そこで16年9月に決めたのが緩和策の軸足を「資金供給」から「長短金利操作」に移す措置だ。長期国債は長期金利(10年物国債利回り)を「ゼロ%程度」に誘導するのに必要な額だけ買えばよくなり、減額への道が開かれた。「ステルス(隠密な)緩和縮小」と呼ばれたこの路線を3年続け、ついに異次元緩和前の購入額にほぼ戻った。
それでも長期金利が跳ね上がらないのは、ストック面では日銀の存在感が大きくなっているためだ。国債発行残高に占める日銀保有シェア(8月末)は5割に近くなっている(QUICK調べ)。
長期国債の購入額について、日銀は今でも「年間約80兆円のめど」を掲げている。その形骸化が進むが、政策の持続性が上がり物価に上昇圧力を加え続ける「粘り強い緩和」ができるようになったと日銀は受け止める。
国債買い入れ縮小は、追加的な政策対応の余地を広げる効果も持つと日銀はみる。将来購入を再び増やす追加緩和を演出しやすくなるからだ。実際追加対応の選択肢として日銀は長短金利の引き下げや資産買い入れの拡大と並んでマネタリーベース(資金供給量)の拡大ペース加速も挙げる。
https://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSXMZO4970038011092019EN2001&dc=1&ng=DGXMZO49700400R10C19A9EN2000&z=20190911
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