崩壊する東芝、傷口広げた会計の“プロ”
内部資料で判明したデロイトトーマツと東芝の闇
東芝の転落が止まらない。半導体メモリー事業の売却では優先交渉相手を決めたものの、東芝の思惑通りに進むかは不透明だ。協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が反発するのは確実で、6月28日の東芝の定時株主総会も紛糾が予想される。
日経ビジネス6月26日号の特集は「東芝の“遺言” 知識は失敗より学ぶ」。今後の東芝問題の行方や、独自の内部資料により判明した東芝粉飾決算に関わる新事実を掲載している。
米ウエスチングハウス(WH)の減損と、パソコン事業におけるバイセル取引。東芝の経営危機を深刻化させた2つの問題に、デロイトトーマツグループが深く関与していたことが、日経ビジネスの取材で明らかになった。
本誌は今回、社内システムや電子メールの記録など様々な内部資料を入手。東芝の現役社員に加え、複数のデロイトOBから証言を得た。その結果、現在のデロイトトーマツグループCEO(最高経営責任者)である小川陽一郎氏を含む数十人の幹部の関与が新たに判明した。
資料によると、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)は2011年以降、「のれんの減損に関する相談業務」や「WEC減損テスト相談業務」など複数の「FAS業務」を東芝から受託している。FASは「ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス」の略称で、財務に関する相談を意味する。WECとは、東芝社内におけるWHの呼称だ。
東芝取締役で監査委員会の委員長を務める佐藤良二氏(左端)はかつて、監査法人トーマツの包括代表を務めていた(写真:竹井 俊晴、今年3月14日の記者会見)
東芝は本誌が2015年に指摘するまで、WHが減損処理を実施して赤字に転落していた事実を隠蔽していた(スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽)。一方で、社外に対しては原子力事業は「好調」だと、実態とは異なる説明を続けてきた。デロイトがFAS業務を提供していたのは、ちょうどその時期に該当する。
資料には数十人のデロイト幹部が実名で登場する。WHに関する契約では小川氏が「LCSP」として関与している。「リード・クライアント・サービス・パートナー」を意味し、デロイトのOBによると「案件の中身を知るべき立場」だという。
デロイトはグループ内に、DTFAなどのコンサルティング会社と監査法人を抱えている。FAS契約が結ばれていた時期、小川氏は監査法人トーマツの経営会議メンバーだった。本誌は小川氏に取材を申し入れたが、「守秘義務があるため、個別案件に関する取材には対応できない」との返答だった。
東芝経営陣はデロイトに対して何を求め、デロイトはどんな期待に応えていったのか。日経ビジネス6月26日号特集「東芝の“遺言” 知識は失敗より学ぶ」では、内部資料を基に両社の関係を詳しく解説している。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/070600052/062200012/
小笠原 啓
日経ビジネス副編集長 2017年6月23日