■安倍官邸と東芝の距離の近さ
オリンパスの粉飾決算が表面化した際には、当時の政権幹部が東証に圧力をかけていた。
「上場廃止にすれば世界に冠たる日本の医療機器技術が中国に買われることになりかねない」
日本の国益を守るために目をつぶれと東証幹部に指示したという。オリンパスに比べれば、東芝がより一層「「政治銘柄」であることは誰の目にも明らかだ。国策に沿う原子力発電を事業として持つほか、防衛装備品も扱う。
まして、安倍官邸は経産省が力を握っている。東芝と経産省は当然、蜜月の関係である。金融庁がそうした官邸の空気を呼んで、東芝防衛に動いている、という見方も根強くある。
一方で、「そんな高度な話ではない」という声も金融庁関係者からは聞こえてくる。「上場廃止にできないスネの傷があんじゃないの」というのである。スネの傷とは何か。
金融庁自身が東芝の不正会計を見逃していたのではないか、というのだ。
東芝の監査は新日本監査法人が行ってきたが、新日本は日本航空やIHI、オリンパスなどの粉飾決算を見逃してきた「前科」がある。このため、金融庁などから繰り返し検査や指導を受けていた。
日本公認会計士協会や、金融庁の公認会計士・監査審査会が新日本の監査品質を検査する過程で、東芝の決算を抽出してチェックしていたというのだ。つまり、新日本が出してきた監査証明の「適正」意見に、金融庁や会計士協会もお墨付きを与えていたというのである。
それだけではない。東芝の決算を巡って、会社側と新日本の見解が対立していたのを、金融庁が間に入ったという証言もある。東芝の決算には金融庁自身が少なからずコミットしていたというのだ。実際、新日本の幹部の口からも「金融庁裁定」という言葉が出て来る。
それが、会計不正が表面化したことで、金融庁のメンツが丸つぶれになったというのだ。金融庁が東芝や新日本に強く出られない理由はそこにあるのではないか、と関係者の間ではささやかれ始めている。
(おわり)