横浜市が打ち出した水道料金の値上げ方針が批判を浴びている。施設の老朽化と節水意識の高まりによる使用量の減少で、料金の値上げは全国的な傾向にあるが、新型コロナウイルスの影響で家計への負担が増しているだけに、市民から「なぜ今」の声が上がる。【中村紬葵】
市は3月、水道料金を2021年4月から平均で現状の10~12%値上げすると発表した。最も利用者数が多い毎月15立方メートルを使用する世帯では約170~200円の値上げとなる。県は4月、新型コロナの影響で増す経済的負担の軽減を目的に、18市町が利用する県営水道の料金を5~8月に一律10%減額しており、正反対の対応となった。
市の発表に対し、ツイッターでは「なぜこの時期に決定するのか。市民のことを考えていない」「想像力がないのか」と批判が噴出。これを受け、市は6月、やむなく値上げ時期を3カ月延期した。
値上げをしたい理由は、水道収入の減少にある。市の水道収入は、最後に料金改定した01年度の789億円をピークに減少傾向にあり、18年度は698億円と01年度比で12%減った。
背景には、水需要の減少がある。市内の年間水使用量は01年度の約4億1000万立方メートルから18年度には約3億8000万立方メートルと7%減った。節水意識が浸透したことや、トイレなどの水回りの機器が改良されたことが要因とみられる。10年後には水道事業が赤字となる試算もあり、市の担当者は「このままでは水道設備の更新にかかる費用を賄えない」と話す。
市内に張り巡らされた計約9300キロの水道管の25%は、利用開始から18年度末時点で国が減価償却期間として定める40年を既に超えている。耐震化が完了したのも28%(19年度末)で、川崎市の31%(17年度末)と比べても低い。
実際に水道管が腐食して穴が開き、浸水被害が出たケースもある。20年1月、磯子区で地下の水道管に穴が開き、水が漏れたことが原因で地表に水があふれ出た。道路が約350メートルにわたって冠水し、付近の3戸が床上・床下浸水、約3400戸で水道水が濁った。こうした漏水トラブルは、市内で毎年1700件前後ある。
市は毎年110キロ程度、水道管の更新作業を進めているが、今後はより費用と工期を要する「大口径管」の更新に着手しなければならない。また、約20年後には年間200キロ以上で耐用年数を迎える年が続くと見込まれ、作業を前倒ししなければ更新が追いつかなくなる恐れがある。
https://mainichi.jp/articles/20200822/k00/00m/040/010000c