――『サザエさん』は放送開始から50年、『ちびまる子ちゃん』も30年です。
子供向けのアニメーションは、新規参入ができない世界になっている。だから、アニメ映画『マイマイ新子と千年の魔法』を作るという話になった時、プロデューサーとともに頭を抱えたんですよ。やることはできるけど、売ることは難しいんじゃないかと。だとしたら、これは大人向けの映画として児童映画を作ろうということになると。
――なぜ、子供向けではダメなのですか。
子供向けじゃないとダメなんじゃなくて、子供向けのものを誰も作らないのがおかしくないですかという話をしています。なぜ作らないの? だってフランスなどでは、アニメーションは子供向けのものだと思われているから、大人向けの作品を作るのは難しいと言われている。それでも、『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(LONG WAY NORTH)』(15年アヌシー国際アニメーション映画祭観客賞受賞)などを作るじゃないですか。日本は逆なんですよ。子供向けのものを作ろうとしても土壌が壊滅なんです。
――片渕監督も携わった『魔女の宅急便』など、ジブリ作品はどうですか? 眠っている童心がくすぐられるから大人にも人気があると思っています。
魔女の宅急便の対象年齢は、お金を自由に使えるようになった20代の若い女性ですよ。だから、街へ出て仕事を始めた女性が主人公なんです。ジブリ作品で本当に子ども向けの作品は、『となりのトトロ』と『崖の上のポニョ』。それ以外に本当にあるでしょうか?
特に今の日本の中で、作り手の意識があまりにも現在のアニメーションに同調しているから、子ども向けになり得ない。子ども向けとは何なのかを、もっと真剣に考えたら違うものが作れるはずなんです。要するに、そうは言いつつ、海外から言われるジャパニメーションの延長線上で、子供向けのものをとりこんでいるだけのように見える。子ども向けの方へ自分が行かないで、自分たちの方へ子ども向けのものを取り込んでいるから、そうなるのだと思います。