査報告書に、事実ではないデータが記されていた。そこに見え隠れするのは、計画の根底にある「新屋ありき」の姿勢だ〉〈問題の本質は、防衛省が実際と懸け離れたデータを示し、知事や秋田市長、県民を欺く形で配備に適さない場所と説明した点にある〉。

大手メディアがやっていたこと
 赤旗日曜版は見過ごしそうなツイート。秋田魁新報は報告書の小さなほころび。それを「おかしい」と感じるセンサーと地道な取材がスクープにつながったといえるだろう。が、この話にはまだ先がある。スクープが出ても、他社の反応は鈍かったのだ。
〈大手メディアがこの疑惑をとりあげることはありませんでした〉と赤旗取材班は書く。一一月八日、共産党の田村智子参院議員が国会でこの件について追及した後でさえ、出たのは囲み記事やベタ記事だけ。大手新聞がようやくこれを大きく報道したのは、野党共闘による追及チームが発足し(一一月一一日)、SNSで騒ぎになり、テレビのワイドショーが報じた後だった。


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